19幕:人形使いは神聖国に行く 上
「ん。ペンダント」
パトは胸に掲げていた小さなペンダントを衛兵に手渡した。
ペンダントの色で冒険者ギルドランクが誰にでも特定できるんだ。子供な彼女の場合だと順登録しただけなんだけど、純登録である印が付いているから一目見ただけで彼女の等級クラスが最下位クラス、つまり成り立ての駆け出しであることが分かるんだ。
登録試験はどうしたかだって?
そんなもの王国の第3王女が魔王であり悪魔だと分かってるんだから言わなくてもわかるじゃないか。
田舎町のギルド長との会見時、澄ました顔をして密談を始め僅か1分足らずで彼女は免除された。神聖国を中心とした同盟国家群といえど大国であるの王国の姫君の意向は無視できないんだろう。
積み上げられた金貨を前にしたら僕も彼女の駄犬になるしかないしね。
「ん。登録してくれたらこれを寄付してあげてもいい。こんな田舎は予算がないはず」
「これはっ!?」
「ん?それとも上に話した方がいい?ここのギルド長は仕事ができると?」
「ぐはっ!?」
「ん。」
頑な笑顔のギルド長を前にしても彼女の抑揚のない表情は変わらない。
そしてパトは己の権力と金を最大限に利用して冒険者の順会員になったんだ。
もちろん保護者は僕であり彼女が何かやらかした場合、僕がその責を負う羽目になる。
まぁそんなことされたら僕は逃げ出すんだけどね。
それから道中、幸いなことに強力な魔物とは遭遇する機会はなく、パワーアップした僕たちの力と巧みな連携により危なげなく撃退することができた。
そして僕たちは南部国家群を北上し女神を崇拝する神聖国の地を訪れていた。
この国は女神が降臨された場所に出来上がった歴史のある地なのだという。その国ができてから何百年かは正確に把握されてはいない。それに神が住む国ということで周囲の国家からは不干渉地域にされたらしく侵略大好きで有名な帝国もそれ以来攻め入ることはなかったそうだ。それにこの国は厳格なところがあり同盟国以外の外国と一定の距離を置いていることも情報が偏っていることへの要因となっているらしい。
だから僕たちが爺やさんの元で地獄を味わっていた時も詳細なことまでは把握できていない。あとは現地で見て学んで確認するべきでしょう、、、って。
まさか爺やさんはすでにこの時から僕たちの今後の動向を把握していたとは、、、
真っ黒じゃないか!?
神聖国首都は軒並み石造りの建物で構成されており多少の違いはあるもののそのほとんどが似たように見える。きっと国により規制された法令の元で作られた計画都市なのだろう。だから宗教国家として統一された様式美による作られた都市というのには驚嘆される。
そして女神を崇拝する宗教国家ということもあり厳格な教義の元、信者たちは質素倹約を掲げ厳しい日課を過ごしているはずなんだけど。目の前に並ぶ人たちからはそんな雰囲気は感じられない。それどころかその極端さが際立っているような気がするのだが、、、何だろうこの違和感は。
すれ違う貫頭衣を日常服の上から被った人々たち。
その違いは彼らが身につけている貫頭衣の色に現れていた。
青、水色、緑、黄色などなど恐らくは階位を表すものだと推測できる。色が淡いほど高位だったはずだ。そして頭から薄手のケープか羽衣のようなものを顔が分からないように羽織っている。見た目だけは同じ用に見えるけど身につけているアクセサリ類は一人一人違うようだ。
けど少し近づけばそれなりに把握はできるみたいだ。
おっと!?
今通り過ぎたのはものすごい美人さんだった。
実に幸先がいいらしい。
それと隣のグリンティアから蔑んだ視線を突きつけられるのも最高だ。
「シュガール、、、何か言うことは?」(グインティア)
「グリンティア、、、後でお茶をしよう。全部僕のおごりだから」(シュガール)
「ん。わかった」(パト)
「君、一番の大金持ちだよね!?」(シュガール)
「拙者はファストフードのLサイズがいいですぞー!!」
「お前は外に出て働けよ!!」(シュガール)
「ちょりーすっ!!!シュガールちゃんの奢りなら楽しみだしっ!!」(チャラ男)
「「っていうかシュガールちゃんマジエモい」」(チャラ女二人)
「先輩たちのが稼ぎがいいでしょうがっ!?」(シュガール)
「はぁーっ、、、もう約束ね、シュガール」(グインティア)
「ん。問題ない」(パト)
「どこがだよ!?」(シュガール)
とりあえず僕たちはこの国の代表と謁見するまで僕たちは宿を取り、いつものように過ごすことに決めた。下町であの化物を人形化して封印して以来、扱いに困っているのだ。だから僕たちはこの地で厳重に封印されているという話を耳にした時から旅の最初にこの神聖国へと訪れることを二人で決めていたんだ。運があるのかないのか、今回は予定になかったパトがいるので少しはまともな対応をしてもらえるだろう。
それでも謁見までにはしばらく時間が掛かるだろう。
だから今のうちに僕たちはやるべきことをやるつもりだ。グリンティアはその容姿を生かし情報収拾を中心に行いつつ僕とデートだ。パト屋敷での訓練で壊れた引きこもりは引き続き人形、ぬいぐるみの改造、修理、増産を担当する。先輩方はその抜群のコミュニケーションを利用して出店先の調査、出店計画を進める。きっと爺やさんやパトの従者さんたちが昔の伝手を活かして暗躍しているに違いないんだ。そして僕はたまにパトの従者をするふりをして逃亡手段の確保、それからとある物の強奪だ。それからパトについてはいつものようにこの地のちびっ子たちと遊んでいてもらうように仕向けるんだ。それが一番彼女の行動を束縛する結果となるしね。
この地を最初に訪れた目的を果たすまでまずは僕たちが滞在できる宿を探すことにした。
とりあえず冒険者ギルドの場所や他の情報を仕入れるため先輩たちとは一旦別れいくつもの通りを歩き回ることにしたんだ。
すると目の前には一際目立つ長い人の列が見える。
「あれ何の行列だろうね?」(シュガール)
「ねぇシュガール行ってみない?」(グリンティア)
「ん。私も気になる」(パト)
「拙者も気になりますですぞー」(人形屋敷に引きこもり中)
長蛇の列に僕たちは並んだ。
もちろん引きこもりが部屋から出ることはない。彼はパトに呼ばれた時以外は外に出てくることはないんだ。お屋敷だと幼女メイドたちもいたけど、、、、この下衆の変態ニートがっ!!
何の列なのか好奇心がどんどんと上り坂を登っている時だった。
「あなたたちもこれ目当てで入国されたんですかぁ?」
後ろから声を掛けたのは淡くて薄い桃色の衣装を纏った美少女だった。
薄手の羽衣のようなものからちらりと見える頭に小さな猫のような犬のような耳、そして小さなお尻辺りからふさふさの尻尾を生やした可愛いケモっ子。
そんな女の子がこちらを不思議そうに覗き込んでいたんだ。
新たな職業を模索する小さな魔王(`・ω´・)+:ん。神?、、、それもいい。




