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56小節目

闇の中、宿り主の残滓を追いながら、ルルカはあの日の夜に思いをはせる。


ーあの時、宿り主を消滅させなかったから

 リーリアローズ様は資格がないとおっしゃったんだ…


王都に来る前、おばばが語って聞かせたことは

心の中に鉛のような重さをまとって離れない。


「いいかい、よくお聞き!

お前さんは、この世界の礎となった月の精霊ルルーカレツィアの力を継ぐ者。

これは、生まれた前から定められた宿命なんだ。

それが、月刀に選ばれるということ。

今まで選ばれた者たちは、みんな力不足だったけど

人びとが不安にならないように、お飾り程度に力が与えられだけ。

じゃが、お前さんは、違う。

自分でも気がついていたろう?己の舞が及ぼす力の意味を。

それとも、お前さんは、逃げるかい?」


「逃げるわけないよ!

あたいがやらなきゃ、この世界は夢魔の闇で覆われちまうんだから…」


そう、何となく、自分の使命は理解していた。

そこから逃げないと決めたのは、

彼に出会ったから。


この人は、生きる意味をあたいへの想いにすりかえている。

それでもいい、と、思えたのは

自分にむけられる彼の純粋な想いが、眩しすぎたから。

眩しすぎて、おまけにあったかくて、

失いたくない、と、強く願ったから。


世界を敵に回しても、彼が、彼だけが笑顔でいられるのなら、

この身に何ら未練などあろうものか!


だけど、宿り主の哀しみを知った時、決意が揺らいだ。

この人も、救いたい‼

この哀しみから、開放したい‼


だから、剣を振るえなかった。










後ろからついてくる足音は、想いと同じで揺るぎなく、

純粋で、真っ直ぐでー




闇の先に、ほのかに明かりが見えた。


カツン。


足が止まる。

まだ、惑いを拭えない愚かな自分。

その両肩に後ろからそっと手が添えられる。


「大丈夫だ!!俺がずっと見護っているから。我が愛しの舞姫」



いつの間にか閉じていた瞳を開き、くっと前を見据える。


「行くよ‼」



もう、惑わない!












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