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十年前に世界中で新種ウイルスの

 十年前に世界中で新種ウイルスのバンディミックが起こり、その経済打撃からいまだ立ち直れないこの国は、一人当たりのGDPもお隣の国に抜かれ、先進国と言うのもはばかれるほど国力が低下、過去の栄光にしがみ付く政治家の無策のため、国内に閉塞感が漂っている。そんなときに起こったのが縄文ブームだ。


 遅れていると思われていた縄文文明が、実は世界的にも進んだ文明だったことで再評価され人気はうなぎ昇りだ。その縄文文明は、大洪水を逃れたシュメール人の末裔によって世界最古の文明シュメール文明がもたらされたことを俺が発表する。世界最古の文明を引き継ぐ優秀な民族、いわゆる選民思想を刺激して、この国の人を力づけることになる。


 そうなれば売れるに違いない。日ノ本民族は選民思想が大好きだ。知らんけど……。

 まあ、思惑渦巻く駆け引き?だったけど、結局このメンバーで飲みに行くことになった。


 場所は……、俺のおごりなら、行きつけの安居酒屋で十分だ。


 みんなを引き連れてやってきたのは、大学から1キロほど離れた海鮮の雑多なメニューが売りの大衆酒場だ。入口で知り合いのおかみさんに声を掛けると、都合よく座敷が空いていると案内された。


 座卓を挟んで、男3人女3人ときれいに席が分かれる。無難な席順なんだろうけど、なんかコンパみたいな感じでこの年になっても緊張する。女の人と飲み会などいつ以来だろうか? うまく話題についていけるかさえ怪しい。


 そんな心配も、MCよろしく吹戸が音頭を取り、俺が乾杯の挨拶をするころには、緊張もほぐれてきた。


「今日は形代ゼミ始まって以来の快挙に恵まれた。これも今年度に形代ゼミを選択してくれたみんなのおかげだ。君たちを歓迎し、歓迎会を催したので、今日はぶっ倒れるまで飲んでくれ、乾杯!!」


「「「「乾杯!!」」」」


グラスを派手に合わせて、パラパラと鳴る拍手。


 そして、思い思いの話をしながら杯は進む。話す内容は函館五稜郭大に来てからのことや、それぞれの高校時代の話が多い。この五人はゼミが一緒になって、初めて話をしたというのだ。


「お前ら、俺のゼミに加入することを相談して決めたわけでもないんだ? それにしたら今日の出来事はあまりにも出来すぎていると思う。瀬戸、開戸、それに根戸。君らの力はおかしいだろ? なんだよ、その発掘チートは?」


 ジョッキの中身を一気に空けると、俺はストレートに疑問をぶつけた。それに答えるように瀬戸が答える。


「大学を決めるときに、実は夢の中で金色の龍が出てきて勧められた。函館に来れば失くした記憶が蘇るって」


「嘘、うちもや。あれは絵とかで見る金龍に間違いないねん」


「マジか~、ワイもや。一回だけやなしに何回もや。函館は家からは遠いけど、無視でけへん感じやったなぁ~」


「私たちも同じ、たぶん、神隠しに遭った時に何か大事なことを託された気がするけど、それが何かわかんないから、すごく夢が気になったんです。手の甲の鱗の痣も疼いたし」


 開戸妹の横で、兄も首を何度も縦に振っている。


 瀬戸を皮切りに全員が話した大学の志望動機は、夢で金龍に薦められたからだという。また、その時に手の甲の痣も疼いたらしい。


「子供の時の神隠しといい、手の甲の痣といい、すげぇ~偶然だな。お前たちって函館に縁でもあったわけ?」


 ここまで偶然が重なると何か因縁めいた話でも出てきそうだけど……。俺の問いに対して全員がかぶりを振るのだ。


「うちは兵庫の六甲出身。函館には来たこともなければ、親戚中探しても縁もゆかりもあれへん」


「ワイもそうやなぁ~。生粋の奈良県民で、函館の大学に行くゆうたら裏切りもん扱いや。関西人は関西を出ていくもんに冷たいからな」


「私たちも、実家は仙台だけど、函館は話で出るくらい」


「五稜郭と函館山からの夜景だけ、青葉城に日本三景の美保の松原、歴史が違う」


 開戸兄、大学進学は別にご当地自慢じゃないから。


「私は小さい頃に住んでたけど、瀬戸神社で神隠しにあって、ここに近づくのは怖かったです。でも……、夢を見てから、その時自分に起こったことを知りたい気持ちの方が強くなったの!!」


 最後になった瀬戸の言葉にみんな頷く。神隠しと記憶喪失の謎、そして刻まれた鱗の痣。なるほど、みんなこの謎から逃れられず、この北の大地にやってきたということか。


「なんてくだらんことに取りつかれてるんだ? そんな10年前のことなんて今の生活には関係ないだろ。逆に思い出すことで背負うこともある。知らなければよかったと後悔することもあるじゃないか?」


「せんせぇ~、深こう考えたらあかんやろ。わいと同じ思いでここに来た人がいるだけで勇気をもらえたんや」


「うちも一緒や、あの神隠しの時に授かった力はこの時のためやったんや。納得いったでぇ~」


 俺が尋ねようとしたことを根戸が答えてくれた。俺の睨んだ通り、こいつらのチート能力は……。


「もしかして、瀬戸さんや開戸さんの力も行方不明になったときに手に入れたのか?」

 もはや遠慮はしない。酔いに任せて核心にせまった。それに対して瀬戸さんも開戸妹も躊躇なく答えてくれた。隠す気はないみたいだ。

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