23幕:人形使いは再び旅に出る 下
リプル馬車を安全な区域に先行させたまま僕は追ってくるゴーレムの前に飛び出したんだ。
距離さえ離れていれば馬車には被害はないだろうしね。
だから僕はホットルとコルドルと共に行く手を遮るべく肩を並べ足を進めた。
ロックゴーレムにサンドゴーレム。
砂漠入口の乾燥地帯に相応しい魔物だ。
人の3倍はあろうかという体格で蟻を見おろすかのように僕たちを見下ろしているんだ。
あの巨体で迫られたら馬車も人も間違いなくこの砂漠のゴミと化すだろう。
それが1匹ずつ。
魔物が近づく合間に先輩たちに視線を送り馬車の護衛を、愛しのグリンティアには小さな魔王様の介護を頼んである。
だから僕たちはこの魔物を撃退すればいいだけなんだ。
身体を岩で構成されるロックゴーレム。
その防御力は高く並大抵の攻撃じゃ通用しない。
直接攻撃が売りの僕やぬいぐるみの騎士コルドルじゃ歯が立たないだろう。
逆に砂で構成されたサンドゴーレムはその名の通り砂のゴーレムだ。
岩よりは柔らかくその身に宿す核さへ破壊できれば撃破することができる。
でもその核を探すのには時間がかかるだろう。
ゆえにどちらにも決定的攻撃を与えることができる魔法使いのコルドルが勝負の鍵なんだ。
「コルドル頼んだよ!!ホットルはロックゴーレムを抑えて!!僕は先にサンドゴーレムを撃破する!!」
【【御意!!】】
【唸れ止水の叫び、轟くは集水の如く、、、水属性付与!!】
剣の刀身が青く輝きだした。
ホットルの詠唱とともに僕の剣に水属性の魔力が付与されたんだ。
その魔力を肌で感じながら僕はサンドゴーレムに突貫した。
奴が右手を僕に打ち下ろそうとした瞬間、間合いをズラしその右手を寸前で交わしながら剣を時計回りに一閃し右手を斬りさばく。そしてその遠心力を利用しながら右足中央を切りつけバランスを崩させると僕は全力で上空へと飛び込んだ。
「コルドル!!」
【任せよっ!!四天童子が青の如し、、、水瀑布!!】
僕の叫びとともにコルドルの杖から放たれたのは激流のような水の暴力だ。
その勢いは止まることを知らずサンドゴーレムの砂を削り尽くした。
当然、その身に宿す核も表にさらけ出すことになる。
「ブルーソード!!」
だから僕は直上から急降下しながら水属性の剣を振り下ろしたんだ。
一方、ロックゴーレムの方は、ホットルがその鋭い剣戟で奴を翻弄していた。
岩石に直接、切りつけるのではなく、関節や柔らかそうな部位を徹底的に穿つような打撃に近い攻撃手段だ。彼の技術の高さがわかるやり肩だ。
その時だ。
水の大呪文から立て続けにコルドルがその魔力を解き放った。
緑色に輝き出す剣をホットルが上段に構えたんだ。
【気高く唸るは風の叫び、穿つは暴風の如く、、、風属性付与!!】
【征くぞ!!岩石の主よっ!!風撃斬!!】
渦巻く風の力を持つ剣戟が横一閃。
その硬い岩石ごと核を切り裂いた。
僕だけでなくホットルも視野に収めながら状況を把握し的確に援護と攻撃で支援。
コルドルの成長も著しいみたいだ。
やっぱり《王国最恐》と呼ばれる男の修行は伊達じゃなかったんだ。
僕が二人に心からの賛辞を送っていると二人の仰天の声が脳内に響き渡った。
【主人よ!!あの地平線を見よっ!!】(ぬいぐるみ人形の魔法使いコルドル)
【主人よ!!まさか此奴ら、、、】(ぬいぐるみ人形の騎士ホットル)
その声に僕は遠くに移る地平線に視線を移したんだ。
冗、冗談、、、じゃないっ!!
だから僕は馬車に駆け出した。
やることなって決まっているじゃないか。
だってここに膨大な数のゴーレムたちの群れが押し寄せていたんだ。
ホットル、コルドル(๑• ̀д•́ (๑• ̀д•́ )✧キリッ!!:我ら主人の両翼!!




