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プロローグ 魔道レース

元々短編の予定でしたが、変化球を試しすぎたので連載にしました。

流石にこれを一気見はしんどいなぁっと思って。

そういう経緯なので、連載の中では直ぐ完結します。

「さあ! いよいよ最終シーケンスに入りました!」


 雲の上に乗る実況。彼の声と共に、大勢の民衆が完成を上げた。

 空中の映像で、今頃みんなが息を飲んでいるだろう。

 今日も誰が優勝するのか。レースはワンパターンではない。


 魔道レース。世界が熱狂する、スポーツの一つ。

 魔道具と呼ばれる特殊な道具を使い。超高速でレースを行う。

 魔法の使用して、対戦相手の妨害が許可された、危険なスポーツでもある。


 レイア・スザクは、魔道レース上位常連レーサーだった。

 現在二位の彼女は、タイミングを計っている。

 一位は最高速度重視で、カーブの曲がり難さをテクニックで補っている。


 レイアの魔道具。ローラーシューズでは、追いつくことができない。

 追い抜くには一か八か。魔力を解放するブーストを使うしかない。

 ブーストは魔道具の力を消耗する。タイミングを誤れば、順位を落とすだろう。


「さあ! いよいよ最終カーブ! 魔の九十度が迫ってきました!」


 一位はゴール直前の直角カーブに差し掛かっている。

 直線で距離を離し、ギリギリの減速で曲がり切るつもりだ。

 レイアは左を確認。インコースを走らせまいと、三位が並走している。


 一位は既にカーブに差し掛かっている。

 直線に入ったらブーストして、一気に突き放すつもりだろう。

 抜くならカーブで減速するタイミングしかない。


 ――今だ! レイアは直角カーブ直前で、魔力を解放した。 

 彼女のスケートシューズが光る。


「ブーストファイアー!」


 レイアはカーブの直前で加速した。

 地面から足が離れ、浮遊状態でカーブに接近。


「おおっと! レイア・スザクがカーブ直前でブースト! 焦りで自滅かぁ?」


 ――これも作戦の内よ。レイアは実況が驚く表情を想像して微笑んだ。

 並走する三位を突き放し、減速中の一位に近づく。

 思った通り、あの速度でインコースは無理。


 ブーストしたレイアを見て、空飛ぶ箒に乗る魔女が驚きを隠せない。

 レイアはカーブに差し掛かる直前で。体を回転させた。


「スピンファイアー! イグニッション!」


 レイアは高速回転しながら、更に速度を上昇させる。

 回転軸の力で、直角カーブをインコースで曲がり切った。

 呆然をする一位を余所に、ブーストで一気にゴールラインを切る。


「なんという事でしょう! 土壇場でまさかの逆転! レイア・スザク! 優勝です!」


 レイアは減速しながらピットに向かう。その道中で観客に手を振った。

 誰もが今の大技で、熱い歓声を上げている。

 ――気持ちいいけど、体に負担がかかるのよね……。


 レイアはピットに戻った後、横腹を押さえた。

 先ほどの技を使うには、体幹に負荷がかかる。

 危険すぎるので多用する気はないし。誰にも教えられない。


「よくやったぞ! レイア! 今日は宴だ!」


 大柄な男性が、レイアの肩を支える。

 豪快な物言いだが、内心ではレイアを心配している。


「お父様と、練習した甲斐がありました」


 男性はレイアの父親。彼女に技を教える師匠である。

 貧乏だったスザク家を、魔道レース豊にしたのは父だ。

 レイアはそんな父を尊敬して、自らも魔道レーサーになったのだ。


「優勝は嬉しいが。余り無理はするな。体が壊れたら、ファンだって心配するぞ」

「分かっています。応援してくれる皆様をガッカリさせたくないですから」


 レイアは生涯を魔道レースに込めるつもりだった。

 父の治癒魔法で、体の痛みを取り除く。

 ふぅっと、一息ついて椅子に座った。


 魔道レースは体力を使う。魔力も大量に使う。

 ――あまり情けない姿は、みんなに見せられないわね……。


「表彰式の備えて、少し風に当たって来い」

「はい、お父様」


 レイアは表彰式が来るまで休憩する。

 廊下を通って、会場の外へ。風に当たると、リラックスできる。

 外側は草原だ。緑の匂いが混じる、風を浴びようと外に向かう。


「ちょっと! 勝手に入ったらダメですって!」


 廊下の影で、慌てた声が聞こえてきた。

 馴染みのある、スタッフの声ではない。

 

「お忍びなんですよ! ご自分の立場を弁えてください!」

「弁えているさ。それはそれ! これはこれ!」


 廊下の曲がり角から、一人の男性が飛び出してきた。

 隠れる気がない。地味な灰色のローブに身を包んだ男性だ。

 フードで顔を隠している。先ほどお忍びと言われた人だろう。


 レイアは偉い貴族が、レース会場に侵入したのかと思った。

 魔道レースの賞金は、莫大なので。裏工作が行われることも少なくない。

 直ぐに人を呼ぼうとしたが。フードの男性は、レイアに気付くと駆け寄る。


「ああ!? レイア・スザク選手ぅ!?」


 少し遠慮したようで。興奮気味で。

 それでも気品ある声で、男性は喋った。


「はい。貴方は?」

「本物に敢えて光栄です! あ! 失礼……」


 男性はフードを取って、顔を見せた。

 レイアは目を擦って何度も確認。彼の顔はレイアも良く知っている。

 彼女の住む国で、知らない者はいないだろう。


 モロヘイヤ王国唯一の跡取り、セド王子のものだった。

 ここは王都からかけ離れた辺境。王子が来るような場所ではない。


「いけませんぞ! そんな……。正体を明かすなど!」

「うるさいよ! レイア選手の前なんだぞ! 顔を隠すなんて、失礼が出来るか!」


 セド王子はもじもじしながら、懐から色紙を取り出す。

 レイアにペン差出してきた。


「あ、あの! 失礼は度々承知ですが! サイン……。頂けたら……!」


 セド王子は興奮が隠せなくなった。レイアは微笑みながら、色紙を受け取る。

 何度も練習したサインを、セド王子に渡した。


「うわぁ……! 感激です! 俺……。じゃなくて僕、家宝にします!」


 涙を流しながら、笑みを見せるセド王子。


「大げさですよ。それより、王子が私をご存じとは、光栄です」

「いやいや! レイア選手は僕らの英雄ですから!」


 どうやら国の王子も、自分のファンのようだ。

 レイアは頬が緩む。王子と言っても、人の子だと安心する。


「次のレースも頑張ります。宜しければ……。応援に来ていただければと」

「はい! 僕、全力で応援します!」


 王子は従者に首を捕まれた。


「王子! いい加減帰らないと、私も怒られます!」

「も、もう十分……。サインまで貰っちゃった!」


 引きずられるセド王子を見て、レイアは微笑んだ。

 王子は公の場では、クールな一面ばかり見せるが。

 あんな風に趣味に情熱を注げる人なのか……。


「レイア。何をしている? そろそろ表彰式だぞ」


 ピットの方から、父とは違う男性が出てきた。

 厳格な声で、レイアに注意を促す。


「すみません。コンド様。少しファンと戯れを」

「ふん。貴様如きに、随分と熱狂的なファンが居るものだ」


 コンドは見下す目線で、レイアを睨む。

 レイアは彼が苦手だった。それでも今後ずっと、付き合う事になる。

 コンドはスポンサーだ。彼の提供がなければ、レースに出る事も出来ない。


 何よりレイアの、婚約者でもある。

 引退したら妻となって、彼を支える事が決まっている。

 婚約すること。それがコンドの家がスポンサーになる条件だった。

 

「むしり取るだけ、取れ。良い金づるになる」

「ファンの方を、そのように見る事は出来ません」

「ふん。ゴミ家の娘が、口だけは立派なものを」


 コンドはスザク家を見下している。魔道レースを金の生る木と考えている。

 レイアはその考えがどうにも苦手だったが。

 大金が動く以上、そういった思想が出るのも仕方がないと割り切っていた。


 ずっと魔道レースを続ける事は出来ない。

 引退したら彼と結婚して、子供を授かるだろう。

 引退後はレーサー指導をすることになるだろう。


 レイアは自分の道は決まっていると思っていた。

 決められたレールの上を、仕方なく進んでいると。

~ビャッコ先生の解説教室~


やあ。物語の冒頭部分、面白かったかな? ここは本編では解説する必要のない、設定を紹介する茶番コーナーなんだ。

オマージュするには、リスペクトもしないとね……。いやいや、こっちの話だよ。


今回は物語のキーとなる、魔道レースについて解説しよう。

魔道レースは種族、国境を越えた、世界を熱狂させるレースなんだ。

魔法を使っての攻撃もOKな、過激さが人々の心を惹きつけるんですね。


賞金は小国の予算を超えるほど、莫大だと言われているんだよ。

だから悪徳貴族は、裏工作をした優勝しようとするんですね~。

え? 私は誰かって? それは、四話くらいになったら分かりますかね。


こういう茶番が要らないって人は、ブラウザーバックしてくださいね。

この作品、結構賛否別れますでしょうが、それも味の一つなので。

それでは皆さん、ごきげんよう!

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