22幕:人形使いは神託を受ける 下
「君はどんな未来を伝えられたんだい?」
僕はふと気になっていたことをそのまま本音でぶつけたんだ。
『僕の大切な者』であるはずの彼女に。
一瞬だけニコリと微笑んでくれたグリンティアはそのまま僕の耳元でこんな風に囁いた。
「んー、、、ひ、み、つ」
今日、日が暮れるまで僕たちは色々なシュチュエーションでお互いに色々な役をこなしながらデートした。
高級店でのウィンドウショッピングに、ちょっと高いランチ、それから観光名所を軒並み訪ねながらね。
女神と悪神。
大国の王子様に敵国の王女様。
公爵家の悪役令嬢と出入りの使用人。
平民の一人と貴族の跡取り。
飼い主と駄犬。
これが恋人たちだけに許された甘く切ない時間を濃密にする二人だけのじゃれ合いなんだ。
そして今、僕たちは郊外の野原にいた。
数えきれないほどの星空の下、二人っきりで地に腰を下ろして一緒の時間を過ごしているんだ。
互いの気持ちは繋いだ手を通して語り合う。
でも肌の触れ合いだけじゃだめなんだ。
言葉を通してこそ伝わるものもある。
《言葉攻め》なんてことも世の中にはあるしね。
でも僕としてはグリンティアにお願いしたくないわけじゃないんだけどね。
その時、ギロリと睨まれたような視線を感じたのはきっと気のせいじゃない。
ご、ごめんグリンティア。
流石に飼い主と駄犬なんてお願いしようとした僕が間違っていたんだ。
君が飼い主で僕が駄犬のつもりだったんだ。
君が飼い主、、、いや女王様だったらなんて妄想がちらりと。
でも仕方ない。
次からは僕が飼い主役をこなしてみせるよ。
大丈夫、次は君が駄犬の番だ。
僕が至極当然な考えを思いついていると彼女が自然と口を開いた。
その瞳は星々の薄っすらな光よりも深く輝いていた。
「シュガール、、、私信じてるから」
「僕もさグリンティア」
そう呟くと僕は吸い込まれるように彼女に甘い口づけをしたんだ。
甘く切ない味が香る口づけの後、グリンティアはあの時間を思い出していた。
全ての時が平等に静止したような時が止まる世界の出来事を。
まるでこの世の生物ではないように感じられる者を前にして多少は疑心暗鬼にならざる得なかった。
目に移る光景も事実もこれから自分に降り注ぐ確定した未来なのだと。
それでも平静でいられたのは同じ時間を過ごしているであろう想い人がこの場にいたからだ。
【私の大切なグリンティアよくお聞きなさい。もう残された時間はありません】
残された時間?
いったい何が?
私の大切?
【次の星が赤く染まり落ちる日にあなたは選ばなければなりません】
次の、、、星が赤く染まり落ちる日、、、確か、、、伝承の言い伝えの、、、日?
確か《六彩聖書の物語》で伝えられてきた旧女神の言い伝えの、、、
【ええ、、、】
【大切な人の死か、、、、それとも】
大切な人の死?それとも?
【自分の死を、、、】
とある女神さま(๑• ̀д•́ )✧ドヤッ:私もデートしてみたい!!
シュガール(๑• ̀д•́ )✧ドヤッ:わかったよ。僕が飼い主役だね。




