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8小節目
お約束通りの食事にがっくりして、肝心な用事を忘れるとこだった。
「ヘタレ坊主、ちょっと俺に付き合え」
しぶしぶハルフォードは風の長の後をついて行った。
騎士団の食堂の裏口から騎士寮の方へ抜ける裏道の外れに
小さな東屋があった。
「このへんは変わらねえなあ」
感慨深げにあたりを眺め回す長を見て、 不思議そうにハルフォードは尋ねた。
「長殿はここにいたことがあるのですか?」
意外そうな顔をして尋ねるハルフォードに向かって、ぽつりぽつりと語り始めた。
「俺とお前の親父とあいつは、ここで剣の基礎を叩き込まれた。
そりゃあ厳しくてな〜毎日毎日ボロボロになるまで鍛えられたもんさ。
憂さ晴らしに食堂から酒をこっそり持ち出しては、この東屋でよく酒盛をやった。
いつもばれては、こっぴどくしかられたけどな」
「父う…国王様と知り合いだったのですか?」
「あーまだあの頃は、お互いガキだったけどな」
そうして懐かしそうに目を閉じ、ポツリとつぶやいた。
「ルルカの本当の父親も一緒だった」