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混乱する俺に向かって

混乱する俺に向かって、自慢げに手の甲に浮かび上がった鱗型の痣をみせながら根戸が言った。その痣?は瀬戸と同じか? 共通の痣は神隠しの時にできた痣か?


「なっ、先生、うちの勘、当たったやろ!」


 その言葉に我に返った俺。そうだよ。まだ、怪しげなところが2か所もあるんだ。もし、瀬戸の言ったことが事実なら、それを証拠づけるなにかが出てくるかも?!


「吹戸、開戸、そこのところを掘れ!!」


 俺がそう声を掛けた時には、二人は目の色を変えて掘っていた。


「「何かある!!」」


 二人から同時に声が上がった。俺はまず吹戸のところにいった。


 慎重に土を取り除いていくと、これは骨のようだ。しかも、経験からして人骨っぽい。さすがに四〇〇〇年前の骨だとグロさはないが、発掘初心者にはキツイかも? 俺は学芸員を呼んで続きを掘るようにお願いした。


 やはりここは墓だ。開戸の掘っている場所も期待できる。スコップの先に何か固いものがあたったようだ。


珍しい装飾品か、できれば水晶の遮光器土偶のようなオーパーツだと最高なんだけど! そんなことを考えながら、今度は開戸兄の方に行く。


 俺より先に来ていた開戸妹は、興味深そうに刷毛で、表面の土が取り除き……。


――手元を見ようと俯くと、大きく開いたジャージの首元から覗く下着と胸の大きさに目が行く。ロリのくせに……、うつむきがちな姿勢の女性の胸元は無防備で目の毒だ。そんな誘惑に打ち勝って……、埋蔵物のほうに目を向ける。開戸妹の手の甲にも、瀬戸や根戸と同じ痣が浮かび上がっている。



だが、そんなことより開戸妹の手元には……。


「これは……、石版か?!」

「うん。正確には粘土版にクサビ型文字が彫られているね」


 確かに、素焼きの粘土版にクサビ型の彫りがあるが……、これを文字と言っていいのか?


「開戸さん、何でこれがクサビ型文字だと思うんだ?」


 妹の方に投げかけた疑問だったけど、兄貴の方が答えた。


早秋津はやあきつ神社の奥院にある巨石に刻まれているクサビ型文字と同じ」


 まあ、たまに口を開くと色々と重要な情報が省略されていて、相手に伝わらないコミ症っているよな。その何とか神社のクサビ型文字っていうのは……。


「洋の言う通りなの。私たちが幼いころ神隠しに遭って、洋の見つかったところが表早秋津神社、そして私が見つかったところが裏早秋津神社の奥の院。そして、その両神社では隠れご神体として私たちが見つかった奥の院に巨石が祀られていて、その巨石の表面にクサビ型文字でペトログリフが彫られているの」


「ペトログリフっていうのは、古代に象徴となる岩や壁にデザインや文字が刻まれた彫刻のことだろう。確かに日本でも数か所、発見されているけど、ガセネタや偽文字といわれているぞ」


 学生相手にムキになっても……、だけど、その時代に日本には文字はなかったというのが定説だ。考古学者としてそこは譲れない。


「そんなことないよ。これは古代シュメールで使われていたクサビ型文字なの!!」

「はぁ~、そこまで言うなら、開戸さんたちはこの文字が読めるんだよね?」


 荒唐無稽な発言に、俺は意地悪な質問でこの兄妹に無理難題をぶつける。アマチュアがペトログラフやクサビ形文字を研究してはいるみたいだが、まだ解読できたという話は聞いたことがない。だけど、この開戸妹は自信満々に答えた。


「うん、『×△◇・#%&“*+>?』と書いてある」

「――あん?」


 開戸兄を除く周りのみんなは、ポカンと口が開いていた。全く聞いたことがない言語。いや、どこか懐かしいイントネーションは雑音ではなく親しんだ言語に近い。


「分からないの? この墳墓はウル王国から流れ着いたお妃様ニンスンを守った近衛騎士エンキドゥと、そのお妃様がしがみ付いていた方舟の残骸を埋葬したと書いてるんだよ」

 自信満々に答えた開戸妹。本当にそんなことが書いてあるのか? クサビ文字が読めるっていうことも驚きだが、その内容っていうのが……、状況はまさに瀬戸の言った通り。さらに具体的な固有名詞まで? ウル王国って言うのは、シュメール神話にでてくる古代都市ウルのことなのか? 


それに方舟っていうのは、旧約聖書のノアの方舟の元になったと言われるギルガメッシュ叙事詩に出てくる方舟のことなのか? 確かにクサビ型文字はシュメール文明で使われた文字だけど……。


「ウル王国っていうのは? 方舟っていうのは? 何かそこに書いてあるか?」


「ちょっと待って、方舟ね、ここに書かれているわ。


『!$“&#*{+ぃ目%#}』だって、つまり、ウル王国は海路で西に一万キロほどいったところにあった国だって。その国がアヌンナキっていう神に蹂躙され、最後は神の御業の大洪水で押し流された。その時、ウル王朝の王ルガルパンダは王妃のニンスンと子のギルガメッシュを方舟で逃がした。ニンスンはアヌンナキが恐れる古代蛟龍の封印場所を目指して東に海路を進んだ。


ニンスンの行方を追うアヌンナキの宙船に方舟は発見され、攻撃されて方舟は海中に沈んだ。その時、ニンスンを守って死んだエンキドゥのお墓って書いてある」

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