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E1-1 海に行こう!(戦闘なし)

「おはようございます司令官」


寝室を出るとトワが迎えてくれる。


「トワはいつ寝てるんだ?」

「夜ですけど」


違う、そうじゃない。教えてくれそうもないのでそのまま朝食を食べに食堂に向かう。


食堂にはまだ見た事がないメンバーがちらほらいる。ガチャで引けていないだけなのか未実装なのかは判断が付かないところだ。

リディが一人で静かに朝食を食べていた。昨日の傷は既にない。ヒメは人の輪の中で賑やかに食事している。ヨーコも元気いっぱいにカレーを食べている。カレー好きなのだろうか。

食堂は個性が垣間見えてなかなか面白い場所かもしれない。納豆定食を食べるワタルの横では、相変わらずトワがスムージーを飲んでいた。インスタ女子か。


「本日の支給です」


ログインボーナスは紅結晶1個だった。受け取ると、その後にトワが続ける。


「南の浜で鮮血姫が目撃されたという情報があります。『ウルフ』自体あまり見ない地域だったのですが、気になりますね」

「え?」


早くない? 鮮血姫と邂逅したの昨日だぞ。


「南の浜と言えば避暑地としても有名な所です。掃討ついでに休暇を取るのもありかもしれないですね」


ピンと来た。


期間限定イベントだ。鮮血姫の名前が出てくるからそこまでの進行がアンロック条件だったと推測できる。

てか鮮血姫がいるのに休暇はないだろ休暇は。どんなシナリオだ。


(いや、待てよ)

期間限定イベントは本編に関係しない程度のシナリオであることが多い。つまり、鮮血姫も見逃してくれるとかそういう奴だろうか?


「鮮血姫って何日くらい居そう?」

「2週間ほどではないかと」


期間イベントは確定、参加するほうが「旨い」だろう。期間イベントはイベント限定報酬が存在するのが常だ。まあこれが辛くて辞めちゃうゲームもあるけど。


「考えておく。何か新しい動きがあったら教えて」

「はい」


ログインボーナスの支給があったことで紅結晶の数は52個になっている。そう、昨日箱にセットした分は「システム上で引かれている」らしい。

ワタルは箱を見る。金色に光っていた。取り出してガチャ機械にセットする。発動した。


「魔法少女マーブルだよ! 昔からの夢が叶っちゃった!」


部屋にやって来たのは小さな女の子だった。魔法のステッキを持っているし、服装だって確かに魔法少女っぽい。……魔法?

ステータスを確認すると武器特性は剣、槍、弓、銃だった。魔法?


「ナツコさんはクリムゾンクリスタルの力で超能力に目覚めた方です」

「トワちゃん違うよ! ナツコじゃなくてマーブルだし、超能力じゃなくて魔法だよ!」


なるほどそういうキャラ。というかSSRはそんな子ばっかりなのだろうか。


トワが特に不審がる訳でもなかったのでそのままケースに次の紅結晶をセットする。

ログインボーナスの切り替えの際にガチャチケが復活している可能性がある、と状況からワタルは推測する。

1日1回が限度だがSSRが確定入手であれば十分強力だ。修正されない事を願おう。

パーティを組み直す。ヨーコとリディはそのまま、刀のヒメ、弓のマーブルを入れる。そして銃は前のパーティーを継続。名前はジュンナ。日本的な名前が多いのは国境封鎖が行われているからだろう。マーブルは登録名がマーブルだった。本名じゃなくていいんだ……


赤片を使用してレベルと武器特性を伸ばす。とりあえず武器特性の成長は1種類を特化させる事にした。よくよく見ればヒメとマーブルは特性かなり被ってるし平均的に伸ばすよりはチャレンジした方が良い場合もあるだろう。あとヨーコは拳って印象が滅茶苦茶強いしリディは最初に短剣使ってたし。

武器特性を伸ばすと追加のアビリティが出たのでこれもセット。この調子だとアビリティは取捨選択することになっていくのかもしれない。スキルといいアビリティといい、自由度がかなり高い。その分面倒ではある。


「トワ」

「はい」

「南の浜以外に行くところはある?」

「そうですね、襲撃された研究所職員に事情聴取するのもいいんじゃないでしょうか」


なるほど、そちらがメインストーリーだな。ならば旨い方を先に済ませよう。


「南に行こう」

「わかりました!」


心なしか嬉しそうだったのは気のせいだろうか。


*****


その「嬉しそう」と感じたのは、どうやら間違いではなかったらしい。


「着きましたよ」


の一声でワタルは眠りから醒める。ゲームだと移動は一瞬だがやはり現実に落とされていると乗り物で移動するしかないのだ。車内で寝ていた。

仮設の司令官室に入る。どうやら軍の建物を改装してあるようでいつもの部屋とまったく見分けがつかない。

しかし、明らかにいつもと違う事が一つだけ。トワだ。


「その、トワ?」

「はい」

「なんで水着?」

「バカンスですから」


あーそういう事ね。完全に理解した。これは水着イベントなのね。夏イベなのね。

そういえば、と思い出す。あちらでは梅雨の季節だった。サービス開始がそれくらいの時期なのであれば初回イベントが水着イベントでもおかしくない。そしてナビキャラであるトワが水着になるのも何らおかしくはない。


「しれーかーん、泳ぎにいこー」


水着で入ってきたのはヨーコだ。後ろにはリディもいるがこちらは制服姿。

設定的には「バカンスで来た南の浜で『ウルフ』と遭遇」という感じのものらしい。トワの説明がネタバレである。


「リディは水着着ないの?」

「は、恥ずかしいし……」

「でも持ってきてるじゃん。楽しみなんでしょ?」

「それとこれとは話が違う」


このやりとりだけではリディの水着版が実装されているかはわからない。まあ複数人実装されている場合、どちらかはガチャ限確定なのだが。


「おーいヨーコ勝手に……って司令官おはよ」


別の子が入ってきた。チュートリアルガチャで引いた覚えがある顔だ。そういえば今日はヨーコの横で朝食を食べていた気がする。別にギャグではない。


「あ、サトコ」


そう、名前はサトコだった。R版しか所持していないので今まで編成した事がないが、この子も今回関わってくるらしい。


「ねえねえ司令官、あたしの水着可愛い?」

「あ、ああ。いいと思う」


ヨーコとサトコは二人ともお揃いに近い花柄のビキニだ。似合っていると思う。


「へっへー。ヨーコのはどう? 一緒に買いに行ったんだー」

「ヨーコも似合ってると思うよ」

「う。正面から言われると照れるなあ。ありがと司令官」


「その、司令官。私も水着を着たほうがいい?」


リディがおずおずと聞いてきた。


「恥ずかしいけど、司令官になら見て欲しいと思うから……」


顔が真っ赤だ。


「嫌じゃないなら、見たい、かな」

「うん。楽しみにしておいて」


ワタルの顔も真っ赤だった。これは勘違いしても仕方がない。勘違いではないのだが。なにせリディは好感度が一番高いのだ。システム的にも、設定的にも。


「ハメを外さない程度に楽しんでくださいね」


トワが言う。事前情報が無茶苦茶すぎて混乱するが、設定的にはバカンスに来たのが先行してその後で『ウルフ』と出会うパターンでほぼ確定だ。


「トワ」

「はい」

「俺の水着は?」

「……えっと……」

「……ないの?」

「すみません、自分の分だけ用意して司令官の水着を失念していました」


どれだけ楽しみにしてたんだそれ。


ワタルは購買部に急いだ。購買部はここでも営業しているし、アキノもいるし、水着も売っている。


「水着ください」

「あいよ、水着セット」

「セット?」

「男女ペアセットだよ」


なんで? とりあえずそれしかないと言うので購入して司令官室に戻る。ヨーコ達は既にいない。もう泳ぎに行ったらしい。


「司令官も行かれますか?」


トワが聞いてくる。よく見れば手元の女性用水着はトワの着ているものに似ていた。


「ああ、行こうか」


司令官室を後にする。目指すはビーチ! バカンスの始まりだった。


リファレンスには「季節イベントの補佐官衣装はイベント中にイェンショップで入手することができます」とある。

つまりトワの衣装を買えば司令官用の衣装がついでで付いてくる、という感じらしい。これを買っていればいつでもどこでもトワを水着にできる、という事だ。ワタルは小心者なのでできないが。

トワは当然なのだが美人なので、四六時中水着だと困ってしまう。小心者なので。

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