55小節目
寝室へと続く扉を開けると、ルルカはぐるっと部屋を見渡した。
「見つけた…」
後ろから付いて入室してきたハルフォードが、不思議に思って尋ねた。
「何を見つけたんだ?なにもないぜ!」
寝台はきちんと整えられたままで、その主が存在しないだけだ。
「夢魔か残した残滓が、あの壁の向こうに続いている」
ルルカが見つめる壁をみても、ハルフォードには何ら変わったところは見られなかった。
ルルカは壁に近づくと、そっとある一点を押した。
ギーッ。
壁の一部が扉のように開き、その奥には暗闇が広がっている。
「これは…」
驚くハルフォードに、ルルカはたんたんと答える。
「王族のみが知りうる秘密の抜け道だと思う」
「お前、どうしてそんなことがわかるんだ?」
それには答えず、すっと月刀を取り出し、捧げ持つ。
月刀は淡い光を放ち、暗い通路を照らす松明代わりになる。
人一人がやっと通れるくらいの狭い通路がずっと続いているようだ。
その先は、暗くて何も見えない闇…
その闇のむこうに夢魔の残滓が続いている。
「行くよ」
そういうと、ルルカは闇の中に滑り込んでいった。
「あっ、待てよ!」
ハルフォードも慌てて後を追う。
ールッカのやつ、自分自身が光ってんのに、気付いてないのか?
自分の前を躊躇することなく進んでいく小柄な後ろ姿を見つめながら、
ハルフォードは想いをはせる。
まるで、彼女自身が、闇を照らす精霊そのものだと。
ハルフォードにとって、ルルカは、己の闇を照らしてくれた光そのものだったから…




