第十八話 手配書
シェンがルイスの屋敷を去って数日。
世界中に一つの手配書が駆け巡った。
発表したのはゴッディス王国。
その内容は――
『
手配書
次の通り、我が国より罪人逃亡の為、近隣各国に手配を願うもの
罪人:名称不明
風貌:十五歳前後。女性。緑髪。背中の大部分へ広がる痣。
内容:世界崩壊に至る禁忌魔術の研究及びその発動を目論むもの
褒賞:一億イェン
備考:シェンを名乗る黒衣黒髪の男と共に行動しているとの報告有
潜伏場所等情報提供についても褒賞準備有
確保については生死を問わず』
という簡潔なものであった。
この手配書はあっという間に大陸各国へ広がり、民間人からならず者まで、広く人々の目に触れることとなる。
無論、カンダータでもその例外は無く。
「おい、見たかあの手配書。十五の小娘一人捕まえるだけで一億だってよ」
「みたみた! 世界を崩壊させるとかなんとか。マジでできんのかね?」
「いやー、一つの国が手配書に一億もかけてるんだぜ? マジなんじゃね?」
「捕まえたら大金持ちじゃん! 探してみよっかなー」
「バーカ! 俺らもお尋ねもんだろうが。金貰う前に捕まっちまうよ」
「そりゃそうだ! あっはっはっはっは!」
などと、様々憶測も飛び交い飛び交い、酒の肴になっていた。
そんな情報がリャンメイの耳に入るのも自然なことで。
「おいリャンメイ。見たか? これ」
どこから手に入れたか、ルイスが手配書を持って研究所へ戻ってきた。
「これって……」
「お前だろ? まぁ話を聞いている限りいつか手配はされると踏んでいたが……この金額、早さ、異常すぎる……本当にお前は何も知らないのか?」
手配書を指で遊びながら、ルイスがじろりとリャンメイを見る。
「この前お話したことに嘘はありません。私は……何も知らない……」
リャンメイはきゅっと拳を握り、うつむいた。
「──まぁ、そうだろうな」
ルイスはふっと鼻を鳴らすと、柔らかい表情を見せ、手配書をひらりと翻しながら続けた。
「そもそも、世界を崩壊させる魔術などこの世に存在しない。百歩譲ってそんな魔術が存在したとして、発動にいったいどれだけの魔力が必要か……とてもじゃないが人間が数人集まってどうかなるものではない。国の全魔力を総動員して……それでも無理だろうな。つまり、この手配書に書かれたお前の罪は実現不可能。手配書は信用に値しないね」
そう言ってルイスは手配書を小さく丸め、ゴミ箱に投げ捨てた。
「さ、そんなことより続きだ。今日から君の身体を見せてもらおう」
「わ、分かりました!」
リャンメイは背筋を伸ばし答えた。




