28幕:人形使いは探偵になる 下
その後、僕たちは数多くの事件現場を訪れたんだ。
バラバラになったスケルトンやスカルたちの骨の一部がごっそり消え去るという謎の肢体紛失事件。
小さな人形たちが腕試しという名目で勝負を挑んできたという不可解な辻斬り事件。
大きな人形たちが町中で何かを探索しているような素ぶりを見せる謎の徘徊事件。
小さな子供のアンデッドを誘拐し幼女コスプレの着せ替え撮影会を行ったという変態誘拐事件。
都市中でチャラ語やギャル語に汚染された人たちが突如大量に倒れる謎の中毒失神事件。
そして死霊都市で随一の超人気カフェで連日ツケにしたまま行方不明になる無銭飲食放置事件。
僕は何も心当たりがないんだ。
友人であり武人である相棒たちが最近、何をしてるかなんて知らないし、引き篭もりが部屋から外に出てくるなんて絶対にありえないし、先輩たちがあのノリでアンデッドたちをアルコールで接待するなんてありえないんだ。うちの幼女とケモミミ少女が他所様の土地で好き勝手してるなんて知らないし、ましてや誰かが支払いをバックれたなんて、、、それもツケた名が僕だなんて、、、、
まず僕はその一つだけは確実に解決することにしたんだ。だってこれだけは最優先事項だからね。だから細めた横目で隣にいる彼女をじーっと見つめた。
時間にして十数秒だろうか。彼女の負けじと見つめ返す様子が堪らなく嬉しいんだ。
でも、、、
「・・・・」(グリンティア)
「・・・・」(シュガール)
「・・・・」(グリンティア)
「何も言わなくてもわかるよね、、、グリンティア」(シュガール)
「何も知らないわ」
「これ見てごらん、、、請求先が僕なんだ。つまり、、、」
「な、な、何のことかしら?私、バ、バックれたことなんてないわよ」(グリンティア)
「グリンティア正直に話してごらん?」
「ご、、、ごめんなさい」
誤魔化そうとも僕にはわかる。久しぶりに見た焦った顔も、困った顔も、消沈した顔も、全部が僕の大好物だから仕方ない。どんなことがあっても彼女のことなら僕は全てを受け止めると誓っているんだ。
だから僕は目を背ける彼女をまっすぐに見つめた。そしてこっそりと領収書を手渡したんだ。
カフェにはちゃんと請求書が溜まっていたからね、、、僕名義で。だから僕が昨晩、全部支払いをこっそりと済ませたんだ。金額にして50万、、、でも50万!?カフェでどんだけやけ食いしたんだい!?それとどんなメニューがあったんだよ!?
それでも不安にさせたのは僕のせい。あれだけ他の女の子の胸元を至近距離で見つめたんだ。あんな膨よかで魅力的なモノが目の前に存在するなんて仕方ないじゃないか。でも君だって負けなくらいのものを持っている。触れられないものよりも目の前でたわわに実った君の甘美溢れる果実は触れられるんだ。だから僕にもっと気持ちを直接打つけてほしい。それから僕も君の膨よかな双丘に顔を埋めたい。何ならその綺麗な素足で背中を踏んづけてくれても構わない。ご褒美だしね。
おっと話がそれてしまった。でも、今はそれどころじゃない。
僕たちには僕にはやるべきことがあるんだ。
それから僕は今だにこっそりと付いてくるスカルわんこを手招きしてから、先日拾った大腿骨をプレゼントしたんだ。案の定、彼は骨を加えて来た道を引き返していく。そうさ、巣穴まで案内してもらうんだ。わんこといえば、、、骨だからね。小さな巣穴の中の奥に掘って広がった大きな空間。そして大量にかき集められた町中のスカルたちの体の一部の骨。見渡す限り山のように積もった骨の山と広大な洞穴。
小さな体でどれだけ広大な隠し部屋を掘ったんだよ。
もちろん、これが紛失した住人たちの骨の一部で間違いない。だけど全部が歯型が残ってて見た目がボロボロだし中には砕けているものもある。これじゃ元どおりになることはないだろう。
そんな時、顔なじみの衛兵骸骨の視線と目があった。
そうさ。うちの大魔王のボンドで適当にくっつけておけば問題ないよね。あとはトレントの骨で無理やり継ぎ足せば問題ないと思うんだ。焚き火の材料にする以前にうちにはパトのせいで大量に残って困ってたしね。きっとパトに無慈悲に解体されたトレントたちも少しは喜ぶと思うんだ。使い道が焚き火だけじゃないと知ったら、きっと彼らも浮かばれるに違いない。
「ん。問題ない」(何故か旨に響く大魔王の声)
僕が物思いに耽っているといつものように二人組が戯れていた。
ほんと側から見ると恋人のように見えなくもないんだけどね。
でもどうやら違うみたいだ。
二人はまっすぐに僕のところへ歩み寄って来た。
「お客さん、すごいですね。まさかの名推理、、、先生に負けていませんよ」
「君も中々の名推理だった、、、がすまないキャンデくん、少し彼らのことが気になってしまって推理するのを躊躇ったのだよ。ただ私には大方、この事件の本当の狙いが把握できたところだ」
「そうなんですか先生?」
「あぁそれで見たくなったのだよ、、、彼がどう推理するのかをね。役者冥利につきるというやつさ」
「でもですね、先生。実は私も少しだけ真実が分かっちゃった気がします」
「ほぉキャンデくん、流石は私を支える美少女敏腕助手だ」
「えへへ、先生ったらそんなこと言っても何もありませんよ」
「ごほっキャンデくん、、、そんなに大きな骨を振り回したら被害者たちの骨も私のも砕けるんだが、、、」
変わらない二人を放っておいて僕は頭を張り巡らせて、、、、僕は悟ったんだ。
僕がわざわざ分かりやすい事件を目の前で一つだけ解決したのは言うまでもなく狙いがある。
このままじゃ僕も責任を問われるかもしれないし巻き込まれるかもしれない。もちろん僕には全く関係がないんだけどね。
だから全部誰かさんのせいにしちゃえば、いいんじゃないかって。死人にクチナシっていうんだから僕には問題ないと思うんだ。
きっと今は完全なゾンビになってるみたいだしね。今じゃきっと頭の中もゾンビなんだ。
でも念には念を入れるべきだ。
だから僕は皆の前でこう口にしたんだ。
「仕方ない。新たな名探偵の助手と言われる僕が真実を明らかにしてみせましょう」
僕はそう誰かさんのように宣言すると、、、とある人物にだけ見えるように金貨をこっそりと手渡したんだ。
こっそりとね。
シュガール(๑• ̀д•́ )✧:名探偵と言われた、、、ばっちゃんの名にかけて




