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懐かしの日々 想い出

桜の里帰り

作者: 池畑瑠七

桜が 里帰りしてきた


一昨年 満開の桜の日

旅立っていった母

たまたま家人が外出している間に

誰にも看取られず 静かに

逝ってしまった


その日 そのとき 

母の姉たる伯母も 花見をしていた

わたしも 離れた空の下で 桜を見ていた

孫たる我が子も

友人と桜を見に行っていた


迎えに来た父と一緒に

私たちに 挨拶して回っていたんだろう

律儀な父と母らしい


家族親族だけの小さな葬儀

伯母が大きな白い袋に包んだ鉢植えを

ふたつ もってきた


別れ際 私と兄を呼び止め

「これ、持って帰ってあげて」という


桜の鉢植えだった


30年近く前になる

早逝した父の葬儀の時

彼が大切に育てていた山桜の鉢を

伯父が父の故郷に持ち帰り

庭に植えた

大きく育ち 今でも毎年

美しい桜を咲かせているという


その枝を分けて 

鉢に根付かせ 持ってきてくれた

兄と私に 一株ずつ


父の生まれ故郷で

大切に預かり育てられた桜が

再び 私達家族が一緒に暮らした

この地に 戻ってきた


「里帰りさせてやってね」


我が家の小さな庭に植えた父の桜は

春の朝 母の命日に

今年も白い 小さな花を咲かせた


おかえり




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― 新着の感想 ―
[良い点] 池畑さんはじめ、周りの全ての方々が温かく胸打たれるものがあります。 見ず知らずの私などが感想を申し上げるのもどうかな、と思うほど。 これからも毎年春には優しい桜に会えますね。
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