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19. そんな誰かの恋話

「と、そんな感じでその子は芸能界を引退してから色々あったんです」

「ふぅーん、優しい男子が居たんだねぇ」


 限りなく自分に近しい誰かの話を終えた楪は、どこか気恥ずかし気に頬を掻く。


 茅野が自身のコロッケをジッと見つめるので、楪は半分に割って手渡した。


「どうぞ」

「出雲崎、ありがと。すき」


 再びカリカリカリと齧り始める茅野。


 自称名探偵は暖かいもので小腹を埋めたからか、すっかり眠気に目を微睡ませる。


「でも、その女の子も優しい彼氏さんが出来てハッピーエンドでよかったねぃ」

「い、いえ……それが」


 気落ちしてハイライトの消失した目で、楪の口端が軽く痙攣する。


「その女の子、優しい男の子と別れちゃいまして……」

「えぁあ⁉ なんで⁉」


 藤宮の目がギンっと一気に覚醒した。


「だ、だって彼、誰にでも優しくするから、わた……その子は「私が特別扱いされてたんじゃなかったんだ」ってちょっとだけ焼もちをしちゃったんです!」

「だって、それがその男の子の良いところなんじゃないの⁉ なーんか結構めんどくさいね、その女の子」

「うぐはっ……」


 藤宮の発言が芯を捕らえたボディーブローの様に、楪に特大のダメージを入れる。


 楪が藤宮の言葉の意味を理解できたのは、柏と交際を辞め高校に入学してからである。


 幸太郎に別れを切り出したあの日の自分を思い出し、楪は唇を噛む。


「じゅ、受験間近だったので、その子も彼も勉強し集中したいかと……」

「受験なんて、一番カップルで互いに支え合えるタイミングじゃん!」

「うぐぅ⁉」


 試合を決めるアッパーカットに等しいダメージに、思わず楪は両手で顔を包み隠した。


 自称名探偵の推理は、いつもこの上なく無駄なタイミングで冴えわたる。


「まぁ要するに、その女の子は自分が好きだった男の子が自分の事を特別扱いしてくれてると勘違いしたあげく、好きになった理由も忘れて焼もち焼いて別れちゃったんだね」

「あ……あぁ……」


 白目を剥いた楪のライフは既に残っていない。


 超特大のド正論、全くもってその通りだからだ。


 優しい幸太郎に惹かれ交際関係になってから、誰にでも優しい過ぎて焼もちを焼いて関係を解消。


 その後、受験期間中に自分が彼を好きになった部分と、焼もちの矛盾に気が付き絶句。


 そのまま幸太郎との関係を修復できず、アクションを起こせず彼と同じ高校へ進学。


 今では完全に元カノとして認知されている上、いざ対面すると緊張してツンデレの様な対応をしてしまうし、幸太郎は幸太郎で避けられていると間違った認識を持っている事を楪は自覚していた。


「ほんと……なにやってるんですかね、その女の子……」

「ね、結構ポンコツだよね」


 だるんと楪が、力なくベンチに身体を任せる。


「まぁでもあれだよね、ほんと!」


 両目を瞑ったまま腕を組んだ藤宮は、不満げに鼻息を吹いた。


「柏くんも、少しはその優しい男の子を見習うべきだと思うよね!」


 楪の語る「友達の話」を、未だに言葉のまま赤の他人だと思い込む藤宮。


 茅野に至っては、コロッケを齧るばかりで話さえ聞いていない。


「あ、そろっと電車来るし帰ろう? 出雲崎さん、かやちゃんセンパイも」

「かえろー」

「…………はい、帰りましょう」


 そしてなにより、そんな藤宮に正論パンチされた挙句、未だ幸太郎にうまくアプローチ一つできない己のポンコツさに打ちひしがれながら楪は力なくベンチを立った。


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