終奏
月光樹のたもとでは、いつものように精霊の眷属たちがのんびりと過ごしていた。
そこへふらりと現れたのは、我らが主。
だが、その様子はいつもと違っていた。
「主さま、どうしたのですか?
元気がありませんね…」
我らが主は、口は美しい外見とはかけ離れてきつい。
けれど、
人一倍情深く、優しいのはどの眷属も知っている。
口の悪さは、シャイな性格を隠すためのカモフラージュであることも。
もう一人の主の方が、よっぽど策略家で合理的だというに。
みんな、誤解している。
主さまがかつて想いを寄せた彼も、主さまの本心を見抜けぬまま
去っていった。
「…もふもふまんじゅう、お願いします」
主さまが久しぶりにリクエストされた!
「「「「「ワフーン!!!!!」」」「「
みんなが興奮して、主さまをとりかこむ。
そして
ひとつのまんじゅうになる。
優しく、優しく、優しく。
もう一人の主さまが旅立った後は、しょっちゅうリクエストされていたけど
本当に本当に久しぶりだ。
きっと、でかけた先で辛いことがあったのだろう。
あのときのように。
我らはよくできた眷属だから、
主さまに根掘り葉掘り尋ねることはしない。
ただ、
笑ってほしいだけ。
そうして、まんじゅうは布団に変わる。
かすかな嗚咽がきえ、寝息が聞こえてきたから。
今日は、満月。
精霊の力が満る夜。
今宵、すべてのひとが、穏やかな眠りの世界へと誘われんことを。




