107小節目
「ここにおられたのですか…」
「ああ、あれは無事に旅立ったのか?」
「はい。最後までごねていましたけれど…
素直でないところは、昔から変わりませんね!
そこがまた、可愛いところなんですが…」
自分の兄と一緒で、息子も弟❤がもの凄く深い。
本当は心配で一緒について行きたかっただろうが、
少しは世継ぎとしての自覚が芽生えてきたのだろう。
ちか頃の言動を見る限りは弟❤に暴走する頻度も
減ってきた。
「ところで、彼の処遇はどうなさるおつもりですか?」
辛そうな顔をして、眠りつづける側使えの心配を口にする。
折角舞姫殿が救った命、無駄にはすまいが罪は罪。
罰しなければ為政者として成り立つまい。
例えそれが血の繋がった身内であっても…
「目覚めるのをまったうえで、処分を検討する。
それまで、離宮の地下に監禁し、
見張りをつけよ」
「御意」
そう言って去って行く息子の後ろ姿を見送り、ため息が出る。
「あれが嫁をもらうまで、まだまだ自由にはなれまい…
あ〜、兄上、あなたが羨ましいですよ」
そう言って、また、振り返る。
そこには、無記名の墓碑が建てられた兄が眠る場所。
いつも一人になりたい時や、愚痴をこぼしたい時は、ここに来た。
ー中は空っぽなんだよな、実は…
今、どこでどうしているのやら
フーっとため息をつき、踵を返し去ってゆく。
これから、話題の主が旅立った息子と大きく関わってくるとはしらぬまま…
どこかで、誰かが奏でる音の葉が風に舞流れてくる。
切ないセレナーデは、ラプソディにかわらぬまま…




