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11. 妹と書いて最強と読む、事もある。

 それから、十数分ほど経ったころ。


 そろそろ事務室で一人で座っているのにも飽きてきた。


「こーたろ、おにぃ……てんちょー来た」

「あ、はい」


 再び顔を覗かせた茅野センパイに、僕は反射的に応える。


 茅野センパイの奥から、覗き込む巨大な影。


「……待たせた。………店長の茅野かやの 志吹しぶきだ」


 え、巨人? 反り立つ崖?


 額を完全に露出させた金髪のオールバックは、鋭い目つきを更に研ぎあげている。

 片耳についた金円のピアスに、黒ワイシャツの上からでもわかる屈強な胸筋。


 申し訳程度に付けたベージュのエプロンなんかじゃ中和されない圧、圧、圧。


「それじゃ、おにぃ、あとはよろしく」

「わかったから、響は早くフロア戻れ。なんか出雲崎も調子悪いみたいだしな」

「はーい」


 扉をわざわざ屈んで入ってきた男性は、僕の前で額にシワを寄せた。

 僕は咄嗟に立ち上がって、深々と会釈する。


「お、お邪魔してますぅ……」

「ご丁寧にどうも……? まぁ座ったらどうだ」

「ひゃ、ひゃい」


 思わず、壊れたおもちゃのラッパみたいな声が出た。


 嘘つき!  茅野センパイの嘘つきー!

 なにが店長はカワイイ人だ! 何人かケジメつけて、東京湾に沈めてるでしょこの人!


「えーっと、柏 幸太郎……くんね」

「あ、あの」


 というかそうだ! なんでバイトやる前提になってるんだ!

 流れるがままに茅野センパイに連れてこられたけど、僕は初めからバイトなんて始める気はないからな!


「………で、うちの響とはどういった関係で?」

「か、茅野センパイですか⁉ こ、こちらでお茶してる時にお会いしまして……」


 あーこわいー! このお兄さん怖いー!

 茅野センパイと同じ血を引いてる人じゃないよ絶対!


「おにい」


 再び現れてから、こちらへ念を押すようにジト目を向ける茅野センパイ。


「なんだ響、いま面接中だからこっちくるな。早くフロア戻れって」

「こーたろ採用しなかったら、わたし、おにいのこと嫌いになる」


 言うが早いか、さっと、茅野センパイは妖精さんが如く扉の向こうへと姿を消す。


「…………」

「…………」


 無言で見つめ合う僕と店長。


 あれ、なんでだろ。

 なんか今なら言える気がする。


「あの店長、実は僕あんまりアルバイトとかする気なくて」

「採用だ」


 そんなバカな。僕は訝しんだ。


「いえ、だから僕はアルバイトする気なくて」

「採用だ」


 そんなバカな。僕は訝しんだ。


「あの僕、緊張で絶対ミスとかしますから」

「採用だ」


 そんなバカな。僕は訝しんだ。


「あのちょ」

「採用だ」


 あれ、アルバイトの採用って押し付けられるモノだっけ……。


 というかこの会話、藤宮さんとも似たような事をした気がするぞ?

 もしかして僕には、この世界での発言権はないのか……?


「それじゃ、来週からよろしくって事で」

「え、あ、はい」


 こうして、流れるがままに僕の人生初のアルバイト先は決定した。

 というか勝手に決定された。


 ついでにコミュ力の高さと可愛さから藤宮さんも採用された。


 もうカタギじゃない人相じゃない店長がいて。

 めちゃくちゃ気まずい元カノが、指導役で。

 小学生みたいな先輩が頑張って注文運んでて。

 ご存じポンコツ藤宮さんが同期のバイト先である。


 単刀直入に申す、誰か僕を助けてはくれないか。


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