表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/43

仮面仮装パーティー 後編

ブクマ、評価、ありがとうございます!!

嬉しいです!!頑張ります!!

 レイフォルド様が驚くのも無理はない。

 私だってこんなパーティー、マリーがいなければ……って、そうよ、早くマリーを助けなきゃ!


「マリー! 大丈夫!?」


 今ならマリーを助けられる。

 そう思って動こうとしたとき、私の目に飛び込んできたのは、レイフォルド様と同じ、真っ黒な仮面をつけ、長い髪を後頭部でひとつに(たば)ねた、見知らぬ青年。

 なんと彼は、マリーを縛っている狩人(ハンター)の仮装男の腕を(ひね)りあげると同時に、背負い投げを決めた。なんて鮮やかな身のこなし。す、すごい!


「いでででッ、クソっ……」


 おかげで床に這いつくばることになった男が、痛みで呻いている。

 助け起こしている仲間の男が、恨めしそうにこちらを(にら)み、文句を言ってくる。


「なにも投げ飛ばさなくたって良いだろ。暴力反対! オレ達はただ女の子達と楽しもうとしただけなのにさ。……ねぇ、キミ達だって、ソレが目的でこのパーティーにきたんだろ?」


 そんなわけないじゃない!


 否定しようとしたけれど、男の絡みつくようなじっとりとした視線に、声が出なくなる。

 そんな私の視界をレイフォルド様の背中が遮った。大きくて、広い、守ろうとしてくれているのが伝わってくる背中だ……。


「嫌がる女性に手を出すな。遊びが目的なら、他をあたりたまえ」


 きっぱりと言いきるレイフォルド様の声が嬉しくて、息苦しいほどに私の胸はいっぱいになる。


 結果、勝ち目がないと悟った狩人(ハンター)風の男達は、溜息をつきながら去っていく。辺りをきょろきょろと見回しているところを見ると、どうやら別の女の子を物色しはじめたみたい。()りないわねぇ。


「すぐに助けられなくて、ごめんね!」


 私はマリーに駆け寄る。

 青白い顔で、マリーはふるふると首を横に振り、細い肩を震わせていた。怖かったよね。本当にごめんね。

 両手に巻きつけられた(ロープ)を丁寧に(ほど)いてくれているのは、さっき男を投げ飛ばした黒仮面の青年。マリーを助けてくれた恩人だ。


「どなたか存じませんが、私の大事な親友を助けていただき、ありがとうございます!」

「……え、っと、もしかして気付いてない?」

「はい?」


 お礼を言った直後、青年は何故か、とても驚いた表情で私を見た。


「僕だよ。カルナディアさん」

「そ、その声はまさかっ——アルフレド様!?」

「正解。ふふっ……ドレスじゃないなら、気付かなかったのかな」


 えええぇっっーー!!? 

 思わず心の中で絶叫してしまう。

 だって……私の知るアルフレド様は、天使みたいに可愛くて可憐で、ドレスがとっても似合う男の子だ。なのに今目の前にいるのは、仕草まで洗練された紳士みたいで。


「男の姿の僕はどうかな? 女の子でいるほうが、やっぱり似合ってる?」

「どっちの姿も素敵だと思いますっ!!」


 即答すれば、隣にいたレイフォルド様がものすごい勢いで頷いて「どんなアルも天使だ」と、握り拳をつくっている。同意します!


「兄様まで……ありがとう。……んと、はい、これでぜんぶ(ほど)けたよ。手首が赤くなってるね。痛くない? 待ってて、今ハンカチ冷やしてくるね」


 はじめて会ったマリーのことを心配してくれるアルフレド様は、本当に優しい性格をしているんだろう。さっそく懐から綺麗に折り畳まれたハンカチを取りだしている。


「カルナー! わたくしのせいで、怖い思いをさせてごめんなさいっ!」

「謝らないで、マリーのせいじゃないよ。私こそすぐに助けてあげられなくてごめんね」


 涙を浮かべているマリーを、ぎゅっと抱きしめる。改めて無事で良かったと思う。

 マリーの肩越しに、ハンカチを濡らしに行こうとしたアルフレド様が、弾かれたように振り向いたのが見えた。


「カルナディアさん、いま……マリーって言った? マリーって、もしかして()()()()()()なのっ!?」


 し、しまった……。


『女魔術師・ミスリルライラ』の素性不明の作者は『マリー』という人物で、しかもマリーは私の親友だって話してしまっている。どうにか取り繕おうとしたけれど、もう遅い。


「ごめん、マリー。バレちゃった……」

「平気ですわ。黙らせる手段はいくらでもありますもの。それよりも、アルフレド様とお呼びしていましたわね? お名前が、あの手紙(ファンレター)の方と同じですが、もしかして……」

「うん、その手紙(ファンレター)の人だよ」

「まぁっ、なんて偶然」


 私だって吃驚している。

 まさかこんな所で、レイフォルド様とアルフレド様に会うなんて……。


「兄様! 兄様のことだから、僕が具合悪くなった時のために、どこか部屋をおさえてるよね!?」

「無論だ。アルを連れてくるんだ。前もって、この屋敷の一等高級な部屋ロイヤルスイートルームを押さえてあるが?」

「じゃあすぐに案内して! マリー様の手当てをしなきゃっ」

「わかった」

「僕……今夜は男装をしてて良かったと思う。だってドレスを着てたら、戦えなかったから」


 それからはレイフォルド様の後ろに続いて歩く。


 廊下では何人もの男女(カップル)とすれ違った。暇を持て余した富裕層の一夜限りの戯れ……、仮面をつけ素性を隠しているから、なんとも怪しい背徳感がある。

 まさかレイフォルド様とアルフレド様も? 正直言って、二人のそんな姿はあまり想像できない。


「そういえば、仮面を付けてたのに、よく私だって分かりましたね」


 ふと疑問だったことをレイフォルド様に聞く。


「きみのドレスが、アルのあげたものだったからだ」

「そっか、なるほど」

「ああ、だから気付けた。それより、カルナディア嬢は何故こんなパーティーに?」

「マリーの取材で」

「取材?」

「はい、オークションを見たかったらしいです」

「そうか、理由は分かったが、次から出席する際は気を付けたほうがいい。色んな人がいるから」

「はい。助けて頂いてありがとうございます。なにかお礼をしなきゃですね」


 と言っても、お金がかかるモノは無理ですけどね、と私は苦笑いする。


「お礼なら、ーーハンカチが良い」

「ハンカチって、この間のような?」

「ああ、近々、発掘調査にいくことになったんだ」

「発掘調査……」


 なんでも新たな古代遺跡が発見されたらしい。貴重な魔道具なども眠っているらしく、魔術研究所の所長であるレイフォルド様が、現場で発掘の指揮をとることになったという。


「触っただけで呪いが発動するような危険な魔道具も、遺跡のなかにあるだろう。きみの刺繍したハンカチを持っていれば回避できる」

「そういうことなら、私、たくさんハンカチを作りますね! 任せてください!」


 それなら得意分野だもの。

 出発前に渡せるよう、さっそく帰ったら作業をはじめなきゃ。腕がなるわねぇ。


 

 やってきたのは、見るからに高価そうな調度品でかためられたロイヤルスイートルーム。居室(リビング)寝室(ベッドルーム)が一緒になったような、豪華な作りだ。


「マリー様は、こちらに座ってくださいね!」


 さっきからアルフレド様は、甲斐甲斐しくマリーのお世話をしている。マリーは尽くされるがままになっているけど、嫌がってはないみたい。


「カルナディア嬢も休むといい。飲み物の種類も色々あるし、もし何か食べたいなら、軽食も頼めるようだが?」

「あ、私、自分でやりますよ」


 テーブルの上には、お酒や果実水などの入った水差し(カラフェ)が幾つも並んでいる。軽食は無いけれど、飲み物の他にも、カットされ大皿に盛り付けられた果物や、一口で食べられる焼き菓子などがあった。見ているだけでも楽しくなる。


「とりあえず喉が渇いたから……」


 目に入ったのは氷が浮かんだ琥珀色の飲み物。冷たい紅茶(アイスティー)だ。

 さっそくグラスに注いで、お行儀は悪いけど、立ったままゴクゴクと飲み干す。冷たくておいしぃ〜!


「カルナディアさんて、お酒飲めないんじゃ、」

「っ! ……いけませんわっ、カルナー!」


 ふぁ……れ……。

 頭がくらりと、酩酊感?

 ああ、でもフワフワして、なんだか気持ちぃ。

 私、このまま、寝れ……。


「カルナディア嬢、危ないっ!!」


 声がした。

 背中に温かな感触。

 そして目の前にはレイフォルド様が……三人いた。何故か全員ボヤけてるけどね。分身の術?

 僅かに眉間を寄せ、真剣な眼差しのレイフォルド様三人に見つめられると、どうしたってドキドキしてしまう。


 ああ、やっぱりカッコイイなぁ、レイフォルド様……。


 しかもまた一人増えて、四人になった。

 これは、アレみたいねぇ。

 マリーが読んでた恋愛(ロマンス)小説で、女主人公(ヒロイン)ひとりに対して、複数の美男子(イケメン)が愛を告げるというアレ……。


「……ぎゃく、はー……れむ?」


 そのまま、背中にくっついてる温かい感触に、私は身を任せた。

 


お読み頂きまして、ありがとうございます!


次回は、アルフレド様視点を入れる予定です。

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ロングアイランド・アイスティーですね? 女の子を酔わせる時に使うと言われるカクテル(笑) 意図せず引っかかった!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ