27小節目
夜遅く、世継ぎの君の私室を叩くおとがして、扉が静かに開かれた。
「入ってくれ」
入室してきたのは、愛してやまない可愛い弟だつた。
すっかり疲れ果てた表情で、想い人に会えたよろこびにみちてはいなかった。
「どうしたんだい、ハール?
お兄ちゃんの愛が不足しているのかい?」
眉間のしわをさらに増やし、無愛想に答えた。
「…遠慮します。それより、マルーカ様は本当に手強いお方ですね」
世継ぎの君は、にやりとして、事の真相を理解した。
「さては、逆鱗に触れたな!
一体何をやらかしたのかい?」
「べつに」
プイと顔をそらし、何も告げようとしない弟にそれ以上突っ込むのは辞めて
本題に入った。
「これを見てくれ」
手渡された報告書に目を通し、ハルフォードは疲労の色を濃くして告げた。
「かなり深刻ですね」
「ああ、幸い怪我程度で済んでるが、あまり良い状況ではないな…
不眠病に関しては、おばば殿のアドバイス通りに薬を処方し何とか対処出来ているが
夢魔の方はどうにも手の内ようがない」
ふと、精霊王が言っていた事を思い出し、つぶやいた。
「宿り主…」
「?」
「ルルカの力をかりて下さい。あに、グラディアス様の婚約者候補ですから
協力してくれるでしょう。では、俺はこれで」
下がろうとした弟を引き止めるのに、爆弾を落とす。
「長老達の承認がおり、正式な婚約者となった。
そして、専属の護衛騎士に、ハール、お前が任命されたよ」




