54小節目
与えられたチャンスは一度のみ。
いつになく口数の少ないルルカを心配し、ハルフォードは声をかける。
「お前ばかりが、なぜ背負う必要がある?
精霊王に頼めばいいじゃないか!
喜んで手伝ってくれるはずだぞ」
ここは、世継ぎの君が消えた寝室の隣に位置する控室。
風の長は、国王に報告に出向き不在。
マルーカ、ミスカ、ナギは主神殿に戻ってもらった。
二人切りが居心地悪くて、つい話しかけた。
しかし、ルルカからの返答は思いもかけないものであった。
「グラさんは、無事だよ」
「えっ!分かるのか!」
ハルフォードをみないまま、ルルカは答えた。
「月光樹の実を食べたものは、その時から夢魔に対して耐性ができるから、
命を奪われる可能性は低いの」
「じゃ、何で姿を消したんだ?」
しばらく黙っていたが、重い口をようやく開く。
「これは、罠。」
「罠?」
「そう。私とハリーをおびき出すための…」
「どういうことだ!」
ハルフォードの方にやっと視線を向け、表情を消した顔で告げる。
「約束して!例え何が起ころうと、手出ししないと!」
「ルッカ!」
はっとして、つぶやく。
「もしかして、お前…宿り主が誰か知ってるのか!」
それに答えず、すっと立ち上がり背中越しに念を押す。
「いい?絶対手出し無用だかんね‼」




