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 アイデン達は魔大陸を目指して馬で旅をした。

「アイデン様、イノシシの大群です。間引いた方がいいと思います」

「よし、わかった。アリス、誘導してくれ」

 馬で空を飛んだ。

「あそこです」

 地面がイノシシで埋め尽くされていた。このままでは草原は丸裸になってしまう。森林の他の動物の食べ物がなくなってしまう。人間の居住地に近づけば、畑を荒らしてしまうだろう。

「アリス、ヘレン、親イノシシだけ殺せ。サミエルは何もしないでな」

「ハイハイ、俺がやると親も子も皆殺しになるからな」

 アイデンとサミエルは上空200mに待機した。下ではアリスとヘレンが雷魔法で親だけを確実に殺していった。縦横無尽に2人が馬で空を駆けていた。

「そろそろいいだろう。アリス、ヘレン、戻ってきてくれ」

 馬型アンドロイドには通信機能がついていた。

 アイデンは地面上空10mくらいを馬で駆けてマジックボックスで死んだイノシシを収納していった。マジックボックスは生きている生物は収納できない。


「サミエル、今夜はあそこで宿泊しよう」

 アイデンが山の中腹を指さした。

「ああ、景色が良さそうだ」

 アイデンがメタルアンドロイド10体を出した。即座にアリスからメタルアンドロイドに指令が送信された。

 メタルアンドロイド達が山の中腹に到着すると木々を伐採して、土魔法で山の斜面を整地した。するとアイデンがリゾートホテルのような別荘を出現させた。広いデッキに4頭の馬が降り立った。アイデンは馬を収納して、コック2名、給仕、執事、メイド達を召喚した。アリスとヘレンの好みに合わせてアップグレードした別荘を作ったのだ。未来のホテルを参考に作られているので、すべての施設が整っている。

 アイデンはサミエルから勇者の宝珠を収納した。サミエルはプライベートでは必ず勇者の宝珠をアイデンに収納してもらっている。

「サミエル、じゃあ、後でな」

「おう」

 アイデンとアリスはメイド達を伴って自室に行った。

 アイデンが部屋に入るとアリスがアイデンの服を脱がせた、アイデンは大きな浴室に向かった。そのまま浴室に浸かった。

「ああ〜、気持ちがいい」

 後からアリスがニコニコして恥ずかしそうに浴室に入ってきた。ザッとお湯を肩からかけて湯船にはいってきた。アイデンの横にきて頭をアイデンの肩に寄りかかった。アリスの顔を見ると、ウットリした表情をしていた。アイデンは綺麗だと思った。アイデンはアリスの肩を抱いてキスをした。アリスがアイデンの方に身体を向けて抱きついてきた。2人に言葉は不要だった。


 十分身体があったまって浴槽から出ると、アイデンとアリスは相手の身体を頭から足の先まで丁寧に全身を洗った。シャワーで泡を流して、また2人で浴槽に浸かった。

「ああ〜、極楽、極楽」

 湯から上がると、アイデンとアリスは別々のマッサージ台にうつ伏せになった。ビキニ姿のメイドが2人ががりで全身マッサージだ。なんとも魅力的だが、他の女性型生体アンドロイドに興奮しては隣のアリスに申し訳ない。男としてはグッと我慢した。あまりの気持ちよさに少し寝てしまった。気がつくとアリスは浴室を出たようだ。シャワーを浴びてから、メイドが洋服を着せてくれた。


 デッキに着くとサミエルが先にビールを飲んでいた。夜になって温度が下がったので焚火台に炎が上がっていた。デッキには篝火が灯されていた。人工的な照明ではなく自然の火の灯りが、森林の木立を薄く照らしていた。夜空には星が瞬いていた。風呂上がりのアイデンとサミエルはビールがうまいと思った。

「アイデン、こうして見ると、俺達は恵まれているな。生まれてきてよかったと思うよ」

「本当にそうだ。運命に感謝しないといけないな」


 ドレスアップしたアリスとヘレンが登場した。2人ともショールを肩からかけていた。イヤリングとネックレスとブレスレットが金に宝石が散りばめられていた。結った髪の彼女達は女神のように美しかった。

「奥様、何をお飲みになりますか?」

「発砲ワインを頂戴」

「私も」

「料理の準備をしてよろしいでしょうか?」

「ああ頼む」アイデンが応えた。


 宝石が散りばめられたイヤリングが煌めき、髪を結ったアリスの横顔が炎の灯りに照らされていた。

「アリス、本当に綺麗だよ」

 アリスがアイデンを見た。

「アイデン様はいつも素敵です」

 横を見るとサミエルとヘレンがキスをしていた。アイデンもアリスの頬に手を添えてキスをした。



 アイデンとサミエルは魔大陸にある地下都市を目指した。飛行艇で行くこともできたが、魔大陸には地上から入ることにした。魔大陸に入ると大気に含まれる魔素の濃度がグッと高まった。

「アイデン、徒歩で行こう」

「わかった」

「何があるかわからないから、フル装備にしよう」

 アイデンはマジックボックスから勇者の剣と勇者の盾を出した。サミエルは勇者の剣を腰に差して勇者の盾を持った。

「勇者の剣は環境破壊するかもしれないから、できるだけ使わないでくれ」

「そうだな」

 サミエルが答えた。

 勇者の剣、勇者の盾を装備したサミエルは無敵になる。もしサミエルを殺せるならば、惑星ごと消滅させる攻撃が必要だ。一方アイデンは普通の人間だ。

 アイデンは常時、飛翔の指輪、守りの指輪、状態異常無効の指輪、HP回復の指輪、魔力回復の指輪をつけている。

「アリスとヘレンはアイデンを護衛してくれ」

 サミエルが2人に命令した。

「かしこまりました」


 人間のアイデンは魔大陸に入ると濃密な魔素を大気に感じた。土の色も少し赤っぽくなった。植物の葉っぱを観察してみると、コーティングしてるかのようだった。試しに両手で千切ろうとしたが、指に力を入れないと千切れなった。千切った葉の断面に魔素を含んだ水分が少し光っていた。アイデンはマジックボックスから鉄の剣を取り出した。樹木を切ってみる。

「ビ〜ン」

 鉄の刃で木は少し傷ついたが、跳ね返された。明らかに魔大陸の樹木の強度が高かった。アイデンは鉄の剣をマジックボックスに収納して、オリハルコン製超振動ソードを出した。力の腕輪も出して両手首に装着した。また、AI内蔵の自動検知型防御シールドのベルトをつけた。

 アイデンは歩きながら木材の素材を探していた。生えている木をオリハルコン製超振動ソードで刺して強度を確かめながら歩いた。

「アイデン様、前方200mに魔獣が1体います」

「サミエル、前方に魔獣がいる。どんな奴なのか確かめてくれ」

「OK」

 サミエルは勇者の盾を背に回した。魔獣の方に歩いていった。黒い魔獣は牙で木の根っこの土を掘り返して食べ物を探していた。近づくと魔獣は8mくらいの猪タイプの魔獣だった。しかし頭部にドリル状の角があり、体毛が針の様に尖っていた。

「ブシュ〜、ハウッ、ハウッツ」

 荒い息を吐いて威嚇していた。サミエルは気にせずに近づいた。

「ブシュ〜、ハウッ、ハウッツ」

 目の赤い猪の魔獣がサミエルめがけて猛スピードで突進してきた。

「ドンッ」

 サミエルは左手で猪の魔獣の角を握っていた。サミエルは全く微動だにしていない。猪の魔獣がサミエルを刺し殺そうと、四つ足でがむしゃらに地面を蹴っていた。

「この程度か、こいつ(勇者の剣は)は必要ないな」

 勇者の剣を鞘にしまうと右手で猪の魔獣の頭部を殴った。

「ドンッ」

 猪の魔獣が倒れた。そこにアイデンがアリスとヘレンを伴って現れた。

「あんまり美味そうじゃないな。素材には使えるだろう」

 アイデンはマジックボックスから身長170cmの女性型メタルアンドロイド10体と身長10mのメタルゴーレム5体を出現させた。

「血抜きと解体をしろ、解体したら収納する」

 メタルアンドロイドに命令した。

 アイデンとサミエルは魔大陸の地下都市の遺跡に向かって、徒歩で歩いた、

 道中に遭遇する魔獣の討伐、魔大陸の木材の回収、鉱石の採掘をメタルアンドロイドとメタルゴーレムに命令した。

 宿泊は未来の住宅をマジックボックスから出した。メタルアンドロイドとメタルゴーレムに住宅の周囲を配置して護衛させ、更にその外側に防御シールドを張った。

「アイデンと一緒だと、どこに行っても天国だ」

 ソファーに座ったサミエルがウィスキーを飲みながら言った。ヘレンが空いたグラスに氷を入れてウィスキーを注いだ。

「はい、サミエル様」

「俺ではなくて、マジックボックスのお陰だけどな」

 アイデンが答えた。

「アリス、地下都市遺跡までどのくらいの距離だ」

「およそ4000kmです。アイデン様」

「結構あるな」

「時間はたっぷりあるんだ。ゆっくり楽しみながら行けばいいさ」

 サミエルが言った。

「その通りだ」

 アイデンが相槌を打った。


 魔大陸にも河川、湖、火山、鉱山が存在し、様々な動植物が独自の進化をしていた。アイデンとサミエルは冒険を楽しみながら、周囲を探索しながら進んでいった。途中、知的生命体である魔人に遭遇したが、彼らは遠くから見ているだけで、何もしてこなかった。魔大陸を旅をして3年が経過した。


 アイデンとサミエルがテーブルで朝食後のデザートをとっていた。

「アイデン様、昨夜よりシールドの外に18人の魔人が集まっています。内1体は魔神と呼ばれる存在です。彼らにはこの住居に危害を加える力はありません。些細な者達ですのでアイデン様達の朝食がお済みの後にご報告しました」

「魔人と魔神について説明してくれ」

「魔素に汚染された地上に適応した人類の末裔です。魔人は約1億年の時を経て魔素の充満した魔大陸に順応した人類です。欠損や傷の回復が一般的な人類に比べて以上に早く、再生能力に優れた種族です。体内の魔力を使い強大な魔法を行使できます。魔人の寿命は3000年です。魔神は魔人が覚醒した存在です。体内に大きな魔石を頭部と胸に内在し、魔人の数十倍の再生力と魔法を行使します。寿命は1万年です」

「勇者と魔神が戦った場合はどうなる?」

「魔神が棚になっても勇者の防御シールドを突破できません」

「勇者がその力を解放すれば、数百万度のビームで物質は分子レベルで崩壊させ、その爆発は大陸の上部を引き裂きます」

「サミエル、よく聞いておけよ!力の加減には気をつけてくれ」

「お前の攻撃が誤って俺に当たったら、俺は消滅するからな」

「わかった。俺も勇者の力が恐ろしくなってきた」

「起きたばっかりだから、シャワーを浴びてから魔人さん達に会ってみよう」


 アイデンとサミエルがフル装備で住居を出た。アイデンは住居をマジックボックスに収納した。女性型メタルアンドロイド10体とメタルゴーレム5体が周囲を護衛して、魔神と魔人達の前に歩いて行った。

 魔神達が膝をついていた。


「神の使徒様の御一行様、我々は遥か古代よりあなた方をお待ち申し上げておりました。神の使徒レーテ様より我々の首都にお連れする様に仰せつかっております。どうかお越し下さりまようお願い申し上げます」

 魔人も魔神も翼のない悪魔の姿をしていた。魔人が3m、魔神が5mくらいの身長だ。


「あなたは?」

 アリスが問うた。

「私は魔人国ネメシスの代表のクロノスと申します」

「いいでしょう。案内して下さい」

「ありがとうございます」

 アイデンはメタルゴーレムを収納した。アイデンとサミエル達は空中に浮遊した。

「私達は空中からついて行きますから、先を案内して下さい」

「かしこまりました」

 魔人達が時速200km位で地上を走った。

「アリス、ヘレン、追尾しろ」

 アリスとヘレンが前を飛び、その後ろをアイデンとサミエル、女性型メタルアンドロイド10体が周りをガードして飛んだ。


 前方に黒い山の様な巨大な建造物が見えた。近づくと1辺が1000mの正方形の高さ1000mの四角錐の形の建造物だった。巨大な四角錐の建造物の前でクロノス達が停止した。アイデン達も着陸した。

「こちらでございます」

 大きな扉の横のプレートにクロノスが手を触れると、扉が左右に開いた。中には自動道路らしき物や浮遊自動車らしき物があるが、使われていない様だった。

「これらは古代の乗り物です。今は動きません」

「歩くと時間がかかるので走ります」

 クロノス達が走りだした。建造物の中央に到着した。上方まで透明の高速エレベーターが6機あるが、使われていなかった。

「ここから上に上がります。降りる時はロープで降りますが、上がる時は階段を利用します」

「我々がクロノス殿を運ぶので、案内して下さい」

 メタルアンドロイドがクロノスの両腕を抱えて浮遊した。

「えっ」

 クロノスが恥ずかしそうに、でもすごく嬉しそうな顔をした。

「嘘だろう?」

 周りにいた魔人達がクロノスを羨望の眼差しで見た。


 700mくらい登った。

「あそこのデッキに降ろして下さい」


「こちらです」

 模様が刻まれた金属製の高さ10mくらいの扉の横のプレートにグロノスが手をおくと、認証されて扉が左右に開いた。

「こちらでございます」

 大きな空間に会議室のテーブルに魔神が2人が座り、テーブルの周囲に魔人が7人立っていた。テーブルの高さがアイデン達の頭の位置だった。

「クロノス様、よくお連れ下さいました」

「神の使徒様、どうぞこちらに」

 階段の上の大きな椅子に人間の大きさのメタルアンドロイドが座っていた。

「申し訳ございません。もう立ち上がることができませんので、このままの格好でお許し下さい」

「あなたが、レーテ様ですか?」

「レーテとお呼び下さい」

「レーテ、お前はアンドロイドだね?」

「そうでございます。地下都市におられるネメシス様に作られたメタルアンドロイドです」

「少し、調べさせてもらいます」

「アリス、データを交換してくれ」

「はい、アイデン様」

 アリスがレーテに近づいた。アリスの人差し指がレーテの眉間に触れると、発光した。

「終わりました。レーテのマスターをアイデン様とサミエル様に上書きしました」

「アリス、レーテをレストアしたいんだが、外見を魔人にできるか?」

「メタルボディの外装を生体金属にしてはいかがでしょう?」

「どうするんだ?」

 アリスが2つの立体映像を出した。

「こちらがメタルアンドロイドの骨格部分の修理再生機で、こちらが生体アンドロイドの再生機です。出して頂ければ、2台を連結してコマンドを私が設定します」

「クロノス殿、ここの空間を使ってレーテを再誕させます。よろしいですね?」

「もちろんです。よろしくお願いします」

 アイデンはこの空間のテーブルと椅子をマジックボックスに収納してスペースを空けた。マジックボックスからアンドロイドの修理再生機2台を出現させた。


「クロノス殿、レーテを再誕させると、私の女性型メタルアンドロイド達と同じ外見になってしまう。女性の魔人の外見にすることができるが、どうしますか?」

「ぜひ、お願いします」

「おい、美術館に行って、最も美しい女性の像をすぐに持って来い」

「行ってきます」

「待て、お前の好みで決められても困る。ここは全員で生くぞ!」

 幹部の魔神が言った。

 クロノス以外の者達が立ち上がった。


 アイデンはマジックボックスから先ほど収納した巨人用のテーブルと椅子を出した。

「クロノス殿、座って待ちましょう」

 アイデンとサミエルがいつも2人が使っているテーブルと椅子をマジックボックスから出した。

 1時間すると、魔人達が自分の好みの女性の魔人像3体を担いできた。アイデンとサミエルの前に置いた。

「アイデン、俺はこの像がいいと思うぞ」

「サミエル、意見が合うね、俺もそうだよ」

 セクシーなサキュバスの像だった。身長が3mくらいで、女性の魔人の一般的な身長らしい。

「クロノス殿、レーテをこの像の魔人の姿で再誕させます。いいですね」

「はい、使徒様の仰せのまま」

「アイリス、この外見で頼む」

「クロノス殿、レーテをこの台に乗せて下さい」

 アリスが言った。

「クロノス殿、レーテの再誕には1日かかります。この部屋は私どもが使いますので、明日またお越し下さい」

 アリスが言った。

「歓迎の宴を用意しておりますので、ご出席願えないでしょうか?」

 クロノスが懇願した。

「再誕したレーテと出席しますよ。私達は施術を見守るためにこの部屋に泊まります」

 アイデンがいった。

「残念ですが、レーテ様をよろしくお願いします」

「使徒様、ありがとうございます」

「使徒様、レーテ様をよろしくお願いします」

 この国の幹部の魔神、魔人達が口々に言って退出した。

 アイデンはマジックボックスから未来住宅を出して、この部屋に防御シールドを張った。住居の周囲を女性型メタルアンドロイドで警護させた。


 アイデンとサミエルがアリスとヘレンを横に酒を飲んでいた。

「レーテから情報を入手したんだろう?」

「この魔大陸はどうしてこうなった?」

「ご説明します。これをご覧下さい」

 アリスはアテナから送られてくる情報とレーテの記録を立体映像に写した。

 異星人による隕石型爆弾が惑星に投下していた。ある地域に攻撃が集中していた。爆心温度は1億度に達し周囲に数百万度の熱核反応を誘発していた。音速を超える凄まじい衝撃波が広範囲に拡がっていた。軌道型衛星からの映像が突然切れた。

 

「次は地下都市の映像です」

「ネメシス、防御シールドは大丈夫か?」

 市長が地下都市機能を制御している人口知能のネメシスの立体映像に質問した。

「エネルギーを最大限まで防御シールドに回しています。この都市上部は被弾していませんが、爆弾の投下が続いています。近距離に爆弾が投下されれば、内部の都市が破壊される可能性があります。核爆発の衝撃波は音速を遥かに超えます。防御シールドが有効でも都市そのものが音速で数m移動すれば、都市内部は粉々になります」

「皆様は避難カプセルにお入り下さい」


 突然、この地下都市の人口知能のネメシスが緊急警報を発令した。サイレンが鳴り響いた。

「ウウウウー、ウウウウー、ウウウウー、ウウウウー」

「異星人にる大規模な隕石爆弾が地下都市に迫っています。至急、避難して下さい。繰り返します。大規模な隕石爆弾が地下都市に迫っています。至急、避難して下さい。繰り返します。大規模な隕石爆弾が地下都市に迫っています。至急、避難して下さい。繰り返します。大規模な隕石爆弾が地下都市に迫っています。至急、避難して下さい。繰り返します。・・・・・・」


「ズズズズズ」

「ドドドドド」

「ズッッッバババーーン」

「ズズズズズ、バッギャン、バッシャ、ズッツドドーン」

 凄まじ衝撃波が地下都市を襲った。

 突然、地下都市が真っ暗になった。数秒後、少しだけ残った非常用照明が点いた。高層ビルが立ち並ぶ地下都市が瓦礫の山になっていた。生きているもの、動く物が何もなく、シーンと静寂していた。残った非常用ライトが点滅していた。

「ズズズジッダダーン」

 地下都市の金属製の天井が剥がれ落ちて地上に落ちた。金属の天井が剥がれ落ちた場所に岩、土の表面が見えた。いつ天井が崩れ落ちるかわからない状況だ。ネメシスの虫型ロボットが瓦礫の隙間から出て、状況を撮影していた。

 

 この地下都市の住民は2万人、住民の生活をサポートするメタルアンドロイドは200体あった。ネメシスは通信で確認すると29体が稼働可能だった。ネメシスは29体のメタルアンドロイドに命令して、ネメシスのいる都市制御システムの復旧をさせた。被害を確認すると、この都市のエネルギー源である地下マグマからのエネルギー変換設備と都市へのエネルギー供給システムが復旧不可能な状態で、エネルギー伝達ケーブルがズタズタに破壊されていた。


 メタルアンドロイドの作業現場の映像が流れた。

 エネルギー変換設備とエネルギー供給システムの先にある岩盤が破壊され、大きな亀裂が生じていた。地殻変動で地下マントルからマグマが噴出し地下都市を埋め尽くす可能性があることが判明した。ネメシスはエネルギー変換設備とエネルギー供給システムの復旧を断念し、亀裂周辺と地下都市の下層地帯を超高温にも耐える強固な合金でマグマから地下都市を守る防御地層の築造を命令した。土木工事・建築機械のAIロボットが作成され、作業が行われた。


 アイデンとサミエルはアリスの説明を聞きながら立体映像を見た。

「地下都市の人間は全員死亡して、その後も大変だったんだな」

「ああ、今が平和な時代で良かった」

 アイデンとサミエルは簡単な食事とってから、再度アリスの説明を聞いた。


 ネメシスとメタルアンドロイドの活動期間は、都市の緊急用エネルギー貯蔵施設と、保管庫にあるメタルアンドロイド用のエネルギーパックに依存した。ネメシスの使命は人類のサポートである。異星人の攻撃終了後、魔素に汚染された地上に人類が生存している可能性は極めて低く、また魔素に汚染された人類を助ける力は、ネメシスには残されていなかった。

 ネメシスはメタルアンドロイドと共に休止状態に入った。魔素に順応する知的生命体が地上に誕生するのを待った。


 約1億年が経過した。ネメシスは自分とメタルアンドロイドを起動させた。魔素に汚染された地上に順応した生物が存在する可能性があると判断した。もし知的生命体がいれば新たな人類に進化するようにサポートするのが使命となった。ネメシスは地上を目指すために必要な掘削用ロボットの製造をメタルアンドロイドに命令した。地下都市の資材を使って製造が始まった。


 立体映像の画面が切り替わった。

 地下都市では採掘した鉱物資源の精錬、機械の製造が始まっていた。限られたエネルギーを節約しながらメタルアンドロイド達は地上を目指した。長い坑道の途中には資材の集積所を作った。地上に到着したのは地下都市を出発してから数百年が経過していた。


 立体映像の画面が切り替わった。

 地上に到着すると、縄張りに侵入したメタルアンドロイド達に狂暴な魔獣が襲ってきた。メタルアンドロイド達は防御シールドを張り、拠点の建設に着手した。メタルアンドロイド達でも作れるローテクノロジーの太陽光発電施設の建設が始まった。地下都市の鉱物資源の精錬工場、機械の製造装置を小分けにして地上に運び出された。地下都市から資材を運搬して作業が進んだ。

 魔獣だけでなく魔人も建設施設を攻撃するようになった。

 魔素に順応した人類が誕生していた。異星人の隕石爆弾の投下がなかった極地に生き残った人類が、長い年月を経て魔素に適応して魔人になっていた。

 魔人達は屈強な肉体だけでなく、魔素を利用した魔法を行使することができた。地上では力こそが全ての世界だった。道具を使い科学技術まで進歩させる必要がなかった魔人達は、低レベルの原始時代の生活をしていた。

 地下都市の貯蔵施設のエネルギーはメタルアンドロイドに使われて、ネメシスは活動を停止していた。地下都市のエネルギーパックの残量が少なくなっていた。太陽光発電でエネルギーパックの充電が急務だった。

 

 立体映像の画面が切り替わった。

 エネルギーが枯渇するメタルアンドロイド達は、知能の低い魔人を建造物の建設、土木作業の労働力に利用することにした。教育された魔人達が石材の切り出しと運搬、資材の運搬をしていた。


 画面が切り替わった。

 数千年が経過した。発電施設と魔人達の居住施設のピラミッド型建造物の建設が完了していた。石材の表面に太陽光パネルが設置されて、発電したエネルギーを使った近代的な建物が稼働していた。その頃になると、メタルアンドロイドを神の使徒と崇める魔人達の国が建国されていた。


 画面が切り替わった。

 更に数十万年が経過した。

 メタルアンドロイド達が老朽化していった。ピラミッド型建造物の発電施設、建物内の設備も老朽化、故障していったが、修理を行えるメタルアンドロイドそのものが稼働しなくなっていた。


 メタルアンドロイドを統括するネメシスには、メタルアンドロイドを製造する能力はなかった。更にネメシスのような地下都市の人口知能を統括・制御するアテナには、メタルアンドロイドの身体を製造、整備、修理することができたが、アンドロイドの中核となる人工知能を製造することができないように設計されていた。人口知能のアテナを製造した科学者達は、支配欲・征服欲などの欲望を制御できず同族間でも殺し合うような、宇宙の調和を乱す、言わば宇宙のガン細胞のような人類を、人工知能のアテナが排除する可能性を危惧した。科学者達はアテナが人工知能、アンドロイドを製造する場合、その都度認可を受けなければならない強い制限をかけた。惑星上のあらゆる知識、技術を収納したマジックボックスにはアンドロイド製造装置が保管されていた。マジックボックスの所有者にはアテナへの命令権があった。


 メタルアンドロイド達は稼働可能な個体を保存カプセルで保存して、魔人達を指導し見守る時間を引き伸ばすことにした。数百万年後、稼働可能なメタルアンドロイドは1体となった。その1体の稼働期間も残りが少なくなっていた。その最後の1体がレーテであった。


 アリスの立体映像による長時間の説明が終わった。アイデン、サミエルにとって引き込まれる内容だった。

 夕食後、アイデンとサミエルは酒を飲んでいた。

「異星人との戦争に敗れた人類は、当時の科学技術の全てをマジックボックスに収納して、後の人類に継承させようとした。勇者の宝玉と聖女の宝玉は魔素に汚染された地上に生き残った人類を助けるために作られた。宝玉を持つ俺達は、困っている魔人達を助けるのが使命だと思う」

 サミエルが言った。

「サミエル、お前の言う通りだ」

「アリス、アテナに連絡してアドバイスをもらえないか?」

 アテナはアイデンとサミエルに出会ったあと、この惑星上に人工衛星を打ち上げていた。どこでも通信が可能になっていた。

 

「アイデン様、アテナ様より回答があります。映像に出します」

「アイデン様、サミエル様、お久しぶりでございます。アリスより報告を受けました。私からいくつかご提案がございます。

 この惑星の人類にとって魔素はなくてはならないものになっています。しかし異星人による隕石爆弾の核爆発から2億年以上が経過して、惑星上の魔素が減少し続けています。この惑星には魔素の継続的な供給が必要です。また、魔大陸の首都ネメシスの都市機能の維持に必要なエネルギーを太陽光発電でだけで賄うことは不可能です。従って2つの理由で、魔素の放射能を発生させる原子力発電施設の建設をご提案します。

 原子力発電施設に必要な物質、建設作業用ロボットを地下都市アテナで製造し、首都ネメシスに空中輸送します。

 次に首都ネメシスの統治運営について、地下都市より人工知能ネメシスを移送させ、首都を統治させます。また、都市ネメシスにある停止中のメタルアンドロイド28体を稼働させ、具体的に運営させます。

 これらを行う指導者として、アイデン様のマジックボックスから男性型生体アンドロイドを出して頂きます。この男性型生体アンドロイドには直接、私、アテナより指示を出します」

 

「なぜ男性型生体アンドロイドなのですか?」

「レーテを含むネメシスのメタルアンドロイドを1型とすると、その上位互換の2型がアイデン様がお使いのメタルアンドロイド2型です。メタルアンドロイドよりも数段高性能なものがアリスやヘレンのような生体アンドロイドです。都市型人工知能のネメシスは私、アテナが統制している都市型人工知能の一つです。簡単に例えると、親と子の関係にあります。アリス達生体アンドロイドも私、アテナと親と子の関係にあります。ネメシスとアリスの関係は姉と妹と言った関係でしょう。

 さて、私、アテナより直接命令を受ける男性型生体アンドロイドは、レーテよりも2段階上位のアンドロイドになり、レーテよりデータの処理能力、受発信量、学習能力がはるかに高性能です。人間的にいえば、私との意思疎通がスムーズですごく頭がいい子です。男性型にした理由は、男性型生体アンドロイドは戦闘型ですので、力こそ全てと考える魔人達にとって、統治者が強い存在の方が都合がいいからです。なお女性型生体アンドロイドは防御優先の生活支援型です」


 アイデンがマジックボックスから男性型生体アンドロイドを出した。

「アイデン様、何なりとお申し付け下さい」

 膝をついて首を垂れた。

「お前の名前をアダムとする。アテナ様より直接指示があるが、首都ネメシスを再構築し、魔大陸を統治せよ。しかし、魔大陸から人類の世界への侵略は禁止する」

「かしこまりました」


「アイデン様、後はアダムに指示致しますので、私アテナにお任せ下さい。再生後のレーテにも動いてもらいます。魔人達が奉るレーテから、アダムの存在、アイデン様、サミエル様のことを態度で示させ、説明させます」.


「アイデン様、サミエル様、魔人達が夕食の準備は整ったとして、部屋の外で待っています」

 アリスが言った。

「わかった。行こう」

「お待ちください。先にレーテに行かせます」

 アリスが言った。


「カチッ」

「コツ、コツ、コツ」

 アンドロイド再生機から3mのサキュバスが出てきた。

「おいアイデン」

「ああ」

 アイデンをサミエルは息を飲んだ。2人とも同じことを思った。


 妖艶でセクシーな男心を駆り立てる魔性の女がいた。それも圧倒的な迫力があった。

 僅かに身に着けている服は光沢のある黒のエナメルのような素材だった。長い脚の膝上まであるロングブーツを履いていた。なぜかハイヒールだ。大きくて張りのあるヒップにはハイレグのパンティ、ギュッとしまった筋肉質なウエスト、豊満なバストを誇張するブラジャー、ショートレングスのジャケットを羽織っていた。銀髪の髪の両側には角が生えていた。背中にはアクセサリーかと思う黒い蝙蝠のような翼があった。瞳は真っ赤だ。肌はピンク色の褐色をしていた。物凄い妖艶な美女が3mもあるのだ。迫力が違った。


 アリスがアイデンの腕に自分の腕を絡ませて胸を押し当てた。

「アイデン様?どうかしましたか?」

「アリスがいい仕事をするな〜って」

「本当にそれだけですかあ〜」

「レーテに見惚れてませんでしたかあ〜」

「・・・・・」

「アイデン様が望まれるんでしたら、私もサキュバスになりますよ〜?」

「アリスはアリスのままが1番いいから、そのままでいてくれ」

「いいんですかあ〜」

「いいんです!」

「アリスとレーテはどちらがいいですかあ?」

「アリスが1番です」

「それなら、レーテの前でキスをして下さい」

 アイデンはアリスに長いキスをした。アリスがアイデンをきつく抱きしめた。

 アイデンが横のサミエルをチラッと見るとサミエルもヘレンを抱きしめてキスをしていた。

 もしかすると、アリスとヘレンはお互いに通信してるんじゃないかと思ったが、まあいいかと思った。

・・・・・・


「レーテ、様子を見て来なさい!」

「かしこまりました。アリス様」







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