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E1-2 バカンス前線異常アリ!(戦闘なし)

南の海、ということで青々とした海、晴れ晴れとした空。


「うーみーだー!」


ヨーコが走っていく。


「ヨーコ! 準備運動しないと危ないよー」


サトコもそんな事を言いながら準備運動していない。


さっばーん!


「きーもーちいいー!」

「来て良かったねー」


女の子二人でキャッキャ遊んでいる。水着を一緒に買いに行ったとも言うしかなり仲のいい親友同士なのだろう。

ワタルはビーチベッドに寝転んでその様子を見ていた。隣ではパラソルを差したトワがいる。


「あの、司令官」


声がかかった。トワではないこの声は、リディだ。


「水着、着てみたけど、どう?」


見惚れた。

ビキニタイプの水着だが、デザインや装丁が凝っている。代わりに色はシンプルに黒一色。とても似合っていた。


「すごく可愛いよ」

「あ、その、ありがと」


トワはニコニコ。ちなみにトワの水着はセパレートタイプで他の子よりも多少露出が少ない。


「司令官。あの、後で、一緒に泳がない?」

「うん、分かった」

「約束ね」


とトワを一瞥してリディは駆けていった。トワを見たのは許しを得ようとした感じだろうか。


「何も起きない限りは大丈夫ですよ」


とトワは言う。何も起きない訳がないのだが。


おそらく、水着リディがガチャ限のSSRだ。ワタルはそう目星をつけた。つけても引けないと意味がない。

これが初回イベントだとするのであれば、序盤にスポットが当たるメンバーで構成するのは理に適っている。ということはサトコは次のシナリオあたりでスポットが当たるのだろうか。流石に今からそっちのシナリオに行く気は起きない。


リディが待っているであろう辺りに向かう途中、色んな隊員がそれぞれバカンスを楽しんでいた。ヒメもいたが複数人に囲まれてもみくちゃだった。人気があるんだな。マスコット扱いっぽいけど。


「お待たせ」


リディが居たので声をかける。


「あ、司令官。来てくれたんだ、嬉しい」


頬を染めるリディ。まだ好感度アイテムを1回しかプレゼントしていないのでシステム上でのリディの好感度は限界ではない。100%になった場合どうなってしまうのか。


「司令官知ってる? 沖のほうにはイルカがいるみたいなの」

「へえ」

「だから明日はクルーザーでイルk」


「大波が来たぞおおおお!」


「へ?」


ワタルとリディは顔を見合わせた。そのままギギギギとでも擬音が出そうな動きで海を向く。波が迫ってきている。


「うはははははははー! じゃ!」


波の頭頂に人がいる。お分かりだろう。鮮血姫だ。波乗りをしている。

(あ、これギャグイベントだ)

ワタルの理解は正しい。夏なので。あとクリクリは基本的にギャルゲーなので。


「司令官! 後ろに下がっていて!」


リディがワタルを庇うように波に立ち塞がる。手には何もない。


「はああああああああ!」


拳が真っ赤に光る。クリムゾンクリスタルの力であることはワタルにもわかった。でもそんなに明らかに力が発露した事はなかったけど。


「てやあああああああ!」


打ち抜く。リディの拳から放たれた紅の光はワタルが昨日放った閃光砲のように伸び、波に当たって爆発した。

(ギャグイベだ)


「のわああああああああ!」


波が光によって爆発したことで鮮血姫が吹っ飛ばされて来た。そのままワタルの腕の中にスポッと入る。

当然ながら鮮血姫も水着姿だ。ちょっと背伸びをしてオシャレな水着を着てみました感のある水着姿だ。スクール水着ではない。似合うとは思うが。


「司令官!」


リディが寄ってくる。同時に一瞬気を失っていたのだろう鮮血姫も我に返る。


「うわ、わわわ! 汝なぜわらわを抱きしめておるのだ!」

「俺だって知りたいが」

「わらわの貞操を奪った上に抱きしめるなど、け、結婚でもする気か!?」


ん?


「何を言っているの! 司令官と結婚するのは私よ!」


ん?


「おーい! しれいかーん!」


深く考える前にヨーコがやって来た。隣にサトコもいる。


「あ、お前『ウルフ』! こんなところまで来ているのか!」

「ふーんだ。わらわだって海に来たかったんじゃ!」


鮮血姫はいつの間にかワタルの手から降りていた。ヨーコ達には見られなかったようだ。


「人の迷惑になる事をするな!」

「知らんわ! 水晶隊はわらわの邪魔ばかりしおって」


口論になりそうなところに更に増援。


「司令官、大変です! サメが暴れています!」


サメ?


「はい、サメが海と浜辺で暴れだしているんです!」

「わはは、我らが『ウルフ』の者達も遊び足りないと見える」

「サメが『ウルフ』!?」


(やばい強引過ぎてちょっと笑ってしまいそうだ)

そういうイベントなのだ。


「水晶隊ども! わらわの『ばかんす』を邪魔するでない! 決して寝所まで来るんじゃないぞ!」


鮮血姫はぴょん、と全員から距離を取ってそう言った。


「司令官が一人で夜這いに来るというなら止めはせんが……」


その後小声でそんな事を追加する。なぜかワタルだけは鮮明に聞こえた。なんか知らないけどフラグが立っているらしい。メインストーリーを進めていけばわかるのかもしれないが、今はなんでそうなっているのか皆目見当がつかない。


「ではさらばじゃ」


消えた。後にはサメだけが残された。


「司令官、突如現れたサメ型『ウルフ』は地上海中問わずに観光客を襲うようです」


地上でも元気なサメとは。


「この仮称サメウルフからは通常の赤片以外にもクリムゾンクリスタルの力を吸収した巻貝が見つかるようです、巻貝からは赤片を精製し直せる他、観光名物にしようという動きもありますので集めておくと良いかもしれません」


水着イベはイベントアイテム収集を目的としたものらしい。ラインナップはまたアキノに確認できるはずだ。


「また、巻貝は特にヨーコさんと相性がいいようなので彼女の成長に一役買ってくれるかもしれません」


イベント報酬キャラはヨーコのようだ。順当なラインだろうか。


「リディさんとサトコさんも活躍してくれるようです。水着のお二人は夏仕様なので別途紅結晶での召集が必要です。ご注意ください」


限定ガチャ告知。


「今回、鮮血姫は『ウルフ』が占拠したロッジに泊まっているようです、仕掛けてくる前にこちらから向かうのが得策でしょう」


ボス告知。


「それでは司令官、面倒事は早く終わらせてバカンスを楽しみましょう!」


トワは完璧なイベント情報の報告を行った。最後の言葉に力が相当入っていたので本気でバカンスしたいようだ。そりゃあワタルだってバカンスしたいしリディといい感じだったのだから期待もしちゃう。男の子だから。


「なお、夏仕様のリディさんとサトコさんは紅結晶なしでも海岸では戦闘参加が可能です。海岸線を離れる場合は連れて行けませんので注意してくださいね」


つまりいくつかの(おそらく序盤数個の)クエストではお試しで限定キャラを使えるということらしい。この辺りは珍しいかもしれない。

編成を確認する。確かに仮加入という体で水着リディと水着サトコがいる。リディがSSRでサトコがSRだ。両方SSRという鬼畜仕様ではないらしく少しホッとするも、そもそも回せないのだからあまり意味がない。


SRリディの武器特性は短剣、剣、槍、銃だがSSR水着リディは少し違って短剣、拳、槍、鞭だった。短剣は同じなので入れ替える。水着サトコは銃があったのでジュンナと入れ替える。まあお試しなので。ヨーコは仮加入がなく、巻貝と交換しないと加入しないようなのでそのままだ。


「サメはどこにいる?」

「こちらです!」


イベントが本当の意味で始まった。

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