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18幕:人形使いは逃亡する 上

 

 豪華なご飯やお風呂は至福の時を与えてくれる。

 ふかふかのベッドに包まれた朝は最高だった。

 可愛いメイドさんたちは僕に嗜好の時間を与えてくれる。

 膝枕に耳かき、人形遊びにおママゴト僕の心は癒しに包まれた。


 世界はなんと幸福に満ちていることだろうか。


「ん。奴隷は現実に戻るべき」


 僕のホッペに誰かの平手打ちが炸裂した。

 ん?パトか、、、

 そして見た目が可愛いウチの我儘王女は僕に絶望を押し付けるんだ。


「パト、君とはここでお別れだ、、、僕は旅に出る!!」

「ん。じゃあ明日の朝がいい」

「君は家で留守番だよ!!そして僕は国へ帰るんだ!!」

「ん?奴隷に帰る国はない」

「だから公国のあの町に帰るんだ」

「ん?だから主人の私のいるところが帰る場所」

「君のお家はここ。爺やさんからの追加のクエストも終わったんだから君とはここでお別れだ」


 冗談じゃない。

 ここでパトと別れなければ今後命がいくつあっても足りなくなるじゃないか。

 王宮の柵と闇がしつこく纏わりつくだろう彼女と一緒にいたら僕の人生まで危うくなるんだ。

 だからここで決別しなければならない。

 たとえ背中を蹴られようともと美味しいご飯と可愛いメイド幼女たちがドアの隙間からこちらを健気に見つめていようとも、、、

 それが最高の環境だとも毎日を幼女たちに励まされ甘えさせられ頭を撫でられ全員から背中を踏んづけられようとも僕はこの環境を抜け出さなければいけないんだ。

 過度な幸せは人を堕落させる。


 だから僕は決断したんだ。

 今日限りこの悪魔の顔を持つ第三王女殿下から逃げ出すことを。


 僕たちが終わらない押し問答を繰り返していると爽快なレモンガの爽やかな香りが漂ってきた。

 透き通るように綺麗で品やかな緑髪を搔き上げながら僕の愛しの女性が近づいてきた。

 グリンティアがアイコンタクトを僕にだけ分かるように向けてくれる。


 そうだね。

 決行は今夜。

 僕たちは今日ここから逃げ出すんだ。


 僕が内心勝ち誇った顔をパトが下からじっくりと見つめていた。

 この子は一体何を考えているんだか。

 だけどもう遅いんだ。

 それにそんなに見つめられても僕には君の誘惑なんか通用しないんだ。


「ん。そこまで決心が固いなら仕方ない」


 おや?様子がおかしいぞ。

 さてはじいやに抱きしめられ過ぎて少しおかしくなったんだろうか。


「ふー良かった。君とは数ヶ月の付き合いだったけど楽しかったよ」

「ん。まぁ仕方ない。私はできる王女、道楽も余興もお手の物」

「君、社交辞令ってわかるかい?」

「ん?奴隷こそ己の立場を弁えるべき」

「まぁとにかくこれで依頼は正式に完了だね。またどこかで会えることを楽しみにしているよ」

「ん。奴隷は奴隷。安心するべき」


 ん?何を安心しろと?

 まぁそんなことはどうでもいいんだ。

 彼女が何か企んでいること事態は想定内だ。

 だから油断させて明日と言わず今夜行動する。

 これで僕たちは自由なんだ。


 夕方のバスタイム、それから豪勢な最後の晩餐を心ゆくまで楽しんだ僕たちは静かに床についた。

 そして、、、


 深夜、月明かりがないことを利用して僕とグリンティアはこの地を後にしたんだ。

 ん?引きこもりはどうしたって?


 もちろん彼はあそこに放置してきたに決まってるじゃないか。

 彼にとってあの地は楽園なんだ。

 だから彼はあのままあの地で暮らすことが幸せなんだから。

 決して邪魔だから第三王女の大屋敷に捨ててきたわけじゃないんだ。


 飯屋の女将さん、、、彼はついに自立しましたよ。



恐れ入りますが、、、、シュガールのMの目覚め、パトの変わらなさに期待したい方、もしよろしければ評価やブックマークtwitterシェアしていただけると嬉しいです。




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