風立ちぬ
深い緑色をした稜線の向こう側
入道雲が山を乗り越えるように湧き立つ
どこまでもまっすぐ続く道の先は
陽炎が立ち揺らめいている
ペダルに足を掛けて漕ぎ出す
見送ったあの日のように
揺らめきに追いついて
追い越していけば
あの日届かなかったその先に
辿り着けたりしないだろうか
詮無いことを考えながら
坂道を下り街を抜ける
通り過ぎてく建物の軒先に
ガラスの器に札が1つ
くるくるとひらめき音が響く
哀しみが通り過ぎていく
見上げれば
空はどこまでも蒼かった
風立ちぬ 鈴の音ひとつ 空蒼く
その音は確かに
「またね」
と言った