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13幕:人形使いは魔物退治をする 上

 

「シュガール大変なことがわかったわ!!」


 グリンティアが情報収集のため王都へと出かけ続けてから2週間ほど経っただろうか。

 あれから僕は相変わらず忙しく冒険者ギルドのクエストと指名客への接待を続けていた。

 もちろん指名よりも大事なのは冒険者稼業だ。

 だから今日も指名を先輩方の3人に横流してから冒険者のクエストに出かけていたんだ。


 そしてその日夜更けごろ帰宅した僕に対し彼女は慌ただしく詰め寄った。


 だけどその時、町中に大きな衝撃と振動が轟いたんだ。

 何かが爆発したか又は炸裂したような衝撃と大きな振動と盛大な轟音。

 その勢いは凄まじく部屋中の窓が全て砕け散った。


 僕はとっさに彼女の身を手繰り寄せ覆いかぶさった。

 これは決して合法的に押し倒したんじゃない。

 とっさに彼女を飛び散る窓ガラスの破片群から遮ったんだ。

 僕の体を使ってね。

 決して僕が錯乱したからじゃないんだ。

 彼女の柔らかなものが胸に押し付けられているのは偶然なんだ。

 どさくさに紛れて鷲掴みにしたのは偶然なんだ。


 鼻腔に香る彼女の薄い緑色の髪は絹のようにしなやかでいてとても肌触りがよく、首元に掛かる彼女の吐息は天上の恵のように感じられる。ましてや彼女の柔らかな肌の温かさは極上の、、、

 だがこのまま堪能しているわけにはいかない。


 僕は彼女を抱きかかえながら怪我がないことを確認すると現状を確認した。

 当然、彼女には怪我一つ見られない。

 僕はかなり耳鳴りはするがしばらくすれば元どおりになるだろう。

 そして彼女の重みと肌触りは素晴らしい。


 衝撃のためか部屋中に細かく割れたガラス片と部屋中の物でぐちゃぐちゃだ。

 何が起きたかは分からない。

 だから僕は部屋から顔を出し外を見上げたんだ。


 しばらく何が起きたかは把握できなかった。

 だけど地平線の片隅が突如揺れたんだ。

 闇に蠢く何かだった。

 それが、、、近づいている!?

 ここからは遠すぎて分からないが巨大な何かだ。

 その何かが時折光線のようなものをあちこちに浴びせながらこちらに近づいているんだ。


 ふと窓越しに隣の建物を確認すると、、、そこには何もなかった。

 僕たちが住む宿屋の建物の隣にあったはずの民家が綺麗さっぱりとなくなっていたんだ。

 あそこにはみっちゃんと同じくらいの年頃の子供を持った親子が住んでいた。

 なぜか今では僕の背中を踏みつけてくれる遊びを積極的にやってくれるまで懐いてくれたんだ。

 それが、、、まさか、、、


 その時、錯乱していた僕の唇に温かな光が灯った。


「シュガール!!いいからこっちを向いて!!」


 甘い果物の香りと蕩けるほどの柔らかな感触。

 彼女の女神のような瞳が至近距離にあった。

 僕の唇を塞いでいたんだ。

 そのあまりの心地よさに僕は引き戻された。


「シュガール聞いて!!あれは『ちびっこ』を殺すために召喚された魔物らしいわ。王族や貴族の連中から今まで集めた情報を整理して予測すると、、、今この王都は跡目争いでいくつかの派閥に分かれていて、その中の強硬派の連中がしびれを切らして」


 なるほど。

 グリンティアの言葉通りならパトは彼女は間違いなく、、、

 だからパトはあの森で魔物に襲われていたのか。

 漸く合点がいった。

 つまり僕の直感は正しかったわけだ。


「!?」


 その時、彼女の声を遮り光の帯が近くを突き抜けていった。

 とっさに外へと身を投げ出さなければ今ので死んでいただろう。


「あんなのどうしようもない。あんな化物に勝てる訳がない、、、」

「じゃあ私と一緒にこの場からバックレる?全てを捨てて、、、」

「それもいいね。君とならどこまでも逃げ切れるさ」

「私も嬉しいわ。でもそしたら『ちびっこ』はパトは間違いなく殺されるわ」

「!?」


 引き込まれそうなほどの真剣な眼差しを彼女は僕に向けていた。

 パトが死ぬ?


 そんな時だった。

 外から子供の泣き声が聞こえてきたんだ。

 おとーさん、おかーさんと泣き叫ぶ幼子の声。


 それはよく知る近所の子供の声だった。

 無事で良かった。

 そして窓越しにその子供との目があったんだ。

 身体中から血を流したその子を見ると胸が締め付けられた。


 おにいちゃんおとーさんとおかーさんをたすけて。

 そうその子は呟いたんだ。

 自身の怪我は軽くはないのにそれでも人の心配をして、、、


 ほかに辺りを見渡すと倒壊した家屋からうめき声が聞こえるし逃げ遅れた人たちが動けないでいるんだ。


 光線で焦げた鼻のつく匂いが立ち込める中、僕の胸の中で何かが湧き上がっていた。

 だから言葉が出るよりも何よりも早く体が勝手に動いたんだ。


「『人形召喚』」


 そして僕の周囲に大多数の光の渦が出現した。

 その中から這い出て来たのは可愛らしいぬいぐるみの人形たち。


 そして最後に二人のぬいぐるみ人形が飛び出して来た。

 片や騎士の格好をした凛々しいぬいぐるみ。

 片や魔術師の格好をした精錬なぬいぐるみ。


 言うまでもない。

 僕の右手であり左手である大切な相棒であり親友であり半身である。


「やっぱりシュガールはそうでなくっちゃ、、、」


 背中を支えてくれている彼女が耳元でそっと囁いた。

 彼女がいれば僕は、、、力が湧いてくるんだ。


 召喚した仲間たちと一緒に二人を助け出すとそのまま三人を『人形化』してから『人形屋敷』に押し込んだ。

 消したり出したりできるこの技なら外にいるより安全だからだ。

 さらに周囲の人たちも同様にし屋敷に放り込んだ。


 見捨るなんてできるわけがない。

 この子達も町の人たちもパトも何もかも。



 だから僕は全ての仲間たちを相棒たちを町中に解き放ったんだ。



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