前編
気が付いたら見知らぬ場所にいた。
どこかの小高い丘の上で、そこから下を覗くと大勢の人だかりが出来ていた。
「うわっ、すっげー……」
集まった人たちは皆、RPGで見るような鉄の鎧を着て槍を持っていた。
映画の撮影か? 珍しいものが見れたから、記念に撮っておこう。
パシャ パシャ
スマホのカメラで鎧を着た集団を撮ると、撮影の邪魔にならないようコッソリ丘を下りた。
それにしても、ここはどこなんだ?
丘を離れてしばらく歩くと、また別の人だかりに出くわした。
「敵の数と武器が分かれば、こちらの有利になるんだが……」
そんな会話が聞こえてくる。
もしかして、さっき撮った集団のことを知りたいのか?
そうならスマホの写真を見せてやるか。
「これ、さっき撮ったんだけど参考になる?」
「おおっ! こ、これは凄い……こんな小さな板に、我々が欲しかった情報が全て映し出されているぞ!」
どうやら喜んでもらえたみたいだ。
ライバルの映画会社の撮影状況でも探っていたのか?
ちょっとしたスパイ気分だな。
それから、こっちの集団も何やら準備に取り掛かった。
最初の集団よりも大人数を集めてきたし、持ってる槍もより長い物を用意してきた。
そう思っていると、丘の上からスマホで撮った集団がやってきて戦闘が始まった。
何だ、何だ? 本当の戦争なのか?
戦いは、俺が情報を教えてやった方の陣営が勝利した。
兵の数と武器の長さで勝るのだから当然だな。
「貴方のおかげで我々は敵に備え、勝つことが出来た。ぜひ我らの王に会ってほしい」
王だの戦争だの、どうやら俺がいるのは現代日本じゃないぞ。
当然、スマホの存在なんか知るはずもない。
この世界でスマホを持っているのも、その使い方を知っているのも俺だけか。
よし! スマホの便利な使い方をもっと教えてやるか!