19幕:人形使いは神聖国に行く 中
「ん。なかなかやる」
「にゃんとまた確連続きぃ!?そっちもやりますねぇ」
偶然知り合ったケモミミの少女とうちの王女様の一騎打ちはまだ終わらないらしい。
それでもかれこれ数時間ほど経っただろうか。
場所を変え方法を変え死闘は今だに続いている。
それは別にいいんだ。
ただしそのやり方が問題なんだ。
「君たち未成年だよね?ギャンブルで勝負するってどういうことだよ?」
僕の常識は間違っちゃいないはずだ。未成年のギャンブルは普通違法のはずだし禁止されてるしお店から強面のお兄さんがやってくるはずなんだ。
だけど二人からの返事は何だか納得がいかないものだった。
「ん?私のお金で遊んで何が悪い?札束で引っ叩くべき?それとも権力で握りつぶすべき?」
「そうですよぉ。自分のお小遣いで遊んでるんですぅ。お上が大丈夫だというから問題ないんですぅ。それにこの国は子供もギャンブル大丈夫なんですよぉ」
「ん。ほら問題ない」
「いや絶対おかしいよね!?」
「いえ本当にそうなんですよぉ。むしろ女神さまが推奨しているんですぅ、、、ここの国民は真面目すぎますからねぇ」
「え!?女神さまがわざわざ、、、」
まさかこの国の女神様が推奨するほどというのなら、、、、この国の人たちが勤勉すぎるのか。それとも女神様が道楽すぎるのかは分からない。雲の人の上のことは分からない。
だけどこれだけはおかしいと思うんだ。
「どこの国に子供が大金叩いてギャンブルに現を抜かす人たちがいるんだよ!?」」
「ん?奴隷は黙って金貨の前でひざまつくべき」
「にゃははっは。これは神事ですからぁ、、、仕方ないんですぅ」
なんて恐ろしい国なんだ。
僕たちがこの国に足を運んだことは間違っていたのかもしれない。
「ん。奴隷もたまには遊ぶべき」
「そうですよぉ。この国に来たならカジノで遊ぶできですよぉ」
「ん。これはおこづかい」
「これは良かったですねぇ。そうそうあっちのカードゲームがオススメですよぉ」
そう二人に声をかけられては僕は何も言い返すことができないじゃないか。
心底呆れた僕はその金貨の小袋を受けとるとカジノ内を詮索することにしたんだ。
それなりの貴族に生まれてはいるものの僕は煌びやかな大人の世界に足を運んだことは一度もない。クラブ?
あれは煌びやかな大人の世界じゃないんだ。
どろどろとした汚い悪人の世界さ。
それでも目に入る全てのものはまるで異世界だ。
すれ違う人たちの身なりは僕たちが普段着ることがないほどのものだろう。
服もアクセサリーも何もかもが異次元なんだ。
近づいてきたバニーガールのお姉さんの胸元も異次元なんだけど、、、
サービスのグラスを一つ受け取り僕はカジノ中を探索することにした。
しばらく見渡すと一際盛り上がっているところが気になった。
そこは周囲の人たちから歓声が止まらず少しずつ人が集まっているみたいだ。
たぶん良い勝負が繰り広げているんだろう。
僕も触発されてオススメされたそのカードゲームを覗くことにしたんだ。
そこでは二人の人物が熱戦を繰り広げていた。
一人は黒の給仕服に身を包んだダンディな紳士。
そしてもう一人は透き通るような緑色の長い髪に軽いウェーブをかけた美少女が微笑みながら対峙しているところだった。
「こら!!シュガールったらまた私を一人っきりにして悪いんだから」
「グリンティア、、、まさか君も?」
「もぉ、、、シュガールが遅いからもう100連勝もしちゃったのよ」
「君はまだ未成、、、」
「プレイ中はお静かに、、、」
そう注意されると彼女の柔らかい人差し指が僕の唇に軽く押し付けられて、、、
僕の心を鷲掴みにする。
彼女はなんて悪い女性なんだ。
それからグリンティアはさらに何度も連勝し続けたんだ。
カードゲームは数字と絵柄が数種類づつの組み合わせで構成されておりその絵柄の組み合わせと数の大小により勝負が決まるらしい。手持ちは5枚のカードから始まり何枚か交換しながら自分のカードの構成を選定していき数ターン、あるいは自身が勝負したい時は掛け声と同時に勝負ができるようだ。ちなみに勝負せずに逃げることもできるらしい。
何度か手札を交換したもののうまく行かなそうな時はグリンティアも勝負を避けていた。
そして彼女はこのカジノで記録的な連勝記録を達成したのだという。夜の街でホステスとして働いていた彼女の人を見る目は本物だ。伊達に王国直下の下町でNO.1の地位にいたわけではない。
だから彼女がこういう心理戦がモノを言う勝負ごとにもセンスがあるのは当然のことなのかもしれない。
そんな彼女が先ほどとは違った顔をしながら僕に語りかけてきたんだ。
「シュガール今日の夜は私がご馳走するね」
「グリンティアと久しぶりのデート楽しみだよ」
「もぉシュガールったら、、、それまであっちのボールゲームで二人で遊びましょうよ」
顔を真っ赤にさせた彼女はとても可愛いらい。
そんな彼女との時間を心ゆくまで楽しもうと考えていた時だった。
「おい!!あそこ大変だぞっ!!」
大きな掛け声とともに周囲の人たちが騒ついていたんだ。
何でだろう。
何か嫌な予感がする。
僕は何だか無性にお店を飛び出したくなったんだ。
ホットル、コルドル(๑• ̀д•́ (๑• ̀д•́ )✧:主人よ、、、あっちの遊戯台は楽しそうだ。




