45小節目
あなたさえいなければ!
ー好きでこの世界に生まれたわけではない
あなたさえうまなければ!
ーじゃあ、うまなきやよかつたのに
お前の顔は嫌味のようにあの方そっくり!
ー好きでこの顔に生まれたわけじゃない
あの人は、いつもいつもいつもぐちばかり。
自分に対して暴言を吐く。
それだけで済んでいるうちはまだマシだった。
自分はあの人にとって邪魔な存在でしかないことは
物心ついたときにはすでに理解していた。
でも、あの人は自分を手放そうとはしなかった。
大切な人と己をつなぐ最後の絆だったから。
しかし、その絆もあっけなく切れてしまった。
大切な人が、久遠の彼方に旅立ってしまったから。
それからが、自分にとっていばらの世界の始まりとなった。
あの人は、切れてしまった絆に対する怒りを
力という形にかえて、自分に向けるようになった。
自分がどういう暮らしを送っていたか、
いまではその時の記憶すら残ってはいない。
そんな時だ。
アレの存在を知ったのは。
アレは夢の中にしか現れない。
でも、自分のことを親身になって心配してくれた。
親にさえ、見捨てられた自分を。
世界から、見捨てられた自分を。
ある時、アレは、こう告げた。
ーケイヤクシナイカ?
と。




