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21幕:人形使いは女神の椅子になる 下

休載期間が長すぎたので、、、あらすじ



下町の戦闘で捕獲したバケモノをどうにかするために神聖国へとやってきた一同


女神様への謁見のためケモミミ神官美少女に案内されて


そこでなぜかシュガールがとある指導をすることに、、、、



 


「そうじゃないそうじゃないんだ!!違うこの角度が大切なんだ!!」

「ぐぎぎぎぎぎいぎっ、、、」

「その見た目は図体だけか!?悔しいならその気持ちをこの角度に込めるんだっ!?」

「ぐぐうぐぐぐぐぎぎぎぎっ、、、」

「お前は見た目だけの男か?違うだろ!?さぁその悔しさを体から表現するんだ!!」

「ぐぐうぐぐぐぐぎぎぎぎっぎぎぎいぎぎぎっ、、、」

「そうだ!!これで君も僕の仲間入りだ!!」


 僕は声を張り上げ力説した。

 身振り手振りを交えてね。

 大男が強面な表情を浮かべ歯ぎしりしながら睨みつける様はまさに逆鱗に触れたドラゴンのようだ。

 しかし今の僕には関係ない。関係ないんだ。それに僕は間違ったことなんかしていない。

 手や足の角度、膝や肘の高さから筋肉の緩め具合から何から。これこそまさに僕が思い描いた理想の姿。神へと献上される嗜好の人間椅子だ。それにただ僕は彼のまっすぐな思いに応えただけなんだ。

 そもそもここは神聖な場なんだ。神を迎える大切な場所でだいそれたことやふざけたことなんて冗談じゃない。


 ん?なんだって?僕がふざけてる?

 それはうちのちびっこ殿下だけで十分さ、とにかく僕は大マジさ。


「さぁレディの皆さま、、、これが僕が会得した神に献上されるべきドワーフ椅子だ!!」


 何故か僕はこの国で《神聖六審》と呼ばれる6人の重鎮の一人を成り行きで椅子にしてしまった。

 彼らはこの国の最上位の神官であり神聖国を代表する有名な方々だ。一人一人が専門的な分野の探求者であり、また飛び抜けた実力を持つという。冒険者ギルドのクラスで例えるならば、恐らくはSクラスには認定されるはずだという。そんな力を持った集団なんだ。


 そんな方々に僕が教え込んだものは普通に考えても僕の首が何回も胴から切り離されるべき行いに違いない。ただし普通ならね。


 だが決して僕は不届き者ではない。

 これも全て見目麗しい絶世の美女と呼ばれる女神様のためなんだ。


 そもそもどうしてこうなったって?

 なんてそんなこと覚えちゃいない。考えてもいけない。

 ん。奴隷が女神様の椅子になるべき、、、なんてぼそっと聞こえなければ良かったし、、、コッパンのちょーイケてるチェアな感じ見て見たいっていうかぁというギャル語3級合格者の艶かしい美声が響かなければよかったんだ。

 ん?違うんだ。僕は僕は、、、強面の奥底に浮かぶつぶらな彼の瞳の訴えに負けたんだ。

 大男が椅子になったら面白いなんて思ったことなんか、、、少しもない!!


 だから僕は動いた。


 そして大広間のど真ん中で立派な座椅子となった大男の姿は恙無く披露された。

 静観なる空間には似つかわしくないオブジェ。

 しかしこれこそが神に相応しいであろうアーティファクト。

 まさに神のために作成されたアーティファクトのはずなんだ。


 だけど、、、


「ん。これはキモい」

「コッパンさんには悪いけど、、、ちょっとむさいというか、、、ごめんなさい」(グリンティア)

「もぉーこんな粗大ゴミ邪魔だわ、、、あぁー女神さま私の女神さまぁ。早く私の女神さまいらっしゃらないかしら。あとケモミちゃん食べ残りもう少しいただけないかしら、、、さっきのハンカチに包んでね、、、じゅるっ」(カッペナ)

「ほら皆さんもう少し落ち着きなさいな。コッパンもその変なお遊びを止めてこちらにいらっしゃい。あとで私も椅子になりますから一緒に椅子ごっこして遊びましょうね」


「・・・・」(コッパン)


 残念な空気が場を支配していく中、一同の冷たい視線は鋭く大男へと突き刺さる。

 グサリグサリと。


「・・・・」(コッパン)


 なんてことだ。

 僕があんなに苦労して享受した人間椅子がこんなにも否定されるなんて。

 滑らかな髪を感じ甘い吐息を浴び柔らかな肌の温もりを全身で感じることができるこの嗜好の姿勢が、、、キモいだって!?むさい!?


 そうか。これは盲点だった。

 これはやはり僕がやるべきだったんだ。

 僕が椅子になるべきだったんだ。それならば仕方ない。このシュガール一世一代のアーティファクトを目に焼き付けてもらおうじゃないか。

 そして絶対にグリンティアにもパトにも体験させるんだ。

 生意気なガキンチョのパトならともかく愛しのグリンティアなら絶対分かってくれるはずだ。

 あんな固そうで落ち着かなさそうな大男じゃない僕という神の椅子を。

 嗜好の椅子を。

 この嗜好の体でその乙女の柔肌を包み上げてあげるんだっ!!


 僕が誰かのことなんか綺麗さっぱりと忘れ去ると、、、


「ぎgyぎぎぎぎぐいぎgじg・・・」


 ドワーフの大男はあの場から泣きながら逃げ出したんだ。

 大の大男が大粒の涙を流しながら、、、


 でも決して悪くない。

 彼が描いた人間椅子は完璧だった。最高だった。

 だから君は悪くないんだ。

 そして僕は、、、少しも悪くない。


 そんなシラを切った僕、いやいつも通りの僕に一人の美少女が呆れるように声を掛けた。


「コッパンはあー見えて大の小心者ですからぁ後で膝枕して慰めないと半年は部屋から出てきませんよぉ。シューくんにはもう少し大人になってもっと優しくしてほしいですぅ、、、これでも私はほぼ毎日徹夜続きで大変なんですよぉ」(ケモミ)


「・・・・」


 一同の視線が僕だけに突き刺さる。

 この空気は耐え難い。


 ここはやはり僕がやるしかないのか?やるべきだったのか?

 どうしてこうなった?


 そして僕は決心した。


「仕方ない。これがこれこそが本当の人椅子だ!!これが女神様への愛の証なんだ!!」


 僕は全身全霊を掛けて椅子になった。

 これが神の椅子だ!!

 これこそが女神の椅子なんだ!!

 馬乗りされても微動だにせず床を大地を這いずり回ることができる究極の一品さ!!



「うそ、、、でしょ、、、」(グリンティア)


 想い女の呟きに僕ははっとした。


 感じるんだ。

 僕の背中に。

 僕の全身に。


 今まで感じたことがないほどの不思議な雰囲気と感触を持った何か佇んていた。


「ん。これは嗜好の椅子」


 どこかの幼女殿下がドヤ顔で頷きながら漏らした言葉だけが静かに響いたんだ。





●登場人物


ティブラ教皇:《神聖六審》の一人であり神聖国の代表。乗りが良いグラマラスな大人の美女であり神聖国一の天然淑女。

カッペナ《神聖六審》の一人であり自称ダークエルフのメイド。神聖国一の残念な変態。

コッパン:《神聖六審》の一人でありドワーフの大男。見た目に反して物凄く気が小さい神聖国一の小心者。

ケモモモ、ケモミ:《神聖六審》の一人であり獣人の美少女。神聖国一の苦労人。愛称はケモミ。





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