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27. 天然ロリ系ぽわぽわ先輩

「あれ、藤宮さん。店長も」


 藤宮さんは私服姿であり、店長もエプロンを脱いで黒シャツである。


「藤宮さん、どうかしたの?」

「かやちゃんセンパイも柏くんも、全然帰ってこないから迎えに来たんだよ」


 やれやれこれだからお子様は、みたいな表情で首を竦める藤宮さん。


 頬に付いたカスタードクリームを拭ってから出直してきてほしい。


「なんだ、出雲崎も一緒だったのか」


 片手を挙げる店長に、楪も軽く会釈を返す。


「ショッピングモールでたまたま会いまして、一緒に買い出ししてたんです」

「ま、出雲崎が一緒だったなら心配する必要も無かったな」


 信頼とも受け取れる店長の微笑みに、楪も軽く笑って帰す。


 あれ、店長。僕は?

 茅野センパイが店を出る時から一緒にいたんですけど。


「おにぃ、おにぃ」

「ん、なんだ。どうした響」


 茅野センパイが、店長の黒シャツの裾を引っ張る。


「こーたろが、怪と」

「おぉーっと! 茅野センパイ、足元にタランチュラが!」


 咄嗟にサッと、茅野センパイのお腹を持って抱え上げる。


 店長に怪盗団の事を知られるのは、流石にマズい!


 青春ド真ん中の高校生にして、真剣に怪盗団を結成しようとしてるイタい奴だと思われたらどんな顔して明日からバイトに出ればいいんだ僕は。


 下手したら、妙な事に茅野センパイを巻き込もうとした罪でシバかれるかもしれないし!


「え、どこ⁉ タランチュラ怖い!」

「あ、そっちの茂みに逃げてった! 藤宮さん気を付けて!」


 もちろん、嘘である。


 滑稽なステップで荒ぶる藤宮さんを横目に、僕は茅野センパイの耳元で囁きかける。


(茅野センパイ、秘密の怪盗団ですから正体は秘密でお願いします)

(怪盗団はひみつだから、しゃべっちゃだめ?)

(はい、ダメです)


 これで……なんとか、誤魔化せたか?


 一応、振り返って藤宮さんたちの様子を確認してみる。


「タランチュラは主にオーストラリアなどの熱帯にいると思うんですが……この辺りにもいるんですね。新種でしょうか?」

「え、新種⁉ 見つけたら名前とか付けられるのかな!」


 僕がタランチュラが去ったと指さした草藪を、熱心に眺める楪と藤宮さん。


「…………」


 そしてタランチュラが飛び出して来た時に二人をすぐに持ち上げられる様にか、背後で無言で店長が様子を窺っている。

 ウチの喫茶店の店員、天然しかいないのか。


(こーたろ)


 またも、茅野センパイが耳元で囁いた。


(ないしょにするから)


 ししっと歯を見せて笑う、小悪魔な茅野センパイ。

 悪い子モードの茅野センパイは超絶レアだ。マジかわいい。


(わたしも、入れてほしーな?)


 まるでクライマックスの様な茅野センパイの作画の良さに、僕は唇を噛み占める。

 これ以上説得したところで、恐らく先輩は引いてくれないだろう。


(………………)


 それどころか、怪盗団の話が店長にバレるリスクが高まるだけだ。


 ……全く本意ではないが、背に腹は代えられない。


(くれぐれも内密にお願いします、茅野センパイ)

(……まかせて)


 無言のまま、ドヤ顔のサムズアップで応える茅野センパイ。


「で結局、柏がどうしたんだ響」

 店長に呼ばれ、僕は茅野センパイを両手で抱きかかえたまま振り返る。

「えーと」


 僕の腕の中で、小さな手で手筒を打つ茅野センパイ。


「こーたろ、趣味でむし食べてる」

「………」


 その視線やめてください店長、胸が痛いです。


「いま、その虫とってた」


 自然豊かな公園に突如として説得力が宿る。非常にやめてほしい。




 かくして、藤宮さんに捕まるための怪盗団に、3人目のメンバーが集結した。


 楽しそうに小悪魔的な微笑みの茅野センパイと、未だ茂みを訝しげに覗き込む楪。


 そして、ふと。時は満ち足り、とこちらへ振り向き不敵に笑って見せる藤宮さん。



 本能の何かが訴える大きな警告音に、僕はやはり苦笑いを溢す他なかった。


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