4小節目
おばばとの打ち合わせを済ませ、掛布をめくり外に出たその先には、 風の一族の長が立っていた。
「お久しぶりです、お兄様」
「お前も達者そうだな」
思わず見つめ合って、微笑み合う。
久方ぶりの、本当に久方ぶりの、兄妹の再会であった。
「お互いに老けたな」
「まあ!失礼ですわね。相変わらずお口のひどいこと!
それがそのままルルカさんに反映されてますわよ」
頭をがしがしかきながら、風の一族の長は困ったような顔をして答えた。
「ありゃ俺のせいじゃねえ!おばばのせいさ!」
巫女長様はムッとした顔して、兄をの顔をねめつけた。
「お師匠様のせいにしないでくださいませ!
私の大事な舞の導き手ですのよ!」
おばばを弁護する妹に対し、兄は普段の腹黒さを知ってるだけに
妹の夢を壊してはなるまいと、話題を変えた。
「それはそうと、王都行きの詳細は決まったんだな」
「ええ、あなたの愛娘がうちのビビリ巫女の代わりに行くことになったわ!」
長は驚いた顔をして叫んだ。
「はああ〜!あの跳ね返りに大役が務まるもんか! 俺が止めてくる!」
「待って!」
今にも食ってかかりそうな兄の腕をつかみ、妹巫女は静かに諭す。
「兄様にも分かってるでしょ!
リリアでは役不足なの…
相手は夢魔よ!だからこそルルカさんには
剣の技を仕込んだのでしょう?」
「お前…」
「ルルカさんの月刀の舞は本当に見事なものだったわ!
お兄様のこと、見直したのよ」
じっと見つめる妹の瞳に負け、下を向いて顔を真っ赤にする兄なのであった。