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25幕:人形使いはダンジョンに挑戦する 中

すみません、お待たせしました。

 




 砂や礫、岩や石だけで構築されたダンジョンは意外にも過ごしやすいんだ。


 迷宮内はひんやりとした薄暗い空気に満ちている。

 まるで魔冷庫の中に保管された食材の気分だ。

 その画期的な発明は魔石に風属性や氷属性を中心とした魔力を帯びせた魔術式で構成された小さな魔法陣で構成されている。魔石に蓄えられた魔力を燃料。魔術式を帯びた魔法陣でその魔力を制御するって構造でね。


 本当に画期的な発明なんだ。


 ただそれなりのお値段がするわけでどこの家庭にもある代物じゃない。

 一般家庭だと《三種の神器》なんて言われるそうなんだけど、生憎、僕の実家でも当たり前にあったしパトのお屋敷や宮殿にも標準装備されていたんだ。お店によってはすごく大きな代物を揃えているところもあるんだ。ちなみに貴族である僕の実家では人間なんか何人も入るくらいの大きさだったんだけどね。


 日差しが暑い日なんかこの魔冷庫なんかの中でひっそり佇みたいなんて僕は子供時代によく考えていたんだ。


 だから外の光が届かないというだけでこんなにも快適になるなんて考えていると僕はこう感じるんだ。


 魔冷庫の食材ってこんな風に感じるんだってね。


 砂漠というだけあって日中は、まともな神経じゃ過ごすことはできない暑さな訳で僕たちはオーブンの中にいるような感じだったんだ。一方、迷宮の中だと天国のように感じるわけで、魔物たちが全く襲ってこない状況も相まって楽園のように感じたんだ。


 僕がそんな楽園で浮かれている天使のような隙を漂わせていると隣から何かを疑うような呟きを耳にしたんだ。


 僕だけに聞こえるほどのほっそりとした声。

 でも甘く温かな気がする僕だけの優美な旋律。


 透き通る緑色の長い髪と琥珀色の瞳を持つ想い人。

 グリンティアだ。


「やっぱりこれおかしいわ、、、」

「どうしたんだいグリンティア?」


 小さな顎に傷のない綺麗な手を添えて彼女はそのほっそりとした首を傾げたんだ。


「今のところ襲撃回数はわずか3回。すでに迷宮内を探索して3時間弱ほどなのにたったの3回。ここはあの有名な大迷宮でしょ?死人たちの世界のはずなのに、、、前衛からの強襲が1、中衛に奇襲が1、トラップ発動による後衛からの戦闘。まるで何かを試しているようだわ。あれ以外は罠も全く作動せずだし行程も全く問題なし、砂漠の迷宮旅行が快適すぎてキナ臭すぎるわね。ホットル、コルドル、どう思う?」


「有無、我らの戦力を図っているかもしれぬ」(ホットル)

「もしくは拙者たちを試しておるか、、、」(コルドル)


「先輩たちは?」(グリンティア)


「「「ちょりーっす」」」(チャラけた先輩たち)


「先輩、久々のセリフだからってもっと静かにお願いしますよ」(シュガール)


「おっとシュガちんのお小言入りましたっ!?グリンちん、今の俺らにできることは敵のやり方に乗らないことっしょ!!特に避けたいのはトラップや数による戦力の分断っしょ。特にケモミちんと分断されること最悪害悪ちょー最悪っ♪おわかりぃ~!?」


「「そうそう♪」」


「グリちん、あーしぃらに今求められてるのは我慢比べだしぃー。情報がないときはいつもこんな感じしぃ〜?そんな眉間に皺寄せてたらせっかくの美少女が台無しだしっ♪」

「ほんとチョベリジー。TVGだしぃちょーべりーがまんっていうかぁ♪ちょー美少女だよねっ♪それから最近、グリちん少し大きくなってるってゆうかぁ?」


 そう語り出したかと思うと二人がグリンティアに近づいて、くんずほぐれつつ絡み出したんだ。


「んっ、あんっ、もぉー先輩たちはっ、、、あんっ」

「「ほれほれ〜♪」」


 何だろう。

 これは背徳感に駆られるようなとんでもないものを見てしまった気がしたんだ。

 もちろん目を背けるわけないじゃないか。


「それに俺らにはケモミちんが付いてますっていうかぁ、ケモミちんと引き離されたら間違いなくお陀仏?これ必然っしょ?だからぁ」


「ちょー隠れて付いてきている死人ちん、、、、」


「「「ちょりーっす!!」」」


 突然、先輩たちの鋭い眼差しが僕たちのはるか後方に向けられたんだ。

 そして1匹のスカルがのそのそと飛び出してきた。


「何だかすごく愛嬌のあるスカルよね、、、ちょっと可愛い」


 子犬くらいのサイズの四つ足獣型のスカルが細く骨だけとなった尻尾を振りながら近づいてきた。そしてひっくり返りお腹を見せたり、僕たちをはぁはぁと鍵出したりまるで本物の子犬だったかのように振る舞うんだ。困ったことにね。


 だからさ、この時、僕は悟ったんだ。


 そうだ。僕も一緒に彼?彼女?の真似をすれば、きっとグリンティアは僕を心から可愛がってくれるだろうってね。


 こんな大勢の前で恥ずかしくないかって?


 冗談じゃない。

 羞恥心なんか僕と彼女の前では、お互いを魅力的に陥れる最高のスパイスでしかないんだ。

 彼女の赤らめた表情を見るだけで僕は悶えるだろうし、シラけたジト目や呆れた眼差しなんかきっと僕は幸せを感じると思うんだ。ましてや彼女が僕だけに見せるだろう顔を心の中で浮かべるだけで、、、、何かが入れ替わっているって?


 そんなことは知らないんだ。


「流石はシューくんたちの先輩ですぅ、、、でもなんでそのノリなんですかねぇ?」(ケモミ)


 言い終わらずにケモミは可愛いケモミミで周囲を警戒するかのように動き出したんだ。そしてそれは彼女だけじゃない。


「あれ?あのわんこスカルのことじゃない!?先輩たちも武器を構えてケモミも杖を、、、、もしかして?」(我に帰ったシュガール)


「さぁ皆さん戦闘態勢ですよぉ。死人の大軍勢が一目散にやって来てますからぁ」


 そう口に出した彼女は愛用の杖を掲げ呪文を唱え出したんだ。




 スカル犬U^ェ^U:ワンッ

 何かを企むシュガール(๑• ̀д•́ )✧:僕は犬になるんだっ!!


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