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28幕:人形使いは探偵になる 中

 

 それから名探偵トメール16世の元、実況見分が行われた。

 かなりの数のスケルトンたちから証言を聞き取るまで、、、約数時間。

 本当にむごい事件だった。


 そうこれは姿形知らぬ頭のおかしな犯人の突発的な猟奇乱心事件だ。

 被害者には手を合わせて頭を下げる以外に僕にできることは思い浮かばなかったんだ。


 犯人はどうするんだって?

 僕もグリンティアも星のことなんて全く予想だにできない。

 そうさ。何処ぞのゾンビ幼女なんて僕たちは全く心当たりがないんだ。


 とりあえず一息つこうと僕たちが現場近くで喫茶店がないかと逃げ出すようにキョロキョロとしていた時だった。


「おいおい、まだ終わっちゃいないぜ兄弟。至る所で多発してるって言ったろ?先生も、次の現場を頼むぜ」


 そうさ、、、事件はまだ始まりに過ぎなかったんだ。




 むごい、、、


 それが僕の第一印象だったんだ。


 この薄暗い雰囲気を纏う死霊都市ブラクニカで異色中の異色な場を僕たちは訪れたんだ。

 透明な水晶のようなのがたくさんついた多色輝くシャンデリア。

 目に入る調度品の全てが、貴族が持つような高級なものばかり。見た目の悪い花を飾る花瓶、センスの悪い絵画を飾る額縁は全てが見事な味わいを感じさせる。歩く度に天国のような柔らかさを感じる絨毯はきめ細かく輝きを放っている。


 元貴族の僕ですらこの場を用意するのにどれだけのお金が動いたかなんて全く分からないんだ。


 そんな場所で働く人々(アンデッド)も普通じゃなかった。


 黒いベストに白いブラウスを身につけた傷一つない色白のゾンビ。

 己の首を片手にホール中で奉仕するバニーガールの衣装で着飾ったヂュラハン。

 なぜか頑張って屋内の至る所で多忙そうに働くゴーストやレイスといった霊体の人たち。

 カードやスロット、ルーレットの至る所でゲームを仕切ってるミイラやスケルトンの方々。


 そのほとんどがまるで魂が抜けたように地面に膝をついて懺悔していた。

 そしてそのほとんどが、、、、どこか欠けていた。

 腕、足、頭、、、、バラバラだ。バラバラに欠けているんだ。


 僕は何も見なかった。見なかったんだ。

 それは彼女も同じだったようで、僕と同じように異世界に心を忘れてきたらしい。


「グリンティア、、、これってもしかして、、、」

「シュガール、、、もうどこかでお茶しない?」


 ここはこの都市のいくつかあるうちの賭博場で、最大規模の施設。そしてアンデッドの上級種トメーヤ16世の行きつけなのだという。他にもギャンブル病という恐ろしい病に蝕まれた人物をよく知る僕はどことなく嫌な空気を感じ取ったんだ。


「もう先生、今日はカジノで遊戯はダメですよ。はやく見聞しないと」

「すまないキャンデくん、このカード勝負が終わればすぐに仕事に移ろう」

「絶対ですよ、私、お化粧直しに行ってきますから少し離れますね」


 ゴーストがお化粧直し、、、?


「どうして先生は名探偵なのに遊戯は全くダメなんですか」

「神は私に二物を与えなかったからだろう。ところでキャンデくん、その金貨の山はどうしたのかね?」

「えへへへ。実はあっちの一番大きなスロットに拾ったコインを入れたら止まらなくなったんですよ。たぶんびぎなーずらっく?というやつですよね」

「キャンデくん?」

「はい?先生?」

「すまないが少しだけ分けてくれないだろうか?」

「もぉーっ先生ったらまた勝負する気ですね、、、少しだけですよ少しだけ」


 何て人の良いゴースト娘なんだろうか。

 彼女はそんなことを囁きながらもそのほとんどを彼に手渡している。過保護なまでの優しい性格。口では厳しいことを言いつつも実態はとてつもなく甘い。それが彼女が持つ天性の母性なんだろうか。まるでダメ人間を製造育成しているかのような感じなんだ。


 だから僕も彼女に育成されたい、、、、ダメ人間に生まれ変わりたい。


 ふと隣にいた透明な緑色の髪を持つ美少女が纏う雰囲気から並々ならぬものを感じた。

 そうだった。僕は今、彼女に育成されているんだ。時折見せる冷たい視線、冷たい態度、冷たい一言、、、その全てが僕を僕の心を満たしてくれている。


 数時間後、やっとのことでカジノの実況見分が終了した。


 昨夜未明、謎の二人組がこの賭博場に来店したという。

 一人はローブを身に纏った小柄な人物。そしてもう一人もまたローブを纏ったさらに小さな人物だったという。二人は数あるゲームの全てで勝負をして、その全てで大勝ちしカジノ中を荒らし回った。挙げ句の果てには、、、あまりのその暴れっぷりに業を煮やしたオーナーが追い出しに掛かろうとしたが、(オーナー含む)従業員たちに無茶難題を押し付け、悪絡みし、個人勝負を仕掛けその各々の財産すら賭博の対象にしたという。中には変な言葉を記憶している者もいるらしく、、、、『ふひゃやっはっはは、、、これぞ女神様の意志、恩恵、女神様の思し召しですぅ』という笑い声や、『ん。敗者は全てを差し出すべき』『ん?お金がないのなら体を担保にするべき』なんてとんでもない文句ばかり。


 結果、その全てを巻き上げられたらしいんだ。


 それでも最後に抵抗しようとして、、、結果、意気消沈したほかの人たちは全て、あーやって見るも無残なほど大まかにバラバラにされ、、、その体を担保にされたという。そして当然のことながら返済が終わるまで返還されることはない上にさらに突きつけられた利息は10割、、、10割!?


 どこの大魔王だよ!?


 でも僕は叫ばなかった。僕は何も知らないからね。


 結局、それから似たような被害現場が6件ほど付き合わされた。夜通し付き合わされ気づけば翌日、夕方だった。とりあえず僕は心の中でこう叫んだんだ。


 あの二人は一体どれだけ暴れまわったんだよっ!!


 僕は呆れてモノも言えなくなった。

 そして翌日、例の骸骨衛兵から他の問題がまだまだ残っているということで僕たちは、また朝早くから付き合わされたんだ。



 

シュガール&グリンティア:( ゜Д゜( ゜Д゜) 10割!?

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