30小節目
翌朝、主神殿にグラディアスがハルフォードを伴って訪れた。
「ごきげん麗しゅう、若君様。
本日はどのようなご用件でお越しですの?」
淑女の礼を取り、可愛らしく尋ねる婚約者に、
苦笑しながら世継ぎの君は答えた。
「ルルカ穣、神殿内ではいつものように振る舞っていただいて構いませんよ」
「あっそう、んじゃ、そうする。
ところで、なんかよーじ?」
「ルルカさん‼」
とたんにマルーカの叱責がとぶ。
「若君様に対して何という口のきき方です‼」
それに対し、ルルカが平気な顔をして答える。
「マールおばさん、グラさんがいいって言ったんじゃん!
あたい、かたぐるしいの、にがてなんだよお〜」
「グ、グラさん‼なんて呼び方するんですか‼」
「っふ、あっははははは」
グラディアスが突然大きな声で笑い出し、一同がびっくりした。
「マルーカ、すきなように呼んでもらってかまわないよ!
むしろ、その遠慮のなさが新鮮で居心地がいいんだ。
月神祭の舞とのギャップもすごいが、本当にあなたは魅力的だね!」
「そりゃどーも!
何か少しムカムカするんだけど、その言い方!」
「仕方ないだろ、喋らなきゃどこぞの令嬢で通用するくせに…」
見かねたハルフォードが茶々を入れる。
「うるさいよ、ハリー!
ほっとけってえーの‼」
二人がいがみ合うところに、呑気なこえがかかる。
「痴話喧嘩はそれぐらいにせんか、二人共!
それより、あさげを食しに参った。
準備を頼む!」
腹をキルキル言わせながら、精霊王が呑気にやってきたのだった。




