まるで恋文
ブクマくださった方、
ありがとうございます( ;∀;)感謝!!
今回はちょっと短いのですが、宜しくお願いします!
アルフレド様から託された手紙を持って、私はマリーの邸宅を訪れることにした。
お土産もある。
リボンを結びつけてある綺麗な籠の中には、焼き菓子などが詰まっていて、手紙だけでは味気ないからと、アルフレド様が持たせてくれた。
マリーは執筆の合間に、よくお菓子をつまんでいるって聞いたことがある。甘いものを摂ると、頭がよく働くって言ってたわねぇ。
「いらっしゃい。カルナー!」
「こんにちは、マリー。……もしかして寝不足? 疲れてるなら、また今度にしましょうか」
マリーの目の下には大きなクマができていた。この前のメルさんみたいに。
「ううん。大丈夫ですわ。昨晩は筆がのってしまって、気付いたら朝になってましたの。その後に少し眠りましたから、心配ないですわ」
「そう? なら、いいんだけど……」
「今日もお天気が良いですし、またお庭でお茶にしましょう」
色とりどりの花々を眺めながら歩いていくと、庭に据えられたテーブルには先客がいた。
「——師匠!」
師匠は、マリーのお祖母様で、私に裁縫を教えてくれた恩人。師匠がいなければ私は今ごろ路頭に迷っていたかもしれない。
久しぶりの再会に嬉しくなって、私は駆け出していた。
「師匠、お久しぶりです!」
「お元気そうですね、カルナディア」
「はい! 全部、師匠のおかげです!」
そばにいくと両腕を広げ優しく抱きしめてくれる。柔らかな温もり。まるで本当の親のように、私のことを慈しんでくれてるのが伝わってくる。
「師匠は、お元気でしたか?」
「もちろん元気ですよ。相変わらず忙しいけれど、ようやく事業を任せられる御方が見つかったの。引退したら、また一緒に刺繍をしましょうね」
「はいっ!」
貴族でありながら、事業主としても活躍している師匠。独自のルートで外国の珍しい反物などを仕入れ、小売り業者に卸している。目利きは確かだと、同業者からも一目置かれている存在だ。
多忙の身である師匠は、私に一目会うために、わざわざ待ってくれていたらしい。
目的を果たすとすぐに、待っていた秘書を連れて、颯爽と去っていった。
師匠……本当に素敵な人だなぁ。
師匠も、ミイサさんも、マリーも……、みんなスゴイって思う。そんなスゴイ人達の隣にいて恥ずかしくないように、私も頑張らなくちゃねぇ。
穏やかな時間が流れている。
まったりと紅茶を飲んでいる私の横で、マリーはアルフレド様からの手紙を読んでいた。
「……あら……ふふっ」
「?」
目で文字を追いながら、くすりと笑ったり、時折り真剣な表情で頷いているマリー。なんだかとても嬉しそう。
……だけどね、その手紙がやたらと長いのは、私の気のせいではないはず。
だって次から次へと、読み終えた便箋がテーブルの上に重なっていく。
マリーは夢中になっているせいか気付いてないようだけど、いったい何枚あるのか。ファンレターって、これが普通だっけ? あれ?
「ふぅ……、お待たせしてしまいましたわね」
マリーがそう言って、読み終えた手紙を丁寧に戻してから、冷めた紅茶を一気に飲み干した。
「お手紙どうだった?」
「えぇ。とても嬉しかったですわ。……まるで積年の想いを綴った恋文のようで」
「っ、こっ、いぶみ!?」
「ふふっ、とても情熱的な内容でしたわ。わたくしの物語を、心から愛してくれているのだと伝わってきましたわ」
「そ、そう……」
「カルナー、残念ながら、わたくしはお返事をすることが出来ないのですが、とても励みになったと伝えて欲しいですわ」
「わかった。必ず伝えるね」
それくらいならお安い御用よ。
レイフォルド様にハンカチを頼まれたから、お屋敷に納品しに行ったときに伝えられるはず。アルフレド様のことだから、きっと喜ぶでしょうねぇ。
「ところでカルナー、わたくしのお願いを聞いてくださる約束は、覚えていらっしゃいます?」
「もちろんよ! 取材に付き合えばいいんでしょ?」
ミスリルライラの取材に協力するかわりに、プレゼントを用意してもらったんだもの。約束は守らないと。それに親友のためなら、なんだって手伝いたい。
「マリー、私は何をすればいいの?」
「では三日後の夜……、とある貴族が催す『仮面仮装パーティ』に、わたくしと一緒に参加してくださいませ!」
「! パーティ!?」
「ええ。物語の場面に使いたいのですわ」
「貴族の人のパーティなのに、私が行ったら変なことにならない?」
「大丈夫ですわ。仮面で顔は隠れてますし、会費さえ払えば誰でも「入場可」だそうですわ!」
ええっ、なにその適当なかんじ。
全然大丈夫じゃなくない?
めちゃくちゃ気遅れするけれど、約束だし、私はマリーと一緒にパーティに参加することに決めた。
お読み頂き有難うございます。
次回はちょっとした波乱があります。




