部屋
今の状況を端的にいうならば…
…つまり……つまり、俺は結論から言えばヘンテコな女に捕まり拘束されている。
何故かは知らん、俺が聞きたい。
というか誰か教えてくれ、そして俺を助けてくれ。
助けてくれたら全財産くれてやる。
ごめん、全財産は嘘だけど…
まぁ、衣食住は奪われていないし『わぁい、ニート生活最高!』という状況に見えなくもないな。
テレビもあるしな。
普段、テレビはまったく見ないんだがな…こうも暇ではテレビを見るしか娯楽がないのだ。
と、面白くも無いテレビを見ていたら遠くからドアの鍵を開ける音がした。
どうやらこの家――家なのかどうかは知らないが――の主がお帰りになられたようだ。
「やぁ、少年、元気にしていたかな?ほら、私は料理が苦手だからな、デパートで惣菜を買ってきたよ。」
「そうかよ、その辺に置いておいてくれ。」
そう言ってテレビをまた見る。
「少年、つれないな、たまには有難うとか感謝の言葉はないのかい?」
「…」
「そう黙るな少年…だんまりか…では私は自室に戻る。用があったらそこの子機で呼んでくれれば良い。」
そう言うと女はでていった。
一体なんなんだアレは、突然拘束しやがって。
ここは謎に携帯電話の電波が入らないし、どういう仕組みかしらんがこの部屋から出ることが出来ない。
部屋から出ることが出来ないというのは施錠されているとかではなく、もっと違う次元で出ることが出来ないのだ。
ドアは開く、ならば普通…ドアから出れば良いのだが、どういうわけかドアを開けても先が無い。
ドアを開けたら壁があるのだ。
正直、意味不明である。
試しにドアを開けっ放しにしていたら、女は壁からにゅっと突き出て入って来た。
勿論、出ていく時は壁にめり込んでいく。
そして当然の事ながら俺にはそんなスキルは無い。
部屋に風呂もトイレもある。
水道も出る。
食事も出る。
生活には困らないが監禁されているにはかわりない。
「あーあぁったく、しかも窓を開ければ下には雲が見えるし一体なにがどうなってるんだよ…」
とりあえずご飯食べるか。
…なにげにこのコロッケうまいな。
食事が終わりふと、日付を確認すると…
「うっわ…」
拉致られてから半月もたっている。
終わったな、大学の単位終わった。
つか友人関係も終わったな。
それ以前に捜索願いとか出てねぇかな…一人暮らしだし親とも疎遠だから出てねぇかもな…
ニュースでもやってねぇしな…
とりあえず今日は寝るか。
……
………
…………
つか俺、成人してるから少年じゃなくて青年だ、いや、成年か?
とりあえず次に会ったら言ってやろうそうしよう。