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57小節目

通路の先の明かりは、古びた扉の向こうから漏れている。

扉に近づいて開けようとするルルカを、ハルフォードが止める。


「俺が開ける!」


そう言うと、すっと前に出て、扉に手をかけた。

その後ろ姿を見ていたら、小さい時の記憶が不意に浮かんできた。









それは、ハルフォードが風の一族のもとで暮らすようになって

数日が過ぎた頃のことだった。

おばばに言われて、二人で薬草取りに近くの山の中へと入っていった。

ルルカは慣れた調子で、木の実やら、花やら、手当たり次第ちぎっては

口に入れていく。

呆れたハルフォードが、つい話しかけた。


「おい!そんなもの食べてたら、お腹をこわすぞ!!」

「へーき!それより、何か、いいにおいする‼」


くんくんと辺りを嗅ぎ回ると、突然駆け出していった。


ー子犬みたいな奴だな!


母さまがまだ元気だった頃、向かいのおばさんちに子犬が生まれ

一緒に見に行ったことがあった。

小ちゃくて可愛いくて、くんくんと匂いを嗅ぎ回っては

よたよたと歩き回る。

母さまが手を差し出すとペロペロなめるのに、

俺が差し出しても近寄りさえしなかった。

その日の夕餉の席でそのことを言うと、母さまは優しく励ましてくれた。


「ハリィ、手を差し出した時、あなたは笑っていたかしら?

子犬さんだって、初めての人は怖いと思うわ。

そんな時は笑顔が大事なのよ!

さあ、え・が・お!」


おれはにい〜と笑ってみせた。夕餉のおかずを歯にくっつけたままで。


「フフッ、ハリイったら!」


ご馳走とは程遠い夕餉のおかずも、母の笑顔で満腹になった。

次の日は笑顔でチャレンジしようと思って床についたが、

それはとうとうかなわなかった。

翌日から病弱な母は熱を出し、床から離れなくなったからだ。


ドシン!


大きな物音で我にかえると、彼女が尻もちをついて悪態をついていた。

思わず彼女のそばに駆け寄り、声をかけた。


「大丈夫?」

「あれ!すっごくおいちいのに…」


見上げる彼女の視線の先には、たわわに実った木の実がー

ただ、すっごーく高い場所にある。

どうやら木に登っていた途中で、滑って落ちたらしい。


「待ってて!取って来てあげるよ!」


そう言って木登りを始めた。

下の方で彼女が何か喚いていたけど、

木登りに集中していて気が付かなかった。

後もう少しで手が届きそうなところで…


「あいた!」


何かに触れてチクッとした。

よく見ると、枝の先にトゲトゲがいっぱいついていた。

さほど気にもかけずに実を取ると、そこから降り始めた。

しかし、だんだんと意識が薄れてきて、急に暗闇へと落ちていった。






「トゲ!トゲにしゃわんないでね!

もーどくだよ!」




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