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7. 元超人気子役の美少女が元カノってラノベですか?

「えっと……久しぶり、(ゆずりは)

「……はい、お久しぶりです……幸太郎」


 僕とほとんど同じくらいの背丈に、色素の薄い真っ白な肌。


 丁寧にケアされ結ばれた青髪は背中まで伸び、小さな人形のように整った顔に潤った唇が揺れる。それから、印象的なハイライトの薄い眠そうな目には見覚えしかなった。


「え、楪ってあの出雲崎いずもざき ゆずりは⁉ 去年とかはドラマとかも出てた出雲崎 楪さん⁉」


 目をかっぴらく藤宮さん。すごい乾きそう。


 楪が苦汁を舐めるどころか、一気飲みする表情で小さく首を縦に振る。


「………他に楪がいなけらば、おそらくその楪です」

「ふぇえええすっごい! 噂で同じ学校かもって噂は聞いてたけど、マジだったんだ! やっぱ本物は顔ちっちゃーい! 肌もマシュマロみたーい! えーかわいいー!♡」


 楪の頬にめり込む勢いで、藤宮さんが頬刷りする最中。


「………」

「………」


 僕と楪は、互いにハイライトの消失した瞳で見つめ合っていた。

 ……ひたすらに虚無だ。


「………」

「………」


 少し経って、ようやく藤宮さんが頬すりから楪を解放したころ。

 こほん、と楪が露骨な咳を見せる。


「……言っておきますが、知ってる顔が見えたので少し様子を見てただけですからね」


 先手を打ったとばかりに、楪が感情を読み取りずらい瞳を更に細める。


「決して、幸太郎が知らない女子と一緒に何かを楽しそうに話していたから気になったとか、そう言ったモノではありません。決して」

「あ、うん。わかったわかった」


 あの物陰からの眼光、今にも僕の事を呪い殺しそうな勢いだったけど。


「藤宮さんのせいだとしても、絡んで悪かったよ。これからは楪の近くになるべく居ないよう、気を付けるから」


 言われなくとも、楪が僕の事を避けて……嫌っているのはわかっている。


「……………そうですか」

「うん、ごめんね」


 楪は唇を尖らせて、露骨に機嫌が悪くなった。

 え、何その表情。

 僕の対応何か間違えてた? 菓子折り持って行った方がいいやつ?


「はいはいお二人とも、名探偵、気づいちゃたんですけど」

「な、なに? 藤宮さん」


 楪との間に生えてきた藤宮さんから、思わず視線を逸らす。

 あー……なんか、すっごく嫌な予感。


「柏くん前に教室では、苗字以外で男女が呼び合うのは、親しい人とか恋人の特権だと思うって言ってたよね?」

「えっと、まあね」

「…………」 


 ほんと、頼む。

 藤宮さん、へんなこと言わないでくれ。


「あたしのことは、シャーロットとも名探偵とも呼んでくれないのに?」

「えっと、まあね」


 それは関係ないだろう。


 片眉を器用に顰めた藤宮さんは、ぽつりと言い放つ。


「つまり………出雲崎さんと柏くんは元、もしくは進行形で親しく恋人関係にある?」


 訳の分からないタイミングだけ敏くならないでくれ迷探偵。


 ………もうこれ以上は誤魔化しても、気まずい空気が続くだけか。


「はぁ、もうかなり前の話だからね」


 楪は、少しだけ俯いた。


「…………そうですね」



 この超が付くほどの美少女は、出雲崎いずもざき ゆずりは


 一言一句が経済効果を生み出すほどの、芸能プロダクションを営む両親。

 ひとたび街をあるけば誰の目にも留まり、その心を鷲掴む美貌。


 まるで嘘みたいな話だが。

 そんな全てを持つ彼女と、教室の端で目立ちもしない僕は。


 彼女からの告白がきっかけで、なぜか数カ月の間だけ恋人関係にあった。

 つまるところ彼女は、僕の……()()()である。


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