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31幕:人形使いは地に堕ちる 中

 


 僕はとっさに顔を上げたんだ。

 いつ以来だろうか。


 だから僕はもう一度聞き直した。

 絶対に気のせいじゃないからね。


「グリンティアを生き返らせることができる!?ホットルもコルドルも正気に戻せることができる!?」


 静かにコクリと頷く少女の瞳は溢れんばかりの涙を溜めていた。

 目の前には心配そうに見つめる可愛らしいケモミミの美少女がいたんだ。


 彼女も余裕があるわけがなかった。あんな状況に置かれて傷ついたのは僕だけじゃない。

 彼女も辛かったに違いないんだ。


 つまり彼女も、そしてこの場にいないパトもじゃないんだろうか。


 そうか。僕だけが何も見えていなかったんだ。


「ケモミ、、、僕はどうすればいい?どうすればいいんだ?」


 その時、彼女から一筋の涙が頬を流れた。

 そして思わず溢れた笑顔だけが僕の胸に深く焼きついたんだと思う。


 彼女が最後に溢した一言で僕は事態の深刻さを思い出したからね。






 それから数時間後、僕はとある高貴な人物の前で深く頭を地面に擦り付けていたんだ。


 町中を探して見つけた古びた大きなお屋敷の大広間。

 古びた木製の床の音だけが乾いた音を幾度となく叩きつける音を打ち上げた。


「すみませんでした!!!!僕が、、、僕が悪かったんだ!!!」


 急遽設けられた王女専用の椅子の上で小さな小さな大魔王様が僕を見下ろしていたんだ。

 でもその視線は僕を全く視界に捉えていない。彼女の中で僕はすでにいない存在。まるで虫けらのようにそこに何もない、、、ただの空気だけが漂っているんだ。


 だから僕は何度も額を地面に叩きつけた。


 でも彼らは彼女たちは違う。

 彼女の側に静かに屯っていたのは僕が僕たちが旅をして出来た仲間たちであり、出会った友人たちだ。


 中でも激しく泣き叫んでいるあいつは僕が心底世界の片隅に何度も不法投棄してやろうかと内心で企んでいた人物だった。


 、、、引き篭もり。

 久方ぶりに見せたあいつが僕の襟を掴んで殴り飛ばした。


「うぉぉぉぉおっ!!!!お前のせいでお前のせいで、、、、このクズが!!!」


 見た目よりも強い右ストレートが僕を壁まで殴り飛ばした。


「ごめん、、、」


 さらに追い打ちを掛けるようにチャラけた人物たちが普段見せない顔で続けざまにボディを平手打ちを敢行する。その力加減なんてされてるわけがない。


「シュガールちん歯ぁ食いしばれ!!!」


「あーしらの気持ちが今どんなか分かってんの!?」


「うちらのこと舐めてんの!?聞いてんの!?」


「ごめん、、、、」


 、、、先輩たち。


 皆の想いを深く受け止めた僕は動けなかった。

 こんなにも僕たちは僕は仲間に思われていたなんて、、、


「これを使いたまえ」


 そこへ渋いダンディな声の持ち主がそっとハンカチを顔に掛けてくれたんだ。

 隙間から革グローブで覆われた大きな掌で静かに顔を覆っている姿が見て取れる。

 彼もまた涙を流しながら事態を静観していたんだ。


 なんて優しくて誠実な人なんだろうか。

 いやヴァンパイアか。


「、、、トメーヤ先生」


 そして座り込んだ僕の肩を支えようと骨だけの人物がそっと手を差し伸べたんだ。

 なんて慈悲深い衛兵だろうか。

 アンデッドに心がないなんて間違いなほどの好人物なんだ。


「これからさ兄弟、、、」

「、、、あぁそうさ。そうさこれからさ」


 僕は差し伸ばされた手を掴み起き上がろうとして、、、ミシッとなった音を、、、、聞かなかったことにした。後でパトの接着剤でどうにかしようと思うんだ。


 そして最後に僕は見上げたんだ。

 サイズに見合わない大きな椅子の上で頬杖を付きながらだんまりを決め込む僕の目の上のたんこぶで僕の人生の最大の障害。


 そして最高最悪の小さな相棒の姿。


 王国の第三王女にして、その小さな背中に国の、そして世界の命運を背負う幼女。


 力のない僕には。


 貴族家を追い出されどん底から始まった僕には。


 彼女の力が、、、いや彼女が必要なんだ。






 、、、ミシッ。


 骸骨衛兵( ,,`・ ω´・)ンンン?


 どこぞの女神様(・`ω・):ん?この引きはもしかして、、、?


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