Episode#3 食堂にて
「えーっと…華、ちゃん……でいいかな…」
「まあ、それでもいいわ。もみじはお昼何を食べるのかしら?」
少し照れ臭そうに言うもみじに華夜は微笑みかけ、そう問うた。
「お昼は…持ってきたサンドイッチ……」
「食堂で食べないのね?」
不思議そうに訊かれ、もみじは言いにくそうにしながら答える。
「えっ、と……人が作った料理、苦手で……」
「あら…ごめんなさいね?」
「う、ううん……いいの。誘ってくれてありがとう」
そう言うともみじは、心から嬉しそうに笑みを浮かべる。
「あ、そうだ。確か食堂でもお弁当とか食べてよかったはずだから……一緒に食べない?」
華夜の提案にもみじは目を輝かせる。
「いいの……!?じゃあ一緒に食べたい…!」
「ええ。じゃあ私は何か買ってくるからここで待っててちょうだいね?」
言いながら華夜は既に立ち上がっており、そのまま売店へ向かった。
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「お待たせ、もみじ。混んでて時間かかっちゃった」
しばらくして戻ってきた華夜はもみじの前に腰掛けながらそう言うと人波に揉まれて乱れた髪の毛をかきあげ、買ってきた食事を目の前に並べた。
「それじゃあいただきましょうか」
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「え、もみじ魔法使えないの!?」
「う、うん……錬金術だけ…」
食事をしながら、華夜が驚いたような声を上げる。そう、もみじは魔法が使えないのだ。
「そっかぁ……あ、ねえ知ってた?この学校の方針。転入生とか新入生は魔法か錬金術選んで軽い実技テストみたいなのやるのよ」
「ブッ…ケホッ、ゲホッ……え……!?が、学園長先生から聞いてない……」
学園長にも聞かされていないことを華夜からいきなり聞かされ、もみじは飲んでいた紅茶を盛大に吹き出す。
「ど、どどどどうしよう……何も対策してない……」
「大丈夫よ。テストって言っても別に成績には関係ないもの」
「そう……なら、よかった…」
「成績には関係ない」と言う言葉を聞き、もみじは安心したように胸を撫で下ろしたのだった。
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「じゃあ浅宮さん、実技テストを行うので前に出てきてください」
昼休み後の5時間目、授業の1番最初にもみじはそう言われると、昼休みの不安げな様子はどこへやったのかと思うほどに自信たっぷりに教壇に立っていた。
「テストは簡単です。2分間の間にこの丸石をどこまで薔薇に近い形に変えられるか。浅宮さんなら大丈夫でしょう。では、スタート」
教師の掛け声と共にもみじは石に語りかける様に目を閉じる。その後クラスメイトの半数以上がもみじの才に驚くことになった。