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プロローグ
だから言ったんだ。
深入りするなって…
自分自身に言い聞かせながら俺はとにかく全速力でバイクの元へ駆けていた。
「よし…」
イグニッションキーを回し、セルフスターターボタンを押せばすぐにエンジンは鼓動をはじめ俺の駿馬になってくれる…
そして、予想通りにエンジンは掛かり官能的なエキゾーストノートを奏でたところで俺は乱暴にクラッチを繋ぎ急発進する。
自分より前に生を受けた25年前のバイクといえど750ccの排気量と70馬力そこそこのエンジンを搭載した駿馬は瞬く間に高速道路であっても一発で免許がなくなる、そんなスピードに達していた。
「へっ…いくらぶっ飛んだ奴でも流石にこの速度じゃ…」
乗り物に乗っていなければ追いつけないだろう?
と、呟こうとしてバックミラーをみた俺はとても…
いやあるいは、本能では感じ取っていたのかもしれない。
「やぁ、少年。その程度の速度なら、私でもこのように追いつくことが出来るのだよ?」
そう、頭の中に直接響く不思議な声という意思が叩きつけられた…