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28. ネトゲの美少女は女の子じゃないと思

 あれから一週間、昼下がりの日曜日。


 店長の開発した(藤宮さんが試食しまくった)新商品は、ネットでバズったのがきっかけで大ヒットの人気商品となった。


 都心の方にある喫茶ハコニワ新店舗でも販売が決まったらしい。本当にあの店が人気店だという事を、僕は嫌になるほどアルバイトの忙しさで思い知らされた。


 正直、マジでパンクして倒れるかと思った。


「さて、さてさて」


 ということで、今日は久しくバイトのない休日である。

 新商品のあまりの人気に材料切れで、入荷のために店舗ごと休みにするのだとか。


「よっと」


 リビングから自室へとスナック菓子とコーラを持ってきた僕は、ちょっとテンション高めにゲーミングチェアへと飛び乗る。


 もはや遠い記憶にすらなりつつあったオタクライフ、これぞ僕の生きる道だ。


「おぉ、まるで実家のような安心感……」


 早速パソコンを起動する。

 ここ数日、まともにニューラグーンオンラインをプレイ出来ていなかった。


「おぉ、まるで実家のような安心感……」


 お馴染みの効果音と共に、僕のアカウント『もちもち柏マン』が草原のフィールドに召喚される。


 するとそこには、またお馴染みの顔ぶれがあった。


『お、柏マンも! 久々じゃん』

『こんにちは、柏マンさん』


 ぺこり、と軽いお辞儀モーションを挟んで、僕のアカウントもチャットを表示する。


『お疲れ様です、最近リアルが忙しくて……』


 ぺこりと頭を下げるイブキちゃんが『お疲れ様です』とスタンプを表示する。


 その横で戦士ナギは、やれやれとわざとらしく首を竦めた。


『いかんね、柏マン。いくら忙しくても本業を疎かにするのは関心できないぜ』


 そうだった。僕はオタク。


 学生はあくまでも副業であり、本業はネトゲゲーマーなのである。


 ここ、大事。たぶんテストにでます。


『まぁ忙しかった分、バイトで稼げたので軍資金が増えましたって感じです』


 軍資金、つまり課金用のお金のことだ。


 忙しいと言いつつ、バイトのお金はもちろんバッチリ貯まる。


 バイト、案外悪くない……なんて事はないな。先週だけで何度、藤宮さんのやらかしカバーに行ったかもう数えていない。


 何があったらスキンヘッドのお客の頭にパフェ置こうってなるんだ、マジで。


『そういえばさっき『柏マンも』って言ってましたけど、イブキちゃんも最近、ログインしてなかったんですか?』

『そーなんだよ! 最近ふたりとも急にログイン率低くなったから、俺は寂しくずーっとソロ討伐してたんだぜ?』


 いや、それは知ったこっちゃないけど。


 むしろ、ログインしていない時間の方が短い戦士ナギの方が囲繞じゃなかろうか。


『すみません。ちょっと朝が早いことが多かったので、早く寝るようにしてました』


 朝が早い……。部活の朝練とかだろうか。

 

 学業意外にもやることがあるなんて、現役女子高生おそらくは大変そうだなぁ。


 ……アルバイトが忙しくて完全に忘れてたけど、部活やってないだけで僕も学生だったな。


『柏マンが来る前にも言ってたけど、イブキちゃん、早起き以外にもいろいろ大変な事情が最近てんてこ舞いなんだろ?』

『はい、そうなんです。……実は最近、妹にあまり感心できない友達と一緒にいることが多いようでして……どこか悪影響を受けないかと心配してまして』


 感心できない友達。つまるところ、不良生徒という奴だろうか。


 いつだか、楪に喫茶ハコニワで絡んでいた大学生を思い出す。


 ここよりもっと都心に行くと、そういう学生も多いのかもしれない。


 イブキちゃんの妹さんが何歳かはわからないが、確かに家族からしてみれば不安にもなりそうだ。素行とか、言葉遣いとか悪くなりそうだし。


『あまり感心できないって、具体的にどんな友達なんですか?』

『その……公園で……虫、とか食べてるみたいでして』


 思ったよりヤバい奴きたな、僕かよ。


 いや僕は誤解であって虫食べてるわけじゃないんだけども。


『それはもう、感心できないとかのレベルじゃないんじゃないか……?』


 わからない。もしかするとその人は虫食の習慣がある海外の人で、イブキちゃんの妹さんは国際的な文化に強く興味がある可能性もある。ないな。日本の公園で捕まえて食うなよ。


 慌てるモーションのイブキちゃんが、わたわたとチャットを表示する。


『で、でも妹のお友達も悪い子じゃないみたいなんです。他の子に気も使えますし、思いやりもあって行動力もあるというか』


 公園で、虫食ってるやつが?


 イブキちゃんよ……残念ながら、その可能性は限りなく低い。


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