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20幕:人形使いはバトルロイヤルに参加する 上

 


 周囲が真っ白な世界に包まれていた。

 降り注ぐ灯は360度から差し込み影が薄く何重にもなるように見えた。

 湧き立つ歓声は止むことがなく次第にエスカレートし罵声と怒声混じりへと変わっていく。


 砂混じりの足場は思った以上にやりやすく多少体を打ったとしても衝撃を緩和してくれることだろう。致命傷になりやすい石床じゃないことだけが幸いだ。


 両足に力を込め地に足をつけると軽く一息吸った。

 目の前にはツノが生えた四足獣がこちらの隙を伺っている。

 周囲を観察するかのように動きつつもその視線だけはこちらを決して離すことはない。


 しかしそれは僕も同じことだ。

 下町で戦った頃に比べれば僕は劇的に成長した。

 かつて王国の最強部隊の隊長にして王国最強と言われた男との猛特訓により僕は生まれ変わった。

 だからどんな状況でも僕は油断しない。油断しないんだ。


 相手はユニコーンのように突起したツノを持つオオカミ。

 あのツノは魔力を操作するためのツノだという。通常の狼よりも体格は大きい上に素の戦闘力も高い。その上、雷の呪文を自在に放ってくる魔物いや魔獣である。その危険度はコボルターやパンサーの比じゃない。しかも奴らは群れを成して襲ってくる。


 こいつらに襲われたらオーガやトロールでさへ無残にも跡形なく食い尽くされるのだそうだ。普段は絶対に人が住むエリアには近づかないらしいんだけど、このカジノの闘技場ではそんなことは少しも心配がないんだろう。


 さすがは裏世界のカジノ。

 性質の悪い魔物や魔獣ですらその賭博の対象にするとは恐怖を感じる。

 でも今は関係ないんだ。


 じわりじわりと五匹のホーンワーウルフが距離を詰めてきている。

 彼らが恐ろしいのは一体一体の戦闘力だけじゃない。

 それを踏まえて上での集団戦を得意とするからだ。


 もう一呼吸するタイミングで一匹が飛び込んできた。

 僕はすかさずその牙と前足の爪を剣で弾き返しながら後ろへと飛び去った。


 その瞬間、3方向から雷撃の塊が飛来し炸裂した。

 地面が丸く陥没し焼けこげるほどの威力だ。当たれば無防備な一般人など即死だろうし例え魔力壁で防御したとしても防ぎきれない威力かもしれない。それは同じホーンワーフルフとて同じだ。

 その跡には一匹の魔獣が無残に息絶えていた。


 誰にもバレないように仕込みを終えている。

 こっそりと人形化した地面に捕まったあいつは逃げる間もなく味方の呪文に巻き込まれ自滅したんだ。


 僕は油断せずすぐに視線を移した。後ろで観察している一匹は相変わらず動かないが、四匹の同時攻撃だ。雷球の呪文で瀕死になった一匹は今は問題ないが、呪文を放った三匹はこちらへと突っ込んでくる。それも違う方向から突っ込んでくる。


 普通ならば対処できず嬲り殺されることだろう。普通ならば。


 僕は地面を蹴り上げ砂で周囲から身を隠したんだ。

 蹴り上げた砂はもちろん迫る駄犬たちにも打ち付けられた。

 これは目潰しだけが目的じゃなく僕自体を見ている観客たちから隠す目的もある。そして何より僕がこいつらを倒すための手段でもあるんだ。


【人形化】


 蹴り上げ纏わりついた砂は彼らを拘束し地面へと引き摺り込んで行く。動きを制限するだけじゃなく、目や鼻、口といった急所となる箇所に砂は侵入していった。


 そして彼らは動かなくなった。


 全てを人形にして操るだけが芸じゃない。こうやって戦術を増やすことも僕が学びとったことなんだ。だからわざわざ地面に手を翳し詠唱するふりをして発動させている。

 僕の力はとても珍しいから人目に付く行為自体は遠慮したい。だから周りからは土属性を操る魔術戦士か魔術剣士に見えているだろう。あんまり変わらないけどね。


 さて四匹が果て残すは黒いツノを持つ一際体が大きな個体だけ。

 きっと群れのボスなんだろう。


「さぁ挑戦者最後の決戦です。奴はホーンワーウルフでも抜群の個体です。今まで奴の餌食になった闘技者は数えきれません。まぁ人形のおかげで死んではいませんがね」


 MCのわざとらしい声に周囲から笑い声が続出していた。


 この闘技場は裏カジノの最大のメインであるらしいんだ。

 魔物や魔獣と闘技者の戦闘により生き残った方を選択するという遊戯だ。魔物を生かしておく理由はないので彼らはそのままくたばるが、闘技者には『身代わり人形』が与えられ敗れ去れば内封された魔術が素堂し闘技場外へと飛ばされる仕組みとなっている。つまり闘技者は死ぬことはない。

 なので安心して遊べるのだから気ままにお金を積み上げろというこらしい。

 だからレートはこれまでの比じゃない。

 貴族の年間予算にも匹敵するくらいの額が動くなんてあっという間だ。


 ちなみに僕も賭けているしね。

 当然、パトにバレないように処理済みなんだけどね。



「さぁ金に溺れしクズども!!今夜のメインイベント最終局面だ!!」


 場内に一際高い声が轟いた。

 それでも僕の心は静かに目の前の魔物へと剣を向けていたんだ。



ホットル、コルドル(๑• ̀д•́ (๑• ̀д•́ )✧:主人よ、、、スロットのコインが止まらんっ!!


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