3小節目
「なんであたいが行かなきゃなんないのかい?」
すかさずおばばが答えた。
「食べたことのないうまいもんがどっさり食えるよ」
「よっしゃー、ちょっくら王都に行ってこようかね!」
即決即断のルルカに対して、 リリアが心配の声を上げた。
「待ってください! 婚約者は私ということになっているのですから
私が行くべきではないのですか?」
それを聞いてルルカとおばばが一言。
「「無理」」
ムッとした顔をして、 リリアは反論した。
「私だってやろうと思えばできます!」
今まで黙っていた巫女長様が静かに告げた。
「王宮は魑魅魍魎の集まりです。
リリア、あなたはお化けが怖いでしょう?」
真っ青な顔をしてリリアはすぐに答えた。
「はい。絶対無理です…」
「じゃ、決まりだね」
おばばがあっさり決定を下す。
しかし、巫女長様が不安げに問いかけた。
「でも、 王宮に婚約者として上がるのでしたら、 お供が必要でしょう?
よろしければ、私の方で推薦したいものがいるのですが。
でもその前に、一通り行儀作法を身につけたほうが良いのではないですか?」
普段のルルカを知るものならば、 絶対無理だといいそうなところだが
そこは抜かりのないおばばだった。
「こう見えてこの子は一通り行儀作法を叩き込んである。
言葉遣いさえ気をつければ心配はないさ」
「巫女長様、どうぞご安心くださいませ!
世継ぎの君の婚約者を見事に演じてご覧に入れましょう」
そう言って優雅にお辞儀をするルルカを見て、巫女長様は言葉を失った。
「じゃあ、私はどうすればいいのでしょう? 月神殿には戻れませんし…」
リリアの心配に、おばばは何のこともなく答えた。
「心配ないさ!ルルカの代わりに私の助手になってもらうさ」
「「「いええええ~!!!」」」
3人が3人とも複雑な顔をして、おばばを見つめたのだった。