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第1話 婚約破棄

あとがきで遊べるのも、ネット小説ならではですね。

でも元ネタ分かる人、どれくらい居るんだろう……。

「お前との婚約を破棄する」


 レイアはコンドに呼び出されて、突如その言葉を告げられた。

 意味が理解できず、レイアは頭がフリーズする。

 彼女は現在、怪我で療養中。レースに出られない状況だ。


「ど、どういう事ですか……?」


 掠れた声で、言葉を絞り出すレイア。

 コンドの隣には、見知らぬ女性が立っていた。

 彼はレイアをあざ笑うように、女性のの頬に手を当てた。


「言葉通りの意味だ。お前とはもう終わりなんだよ」

「た、確かに私は怪我をしましたが……。まだ……!」


 貴方にとって利用価値があると、レイアは告げようとした。

 彼が自分を愛していないのは、分かっている。

 それでも今スポンサーを、切られたくない。


「もうお前に価値なんてないんだよ。十分役目をまっとうしてもらった」


 レイアは傍にいる女性が誰か、気が付く。

 それはレイアのライバルである。魔道レースの上位レーサーだ。

 レイアとは馬が合わず、とにかくレース内外でいがみ合っていた。


「我が家をスポンサーに欲しいって奴は、いくらでも居る。何せ王家と繋がりがあるからね」


 唐辛子をかじりながら、コンドは冷たい表情を向けた。

 レイアが稼いだ賞金は、コンドの家に大半が貢がれている。

 家にお金はなくはないが、統治出来ほど余裕はない。


 レイアの怪我が治るまで、貴族であり続けることが出来ない。

 父の良心から、税収は低めに設定されているのだ。


「さっさと出ていけ。家に不良品は必要ない」


 ハエを払うように、コンドは手を動かした。


「なるほど……。私は貴方に貢物を捧げる一人にすぎなかったのですね……」


 レイアは怒りを腹に押し込んだ。

 レイアと婚約し、コンドは様々なレーサー繋がった。

 人脈を利用して、レーサー達に貢がせていたのだろう。


 スポンサーと言う弱みを握ることで。レースを侮辱している。

 呆れ果たして、レイアは何も言えない。


「分かりました。貴方の顔など、二度と見たくありませんしね」


 レイアは実家に帰ろうとした。レーサーとしてすぐに復帰できないが。

 教師をして、資金を稼ぐくらいは出来るつもりだ。


「ああ。お前のとこの親父が持っていた土地なら、俺が買い取った」

「なっ!」


 コイントスをしながら、コンドが呟く。


「良い土地だったんでな。お前らには勿体ないと、常々思っていた」


 レイアに地図を投げ渡す。町から離れた辺境の地。

 周囲が森で囲まれた場所に、バツ印が付けられている。


「お前達にはボロ小屋を用意してやった。今のお前にはお似合いだろう」

「貴方は私に恨みでもあるのですか?」

 

 レイアはコンドの残酷な仕打ちに、怒りを表す。

 せめて睨みつけてやろうと、食い下がる。


「別に。だが万が一リークなんてされたら面倒だ。だからお前らには潰れてもらう」


 コンドは涼しい顔をして口にする。

 婚約して彼の事を、知っているつもりだったが。

 ここまで残忍な性格とは、知らなかった。


「さっさと一家心中でもしろ。殺すと死体の処理が面倒だからな」


 コンドの事だ。既にマスコミなどには、圧力をかけているだろう。

 王家と言う後ろ盾があるアス家は、強い権力を握っている。

 レイアはレーサーとして、潰されかねない。

 

「分かったら。さっさと臭い小屋に戻れ。ボロ雑巾が」


 コンドがレイアへ小包を投げた。

 そこには魔道具と、古い着物だけが包まれている。


「荷物はまとめてやった。俺は親切だからな」


 レイアは拳を握った。


「もう貴方から授かるものなどありません! 私は自分の力で再起します」

「ふん。精々頑張るが良い」


 レイアは魔道具だけ持って、コンドの屋敷を出た。

 強がったのは良いが、お先は真っ暗。

 資金も家も、レーサーとしての人生も奪われた。


 婚約を破棄する。たったその一言で。

 暗い雲が太陽を覆い隠す草原を。レイアは歩いていた。

 風が彼女の髪をなびかせる。今日の風は冷たく感じた。


 ――何が行けなかったのだろう……。

 これまでレイアは、コンドのご機嫌を必死で取っていた。

 勝てと言われたら優勝した。貢げと言われたら、お金を差し出した。


 何故こんな事をされるのか、彼女は理不尽に思った。

 思い知らせてやりたいが、その力は自分にない。


「お父様になんて言えば……」


 レイアは魔道具を見つめながら、呟いた。

 彼女に残された物はこれだけだ。

 だが怪我をして、体幹を傷つけた彼女は治療なしで走れない。


 自分の人生が全て奪われた気がした。

 ――夢も希望も失ったら、人はどうなるのだろうか?

 彼女は重い足取りで、実家まで戻ろうとした。


「ダメダメ! あの時も、再起したじゃない!」


 レイアは過去に絶望したことを思い出す。

 あの時も魔道レースのおかげで、人生を取り戻せた。

 また一からやり直せば良い。前向きに捉えている。


 実家が統治する隣町へたどり着く。直ぐに異変に気付く。

 町が封鎖されている。住民が追い出されていた。

 レイアが住んでいた屋敷も取り壊しが始まっている。


 コンドは前々から、土地を買い取っていたのだ。

 レイアがダメージを受けるタイミングで、婚約破棄を伝えた。


「まるで道化ね……」


 レイアはこの光景を見て、自嘲した。

 自分が生涯をかけてレースに臨んだのは、人々に希望を与えるためだ。

 かつて彼女がそうしてもらったように……。


 彼女はロケットを開く。両親と幼い頃の自分が写っている。

 この写真を見るたびに、レイアは勇気をもらっていた。


「お母さま……。貴方ならこんな時……」


 一粒の雫が、地面にこぼれた。

 それは振り出した雨と一体となって、消滅する。


「希望どころか、絶望を与えちゃったよ……」


 コンドはこの光景を、レイアに見せつけたかったのだろう。

 自分の昔馴染みが。住み慣れた土地が、壊されていく様を。

 彼女を二度と立ち上がらせないために。


 抗議をする住民が、遂に強行突破を図ろうとした。

 そこへ衛兵が、武器を構える。

 ――いけない! レイアは咄嗟に住民を庇おう前に出た。


 その脇を、一筋の矢が通過する。

 矢は衛兵に腕に刺さり、武器を落とす。


「困りますな。他人の土地で好き勝手されては」


 レイアが振り開けると、別の鎧を着た衛兵が弓を構えていた。

 所属は王家直属軍。つまり、王族の兵隊だ。

 ――あの人どこかで……。


 レイアは思い出した。彼は数カ月前、セド王子と共に現れた側近だ。

 側近は契約書を衛兵に見せつけた。

 衛兵は体を震えさせ、敬礼をしながら町から去っていく。


「遅れて申し訳ございません。契約に時間がかかったものですから」


 側近がレイアに頭を下げる。


「い、いえ……。それより、何故王家がこの土地を?」

「レイア・スザク様。どうかこの手紙をお読みください」


 レイアは差し出された便箋を受け取る。

 それは王の直筆の手紙だ。レイアは目を丸くした。

 内容は王家がスポンサーになる代わり、セド王子と婚約して欲しいと言う者だ。


「な、何故私が……?」

「貴方様は希望なのです。あのお方の……。我が王家の」


 レイアは訳も分からないまま、再び婚約を提示された。

 王家がスポンサーになれば、資金の問題は解決する。

 だがレイアには直ぐに、そんな気になれない。


 彼女は先ほど裏切られたばかりだ。

 再び裏切られるのではと言う恐怖が、彼女の頭を過る。

 ――それでも……。あの時の青年なら……


「"今の王子"にお会いするだけでも、結構です……。どうかあのお方を……」


 深々と頭を下げられ、レイアは困惑した。

 自分よりずっと立場の高い者が、ここまで必死なのだ。

 きっと事情があるのだろう……。レイアは側近に頭を上げる様、伝えた。


「分かりました。会うだけ会ってみます」

「ありがとうございます……! 貴方ならきっと、あのお方を救えます!」

「はい? セド王子を救う?」


 レイアは言葉の意味が理解できないまま。

 側近の用意した馬車に乗せられる。彼は敢えて事情を伏せたように思えた。

~ビャッコ先生の解説教室~


やあ。物語が大きく動く第一話、面白かったかな?

今回はこの物語の主人公、レイア・スザクについて解説しよう。

婚約していますが、十八歳の少女なんですよね。この世界では十六歳から結婚が出来るんですね~。


血液型はA型。趣味は魔道具弄りと、骨董品集め。真っすぐで明るい、主人公っぽい人ですね~。

まだまだ悩みの多い年ごろですが、ファンには絶対に暗い所を見せない。プロ意識を持った人です。

いや~。若いうちからプロ意識があるとは、根性ありますね~。


ちなみに本編でカットされた彼女の怪我ですが。スピンファイアーを超える大技を出そうとして失敗したことが原因みたいですよ。恋愛に関係ないから、カットされましたけど。


どうやら絶対に勝ちたいレーサー相手に、焦った結果なんですよ。

ちょっと大人げなかったかな? いやいや! こっちの話ですよ!

本当に何でもないですから! それでは皆さん、ごきげんよう~。

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