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もしかして根戸さん当てちゃったか

 もしかして根戸さん当てちゃったか?! そんなことを考えながら、しゃがみこみ、ポケットからスコップを取り出し、手ごたえを感じたところの土を削っていく。


 木切れ? しかも板状に加工されている?! 埋まっている状態に合わせてスコップで土を削っていく。今の状態じゃ何なのか分からないが、かなりの大物だ。


「吹戸! 開戸! ちょっとこい!何かある」

「えっ、何か出たん?」「どうせ、土器の破片だろ?! 大袈裟すぎ」


俺の呼びかけに、吹戸と開戸が俺の周りに寄ってきた。そして、俺がスコップで削り出した板切れを見て驚いている。


「どうだ。長さ1メートル以上、厚みは5センチはある。まだ、地面から10センチほどしか出ていないけど、板状に加工されていて、漆のような防腐剤が塗られている。そのおかげで何前年も良い保存状態で残っているんだ。今まで発見された櫛やかんざしなんてレベルじゃないぜ」


 俺の興奮が二人に伝染したみたいだ。俺の真似をして、ジョレンでその板の周りを掘り出した。


「お前ら、慎重にな!」

「先生、こりゃ何だ?」

「結論を急ぐなって。先ずは全体を掘り起こしてからだ!」


 そんな、慌てた雰囲気に、やや離れた場所にいた女子たちや学芸員たちもやってきた。


「うちのゆうたとおりやろ!」


根戸が自慢げに言って、ワイワイ言いながら掘り出したものは……。


「テーブル?」

「いや、この時代にテーブルで食べる習慣は無い。この場所は環状列石と環状木柱列が同時に存在していた場所だから……。きっと、木柱の一部だと考えられる」


 そう言葉にしながら、出てきたのは縦30センチ横180センチ厚さ5センチの漆ぬりの板、そして4つの角のうち三つは無理やり力が加えられて吹き飛んでいる……、そして残った一つにはどこかに固定していたような金属のボルトがねじ込まれているのをみて唖然とする俺たち。


 木に穴を開け、もう一つの木をその穴の大きさに削り、はめ込むいわゆる軸組工法なら縄文時代のあちこちの遺跡で発見され、この工法によって三階建てのやぐらも建てられると想像されるようになったのが縄文中期のはずだ。それがいきなりボルト工法だと……。


「これは環状木柱をコンクリートか何かの土台に固定していたんですかね?」


 表情を引きつらせ、俺に判断を仰ぐ学芸員。いや、俺もどう答えたら……。


「いや、さすがにそれはないでしょう。大体、コンクリートがあったかどうか? でも、この時代にはもうアスファルトがあって接着剤代わりに使われていたし……」


 少し冷静さを取り戻した俺は、さらにある事実に気が付いた。


もし、これがどこかに固定されていたとしたら、建物の基礎部分に固定された柱?いやこの形状なら床材か? だったら高床式倉庫の床なら土台に固定されていたというのも納得できる……。そんなふうに仮説を構築していく。


「これは、高床式の床……」

「先生、違うよ~!!」


 ここに戻ってきて、他の生徒と同じように発掘されたものを触っていた瀬戸が驚いたように声を上げた。


「なんだ。瀬戸さん? 何かわかったのか? あーっ、軍手を外して素手でさわっちゃだめだ」


「触っちゃダメだったんだ。ごめんなさい。でも、直接触らないと分からないから……」

「何がわかるって云うんだ?」

「静かにして!! もう少しだから!!」


 鋭く叫んだ瀬戸は、いわゆる床板状のものを左手で撫でるように移ろわせ、右手は胸の部分の服を掴んで、眉間にしわを寄せる。まるで閉じた瞳は悪夢を見ているようで、顔色がどんどん悪くなるし、あごから汗が滴っている。まるでイタコの口寄せだ。


 移ろっている左手の甲には鱗のような痣が……?

 そんな状態の彼女が口を開いた。


「この木片は、方舟?の床板ね。女の人が、最愛の人が巨人?に目の前で殺されて、恐怖と無念さに駆られながらも、その人に託された希望の大地に向かって出発した。

 だけど……、希望の大地に着く寸前、絶望が襲った。方舟は爆撃されて撃沈された。船外に放り出されて死に物狂いでこの板にしがみついて……、気が付いたらこの浜に打ち上げられていた」


「瀬戸さん、何を言っているんだ? いやそんなことよりその手の甲は?!」


「この木片に残された記憶はここまでね。えっと、驚かせてごめんなさい」


やっと目を開いた瀬戸は、相当顔色が悪い。まさかとは思うが、瀬戸はサイコメトラーだったりして? この板に残った女性の記憶を読み取ったのか?


もし、事実だとしたら……、最愛の人を目の前で殺されたのを追体験して、かなり精神的に参っているだろうが……、それでも羨ましい過ぎる!! 考古学者から見てチートだろう。でも、さすがに方舟っていうのはなんだ? 

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