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嘘つきの見破りかた

ブクマ、評価下さった方、本当に本当に有難うございます!!


 ぱっと明かりが灯された。

 私は涙を拭いて、足音のほうを見る。

 そこにいたのは、父さんと……いかにも金持ちそうな知らない男の人。歳は四十歳くらい? ううん、(ひげ)を剃ったらもっと若く見えるかもしれない。鼻の下で綺麗に整えられている髭。ちょび髭。


「父さん、こんなとこに私を連れてきて、どういうつもりっ!?」

「うるさい! 言うことを聞かないオマエが悪いんだ!」

「なんですってぇ〜〜!」


 怒鳴る父さんに、私は負けじと言い返す。


「悪いことをしてるのは父さん達のほうでしょ!? 魔道具を盗むなんて犯罪だよ! 今すぐやめてっ、そうじゃないと、」

「へぇ。……お嬢さんは、その話をいったい誰から聞いたのかなぁ?」

「!!」


 ねっとりと絡みついてくるような粘着質な声に、ぞわりと鳥肌が立つ。ちょび髭の人の声だ。


「し、知りません……」

「そんなはずは無いだろう。怒らないから言ってごらん? さあ、言うんだ」


 じりじりと詰め寄られて、私は逃げ場をなくす。

 なにこの人。目がこわい。だから私は、ちょび髭の部分だけをキッと睨み続けていた。


「ん、言えないのかな? まっ、いいや。別な質問に答えてもらうから」

「…………」

「お嬢さんは、かの有名な「女魔術師・ミスリルライラ」の作者と親交があるというのは、本当かな?」

「……し、知らない」

「またまたぁ、お嬢さんがミスリルライラのドレスを作っていたのは知ってるんだよ? あれれぇ、もしかして作者に黙って作ってたワケ? だとしたら、それこそ犯罪行為だから、今すぐ訴えないといけなくなるなぁ……」


 ぐっ……。痛いとこをついてきたわねぇ。

 私とマリーが知り合いなのはバレてしまっている。

 これ以上は隠しても無駄かもしれない。


「僕はミスリルライラの、マリー先生の愛読者(ファン)なんだよ! 新巻が発売されるたび出版社に手紙だって送ってるんだ!」

「は、はぁ、……それで?」

「マリー先生の物語は素晴らしいぃ! もっと世界に広めるべきだ! 僕は勇気と感動に満ちた物語で、世界を変えたいと思っている——!」


 ニタニタと笑う顔は、嘘くさい。

 口ではそれらしい事を言っているけど、私は誤魔化されないんだからねっ! 

 ミスリルライラを広めたいんじゃなくて、ミスリルライラで金儲けしたいだけでしょ!?

 

「お嬢さんだって、そう思うだろ? だから僕にマリー先生を紹介するんだ。いくら金を積んでも出版社の奴らは応じてくれないからな」

「嫌です」

「は!? 金ならいくらでも出してやるから、教えろ!」

「じゃあ、かわりに教えてくれませんか? 具体的に、ミスリルライラのどこに感動したのか……」


 ひくりと、ちょび髭が動いた。

 男の顔が、怒りと動揺で引き()っている。


「私も愛読者(ファン)なんです。同じ愛読者(ファン)と、その想いを共有しあえたら嬉しいじゃないですか?」

「そんなの……全部に決まってるだろ! マリー先生が書くものは全て完璧で素晴らしい!!」

「私はですねぇ……あっ、特に、あの台詞(セリフ)に感動しました」


 わざとらしく、私は言う。


「——〝金があるからと言って、金が無いものを虐げていい理由にはならないわ。弱き者を救う人こそ、真に心が豊かな人なのよ〟」


 ねぇ、今の状況にぴったりな言葉じゃない?

 物語のミスリルライラは貴族令嬢だったけど冷遇されて生きてきた。だから弱い者を助けようと、どんな危険も顧みず戦う心の強い魔術師だ。

 本当にミスリルライラが好きな人なら、魔道具を盗んだりしないし、卑怯な手で人を貶めることなんてしない!


「あなた達だけには、絶対にマリーを渡さない!」

「こっ……この、生意気な、小娘めぇッ!!」


 どうやら本気で怒らせてしまった。

 こめかみに青筋が浮かべた父さんが、私の髪を強引に鷲掴み、反対側の手を振り上げる。

 バチーン! と思いっきり頬をぶたれた。

 まぶたの裏が真っ白になり、そのまま私は床に倒れた。攻撃力高すぎて涙がでる。

 立ち上がる気力もないまま目を閉じていると、チャプチャプと水音が聞こえてきた。口元に布のようなものが押しつけられる。


「——ッッ!!」


 これ、これっ、くさいやつ!

 人間が嗅いだら絶対に駄目なやつ! 

 抵抗する力は残ってないから、私は出来る限り呼吸を止めて、気絶したフリをした。

 

「くそっ。なかなか渋といな……」

「す、すいません、ご主人様。明日の朝までには」

「フン、まぁ、薬を使えばそのうち嫌でも話したくなるだろう。……僕はこれから大事な商談がある。お前も、もう帰れ」

「は、はい。それではまた明日に……」


 二人が鍵をかけ、去っていく音がした。

 私は安堵する。なんとかこの場は切り抜けたけど、次も無事でいられる保証なんてない。


「はぁ……ほっぺ痛い……」

 

 じんじんと熱を持っているから腫れていそうだ。口の中も錆びくさい味がする。

 ごろんと転がったまま、ゆっくりと深呼吸を繰り返していると、まぶたが重たくなってきた。

 このまま眠ってしまおう……。

 そう思った時、やけに騒がしいことに気付く。

 硝子の割れる音や、悲鳴のような叫びが聞こえる。


「なにかしら……」


 聞き耳を立てていると、バタバタと誰かの走る音が近付いてきて、部屋の前でピタリと止まった。強く扉が叩かれて、びっくりする。


『カルナディア嬢! ここに居るか!? 居るなら返事をしてくれ——!』


「!!」


 この声は!! ……うそ、なんで?

 信じられない気持ちでいっぱいになる。

 でも聞き間違いなんかじゃかない。

 私が、大好きなレイフォルド様の声を聞き間違えることなんて、絶対にないもの……!




お読み頂きまして、有難うございます!


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― 新着の感想 ―
[一言] カルナー頑張った!! そしてレイフォルド キタ━(゜∀゜)━( ゜∀)━(  ゜)━(  )━!!!!!
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