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25幕:人形使いはダンジョンに挑戦する 上

 


 遮るものが何もない砂や礫ばかりの世界。こんな世界でも降り注ぐ星の軌跡はまるで僕たちを祝福してるかのような素敵な一面を見せてくれるんだ。この奇跡を前にしたら想い女の唇のガードは柔らかくなろうだろうし、きっと僕だけに素敵な微笑みを浮かべてくれてたに違いないんだ。そしてそのまま僕たちは永遠に結ばれるはずだった。


 ただしパトの件がなかったらね。


 僕たちは交易都市『ターメイヤ』を後にして、世界5大迷宮の一つである砂漠の大ダンジョンに挑戦中だ。まさか町にある井戸の一つからここの迷宮までショートカットできるなんて夢にも思わなかったんだ。そしてダンジョン内で星空を眺めることができるなんて信じられないだろう?


 僕たちはすでに大迷宮の腹の中にいるんだ。


 様々な罠や魔物、迷路で構成された迷宮の中でも、この世界五大迷宮の一つ《砂漠の大牢獄》は異質な存在として語り継がれてきている。実に血生臭い歴史があるんだ。


 ここはかつて砂漠の国(サテルボナ)での凶悪犯への刑の執行場だった。

 そのことを説明するには少し歴史や迷宮のことを知らなきゃいけないんだけど、僕は爺やさんや婆やさんから学んだんだけどね。もちろん貴族時代の家庭教師の先生からもね。彼女は冒険者だったしね。


 話を戻すけど迷宮は、つまりダンジョンは昔から莫大な富を生む象徴として有名だったんだ。

 これが前提条件、つまり話の鍵の一つ。


 砂漠の国がかつて大国と呼ばれたのも、その莫大な富を迷宮が生み出していたからなんだ。国土の大半が砂漠であることが災いしてか、主要な産業は交易に頼るものばかりだったらしい。東西の大国同士の交易の中継地としては栄えはしたものの自国から生み出す物は少なく外貨が減っていくばかり。それが迷宮の発見と共にがらりと転換したそうだ。


 その恩恵を生み出すために犠牲とされたのが、国内外の犯罪者たちだった。


 掻き集められた者たちは自国の犯罪者だけには止まらず、当然、諸外国にも及んだそうだ。周辺国家での政治犯、強盗、殺人犯、ありとあらゆる犯罪者たち、そして奴隷たちが集められ強制的に挑戦させられた。そして恩赦と引き換えに迷宮由来の宝、品々や魔物の遺骸や生み出す産物が莫大な金銀財宝と交換取引されたらしいんだ。だからこそ、かつてこの国は《砂漠の大国》と呼ばれていたんだけどね。


 しかしそれは時が進むに連れて歯車が少しずつ壊れていったそうだ。


 国内の治安は悪化の一歩を辿り秩序は乱れ、結果、僕が生まれる前には国が分裂したという。

 その幾つかに別れたうちの一つが砂漠の国(サテルボナ)であり、今では迷宮を押し付けられた国として有名なんだ。


 《砂漠の大牢獄》が別名、《死者の牢獄》と呼ばれる所以はそこにあるんだ。

 ここには生きて帰ることができなかった犯罪者や奴隷たちの亡者共が今でも巣食っているというんだ。それは迷宮が生きているという証でもあるんだけど。魂になっても死者になっても成仏できなかった人々は迷宮の力により死ぬことなく働かされ続けているという。迷宮を大きくするためにね。つまり人間のように迷宮は今でも成長し続けているというんだ。


 さらにその巣窟から時折、大量の亡者共が溢れ出たりすることから危険を恐れてか、当時、最も立ち位置の弱かった部族、地区、色々なものが、集められ押し付けられた結果の慣れの果てが砂漠のサテルボナだということらしいんだけど。


 ケモミが言うには、この迷宮の何処かに確実に風土病に対する特効薬があるんじゃないかと確信しているみたいなんだ。


 数えきれないほどの犯罪者たちを掻き集めてこの地に送り込んだのだから、絶対に流行病が大流行しているはず。だからこそほぼ時が止まるという特徴を持つ迷宮ならば、何処かにその特効薬も劣化することなく眠っているはずだという。


「なんでそんなことが分かるんだい?」


 僕はそう尋ねたんだ。

 大昔の特効薬なんて絶対腐りきって危ないに決まっているんだ。そんな物をパトに飲ませたら後で亡者になって祟られそうじゃないか。


「ん。、、、、奴隷の癖に生意気っ!!」


 絶対に怒るよね、あの小さな魔王様は。

 でも彼女ははっきりと断言したんだ。


「それは迷宮の意思ですよぉ。餌を呼ぶためには餌が必要ですよねぇ。腐りきった餌よりも生き餌が良いのは間違い無いですしぃ。生きた餌で一番集めやすいのは生物、何より力を持った生物なんですぅ。短期間で成長することができる生物の中でも餌として人間が質と量ともに一番高価な栄養源なんですよぉ。後は簡単ですよねぇ、人を集めるにはどうしたら良いのかぁ迷宮が生物としたら何を餌にすればいいのかぁなんて。だから金銀財宝、魔道具から死骸が装備していた品々、迷宮が生み出すモノ、色々んな価値のあるモノが必ずあるんですよぉ」


「なるほど。だから犯罪者たちが執行されなくなった今は代わりに冒険者たちを集めることでその分を補っていると。」


「そして今は流行病が少し前まで続いていた時期ですよねぇ。ゴーレムが迷宮の意思を受けてのものか、第三者の魔術によるものか、それ自体の意思によるものか判断はできませんよぉ。でも迷宮は私たちを見ているんですぅ。ゴーレムに封鎖されて私たちが何を欲しているのかを、今、私たちに何が足りないのかをねぇ」


「、、、ということは流行病は終わっていない!?」


「そういうことですよぉ。だからここに確実にあるはずなんですぅ、それも膨大な量がぁ、、、」


 そしてケモミは愛用の杖を手に取り身構えた。

 彼女の耳や尾が何かの違和感を感じ取っているらしいんだ。

 それを合図に僕たちはアイコンタクトを図った。


「当然、私たちがこの迷宮の中にいることも、あちらさんは分かっているってことね」


 グリンティアが戦闘体制に移ると同時に僕も剣を抜刀した。


 そして僕たちは迷宮攻略へ向けて進み始めたんだ。






 チャラけた先輩たち(ll゜д゜( ll゜д゜ll)゜д゜ll):チョ、チョリーッス!!

 ケモミ( ゜Д゜):あれゴーストですよ、、、


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