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11幕:人形使いは責任を取らされる 下

 



「もう一度言ってくれないか?」


 僕はその頂点に君臨した新たな女王に再度申し出たんだ。

 聞き間違いだと思うんだ。


「ん。奴隷は召使いの面倒を見るべき」

「えっ?」


 何だって?

 召使いって誰のことなんだよ!?

 だけども続けざまに彼女はこう宣言したんだ。


「ん。召使いは私の召使い。だから奴隷が世話をするべき」

「「は?」」


 その曇りなき眼は僕とグリンティアから逸れることはなかった。


 虚実を事実として断定するかのような言いぶりに僕は全くついていけない。

 だが頭のキレる彼女はすぐにその可笑しな状況を飲み込んだようだ。

 元NO.1嬢は僕とは出来が違うらしい。


「なに言ってるの!?私がいつ召使いになったのよ!?」

「ん。召使いが負けた時から」

「一回勝ったくらいでバカにして!!」

「ん。オーナーともすでに契約済み」

「冗談じゃないわ!!私には私の都合があるし夢がある!!いくら子供とはいえ許されることじゃないわ!!」

「ん?なら次の締めまでの売上でNO.1になればいい」

「望むところよ!!負けたら好きにすればいい!!私にだって意地があるんだから!!!」

「ん。意地があるなら指切りげんまんで誓うべき」

「へぇーいいわ。そんなところはまだ可愛い子供なのね、、、でも子供には負けない!!」


 売り言葉に買い言葉。

 とんでもない契約が交わされてしまった。

 ん?オーナーと契約済み?

 指切りげんまんで誓う?

 いやちょっと待てよ、、、

 まさかとは思ったが、、、いやこれはそうに違いない。


 パトはこのお店だけでなくグリンティアも牛耳ようとしているんだ。

 僕としたことが気づくのが遅すぎた。

 すでに交わされた小指と小指の誓い。

 繊細な小さな小指と絡めたくなるような温かい小指。


 僕はグリンティアの手を掴むと休憩部屋へと走り出したんだ。

 負ければ彼女は僕と同じ身分へと落ちてしまう。

 守らなければならない。

 僕は人として男として友人として彼女をグリンティアを守らなければならないんだ!!


「ちょっと!!シュガール落ち着いて!!どうしたの!?」

「絶対に負けられない負けられないんだ!!」

「ちゃんと説明してよ!!」

「僕のせいなんだ。僕の責任だ。だからいいかい!?落ち着いて聞くんだよ、、、」


 その時だった。

 勢いよくドアを開けられ僕の手首を大柄の男の手が掴んだんだ。

 先ほどまでお馬さんになっていた成人男性である。

 そして彼は、、、


「おいシュガール!!女の戦いに泥を塗るのはナンセンスだ!!」

「オーナー!?」

「それからお前にもご指名だとさ」

「いや、僕はホストになる気なんかはないんだ!!僕は冒険者として成り上がるんだ!!」

「なに言ってんだ!?嬢ちゃんと契約したんだよ!!お前にはたっぷり働いてもらわなきゃいけねぇんだ!!ほら指名だから急ぐんだよ!!」

「冗談だよね!?なんで?ちょっと待って!!僕の尊厳はどこに行ったんだよ!?」

「まずはホストとして成り上がってから考えろ!!」


 僕はそのまま引きずられるようにしてその場を後にしたんだ。

 その後、僕は彼女と顔を合わせる機会はなかった。

 なにせ僕にも多くの指名が入ったんだ。

 ボーイの仕事とは違い完全にお客様への接待のみが続く日々。

 僕の前に顔を見せるのはマダムと素敵なお姉さんと妖艶なオネエさんたち。

 グリンティアとひと目会おうにも計画的に仕組まれた業務の中では僕は無力だったんだ。


 僕は上を目指す冒険者だよ。

 ホストじゃないんだ。

 飲み屋で稼いだ札束で家族を見返したいわけじゃないんだ。


 それに困ったことにお姉さんたちとオネエさんたちが隣から離れてくれないんだよ。

 マダム達なんかも同じようにね。

 あまりの人気っぷりに取り合いになり終いには殴り合いになり阿鼻叫喚な状況だよ。

 僕は何とか場を和ませてやり過ごして落ち着かせたんだけど、そのせいで休日も穴埋めさせられることになる始末。


 結局、勝負の日まで僕たちは会えず仕舞いだったんだ。


 その約束の日の深夜、店内のボードに順位が掲示された。

 そしてその日遅くにボードの前で涙を流している彼女を前にした。


「ちゃんと責任とってよ、、、シュガール」


 頬が濡れた彼女を僕は力強く抱きしめたんだ。









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