救出劇
ブクマくださった方、有難うございます!!
「こ、ここです! 私はここにいますっ——!」
私は声を振り絞って叫ぶ。すると、扉の外で息をのむ気配がした。
……レイフォルド様がきてくれた!
嬉しくて、自然と涙が込み上げてくる。
がちゃがちゃと扉の取っ手を押しているけど、鍵がかかっているせいで開かない。
『ねぇ兄様、扉を壊したほうが早いかも——』
そ……その声はっ。
まさかアルフレド様もいるのっ!?
一緒に助けにきてくれたのだと思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
『そうだな。……カルナディア嬢! できるだけ扉から離れていてくれ! すぐに助ける!』
言われた通り、私は床を転がって扉から離れておく。今度は、よく知った声が聞こえてきた。
『ではマリー氏、あとは頼む』
『マリー様、出番ですよ!』
『お任せくださいな! カルナーは、わたくしが助けてみせますわッーー!!』
ええぇ!? マリーまで来ちゃったの?
ただでさえ狙われてるんだから、留守番してなきゃ駄目でしょう……。
驚いていると、ドンドンッと激しく扉を豪打する音が響く。繰り返しているうちにメキメキっと亀裂が入り、やがてボコンッと穴が開く。やった!
「ぜぇ……っ、カルナーご無事ですか!?」
穴の向こう側に、肩を上下させているマリーが見えた。両手に握りしめてるのは……金槌よねぇっ!?
扉を破壊したのはマリーだったんだ。勇ましい親友の姿に胸が熱くなる。まるでミスリルライラそのもののようだ。
「もうマリーったら……筆より重いものを持っちゃ、駄目だよ……危ないよっ……」
「っ! カルナー、まさか怪我を!?」
「なんだと!」
床に座り込んでる私のもとに、レイフォルド様が走ってくる。会いたかった……。
もう二度と会えないと諦めていたのに、レイフォルド様は私を見つけて、助けにきてくれた。
「カルナディア嬢、もう大丈夫だ」
レイフォルド様は上着を脱いで、それで私の身体を包んでくれた。あたたかい。そして、そのまま私を抱き上げる。
「遅くなって、すまない……」
ぎゅっと強い力で抱きしめられて、胸の奥が締めつけられる。伝わってくるあたたかな体温に、緊張がほどけていくのを感じた。
「大丈夫だ。そのまま、わたしに身体を預けて」
「レイ……フォルド、様」
「帰ったら手当てをして休もう。後のことは、心配するな」
「…………はい」
頷くと、かすかにレイフォルド様が笑った気がした。吐息がくすぐったい。
触れ合った胸から、レイフォルド様の心臓の音が聞こえてくる。ものすごく早い。それは私も同じ。
「兄様、追っ手がきた! カルナディアさんを連れてさきに行って!」
「っ、だが、」
「僕なら平気だよ。武器もあるし、ひとりでも戦える!」
「アルフレド様は一人ではありませんわっ。わたくしも一緒に足止めしますわ!」
「アル、マリー氏……」
レイフォルド様の肩越しに、閉じていた瞼を開けると、ドレス姿で鞭を振り回すアルフレド様と、マリーの姿が見えた。
無茶しないで、って叫びたいのに、声が出なかった。情けない。
「ほら兄様はやくっ! カルナディアさんのこと大切なんでしょ!」
「そうですわ。これ以上カルナーを泣かせたら、わたくしが許しませんわよ!」
「くっ……すまないっ」
レイフォルド様が私を抱えたまま、走る。
揺られていると、次第に意識が朦朧としてくる。
「……ディア嬢、……かっ、カルナディア嬢……」
何度も名前を呼んでくれるレイフォルド様に応えられないまま、私は意識を手放した。
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